第四話-無詠唱ってチート?-
凄い………これが、魔力か。
全身を迸る言い表しようの無い感覚………まさに異世界ファンタジーって感じだな。
その時、父と母が俺の部屋に入ってきた。
「カルト?物音がしたけれど………大丈夫?」
「大丈夫だよお母さん。それより………魔力が感じられるようになったみたいなんだ。」
「本当なの!?」「本当か!?」
父と母が同時に叫んだ後、俺の方まで近寄ってきた。
「どうだ?ジリス。」
「うーん………まだ微弱ではあるけれど、本当に核ができてるわね………」
核…………そうだ、魔力核だ。
先生の授業で、魔石の元になるのが魔力核で、それは人間にも存在していると、教えてもらった記憶がある。
ということは、恐らくさっきの痛みは、魔力核が出来る時の痛みだったんだろう。
もしかして、人間っていうのは、魔力核を使って魔法を制御したりするのか?
そこまではまだ習っていないからな………次の授業の時に聞いてみよう。
それにしても………痛みについては先に教えてくれたらよかったのに………そんなの授業になかったぞ。
その時、父がポツリと呟いた。
「まさか、六歳になった当日に魔力核が出来るとはな………」
「珍しいの?」
「あぁ、普通魔力核が出来るのは六歳の中頃で、そこから時期に個人差があるんだが………六歳になった瞬間に魔力核が出来たやつは、少なくとも俺は見たことがない。」
そうか………父の交友関係がどれほどまで広がっているかはわからないが、珍しいのは確かみたいだ。
つまり、何かチートとか、ご都合展開がある可能性が出て来たのかもしれないって認識していいだろう。
それにそれらがないにせよ、魔法は使えるんだ。
まずいな、更に………更に寝れなくなってきた。
俺は今、有頂天だ。
何だってやれる気がする。
俺はベッドから降りて母に今直ぐに魔法を教えてもらおうと———
「カルト。」
いつもよりも冷たく感じる母の言葉が耳を貫く。
「魔法が楽しみなのはわかるけれど………今日はもう遅いから、ちゃんと寝なきゃだめよ?」
………道は、閉ざされた。
俺の状態を見て安心した父と母は扉を閉め、それぞれのベッドへと戻る。
そして完全に道を閉ざされた俺はというと………興奮によりハイになった頭をどうにかして沈めようと何とか思案するも逆にそのせいで一向に眠れないという地獄の時を過ごすしかなかった………
—————————
『チュン——チュン———チュチュン———』
窓の外から小鳥の囀りが聞こえる。
外は既に陽光に照らされていて、村の中にはすでに活動を始めている人も何人かいるだろう。
まあ、うん。
全ッ然寝れなかった。
だって長年思いを馳せてきた魔法が使えるようになるんだ。そりゃあ興奮と期待で寝れるはずがないだろう。
だから、すごく眠い。でも、魔法の授業が始まってしまえば、そんなものは一瞬で吹き飛ぶだろう。
ただ一つの問題として、授業が始まる前に俺の眠気を感じ取った母が授業を中止してしまうという可能性はある。だがこれは我慢をすれば良いだけだ。どうって事はない。
ところで、魔法を学べるようにはなったんだが………実は母に対して一つだけ不満がある。
いや、不満というより、疑問という感じか。
そんなことを考えていると、
「あら、もう起きていたの?」
母が部屋の中に入って来た。噂をすればってやつだな。
「もうすぐ朝ご飯ができるから、その後に魔法の授業をしましょうね。」
そう言って部屋を出て行こうとする母を、俺は引き止める。
「あの、お母さん。実は聞きたいことがあるんだけど………」
「あら、何かしら。」
「昨日の夜………たぶん魔力核ができた時に、すっごく痛かったんだけど………何でなの?」
そう、これだ。
あの時母は、”大丈夫か“とは聞いたが、“何があったか”とは聞かなかった。少し考えすぎかもしれないが、少しだけ引っかかる。魔力核が出来る時の痛みに関して、俺は何一つ教えられていなかったのだ。
「あー………えっと………それはね………」
母が目を泳がせながらばつ悪そうに話し始める。
「実は、魔力を感じられるようになる………つまり、魔力核が体内に作られるのは、殆どが六歳後半なの。だから、まだ教えなくても良いかなって………本当にごめんなさい!」
まるで親に怒られた子供のように母が頭を下げて来た。どうやら謝罪のポーズは俺の世界と似ているらしい。
でも、な。
「ううん、大丈夫だよお母さん。それよりも………ご飯の後、直ぐに魔法の授業をしてほしいな!」
そう、誰にだって間違いはある。俺だって、家庭科の授業でエプロンが必要なのにも関わらず、前日の深夜までそのことを忘れていて、親にブチギレられたこともあった。それと比べると、昨夜の出来事は予想外の痛みがあっただけだし、どうって事はない。
「勿論よ!それじゃあ、すぐに朝ご飯を作っちゃうわね!」
途端に笑顔を取り戻した母が颯爽と部屋を出ていく。やはり、親というものは子に嫌われると、相当なダメージを受けるものなんだろう。俺も、この世界での親にダメージを与えたくはない。気をつけないと。
数分後、母の呼ぶ声を聞いた俺は、とんでもないスピードで朝飯を平らげ、魔法の授業が始まるのを待つのであった。
そのまた数分後、
「ごめん、少し待たせちゃったね………」
「大丈夫だよお母さん!それよりも、今日は魔法を教えてくれるんでしょ!」
俺はそう、大興奮だ。魔法が待ちきれない。一応まだ高校生である俺が言うのもあれだが、前も合わせた人生の中で、一番新鮮で、幸せな時間だ。
「それじゃあ、今日の授業を始めるわね。」
そうして母がいつも使っている教室………もとい俺の部屋を———通り過ぎた。
「あれ?今日は僕の部屋じゃないの?」
「授業をするのはあの部屋よ。でも、その前に回収しなくちゃいけないものがあるの。」
そう言って母が俺を連れながら向かったのは、薄暗い物置部屋のような部屋の中にある、少し埃を被った、木でできたクローゼットの前であった。
この部屋には、何度か入ったことがある。親の目を盗んでだがな。でも、このクローゼットは鍵でもかかっているのか、開けれないし、一度も開いているところを見たことがない。
「さっきは、これを探すのに戸惑っちゃったのよねぇ………」
取り出したのは、一本の鍵………に一瞬見えたが、ただの金属の棒であった。
そしてよく見てみれば、そもそもこのクローゼットに鍵穴のようなものは見当たらない。
「それを、どうするの?」
「ふふっ、ちゃんと見ててね?」
その時、母が金属の棒を強く握りしめた。
「これが、魔法よ。」
数秒後、開かれた母の手を覗き込むと、そこには金属の棒ではなく、しっかりとした鍵があった。
でも、その鍵を差す穴が見当たらない。これも魔法で隠されていたりするにだろうか。
「それじゃあ………やっ!」
!?
母が、いきなり鍵を持ち、そのままクローゼットをぶん殴った!
え、嘘、そんな感じ?
「ここだね。」
母のパンチによって穴が空いたクローゼットの奥には鍵穴が見えた。………まさかあの優しい母が武闘派だったなんて………いや、そこまで以外でもないか。この前母が機嫌が悪い時に、父が殴られているのを見たような気がする。
「これも、魔法よ。」
………いやいやいや、そんな訳がなかろう。今のはどう考えても、暴力。バイオレンスだ。
「正確に言うと、魔法ってよりも、魔力そのものの性質………って言った方が正しいかもしれないわね。」
ふむ?つまり、今のは魔力を纏ったってことなのか?
なるほど。それならギリギリ………魔法か。
『ガチャリ』
クローゼットが音を立てる。
「開いたわ。」
ようやくか。それにしても厳重だったな………一体何が入っているんだ?
「必要だったのは、これよ。」
出て来たのは、一つの古びた本。
その中央には、一人の人物………賢者アルテロを模したのであろう絵が描かれており、その周りには火、水、土、風をそれぞれ司ったような象形文字が並んでいる………まさか、これは!
「賢いカルトならもうわかったかもしれないわね。これは、四大魔法について詳しく記された………魔導書よ。」
やっぱりか!そうなるとこの厳重なセキュリティにも頷ける。だって、死の危険があるからな。子供を殺さないためにも、これぐらいはして当然かもしれない。
「それじゃあ………部屋に戻って授業を始めましょうか。」
「はいっ!」
ついに、開始だ。
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「まず、魔法は使用する魔力の量に応じて、位が決められているの。」
ついに、俺が待ち続けた魔法の授業が始まった。
「位には、使用魔力量が多くなるにつれて初級、中級、上級、王級、帝級、星級、神級の名前が付けられているの。私の魔力量はそこまで多い方じゃないから………使えるのはせいぜい上級までなのだけれど…………世の中には神級魔法を簡単に使う、とんでもない人もいるの。例えば、ガティリア帝国を魔王軍から守り続けている『剣王』とか、西の空中都市を守る『風龍』が有名ね。」
「先生!質問があります!」
俺は素早く手を挙げ、先生である母に質問する。
「はい何でしょうカルト君。」
「魔力の量って、何で決まるんですか?」
「それはね…………魔力核よ。」
ふむ、やはりか。
「魔力核は周囲の魔力を取り込む一つの器官になっているの。魔力核の大きさ………つまりその人の最大の魔力量や、魔力を取り込む速度には個人差があるのだけれど、大抵は身体の成長に合わせて魔力核も成長するの。結局のところは、その人の才能次第な部分もあるんだけれどね。今のカルトの魔力核は出来かけで、魔力量も少ないから………中級が限界ってところかしらね。」
「先生、魔力核にある魔力を使い果たすと………どうなるんですか?」
「死ぬわ。」
えっまじ?
「本当ですか………?」
「えぇ。魔力が完全に途絶えると、魔力核が縮小を始めて、想像を絶する痛みを与えながら消滅し、そのまま死に至るわ。でも、殆どの場合は周りの魔力を吸収するから、完全に魔力が途絶えることはまずないの。だから安心してね?」
なんか………この世界の魔力って物騒じゃないか?
魔力核が出来る前に魔法を使ったら爆裂四散するとか、使い果たすだけで死ぬとか………実は危険物だったりするのか?
「少し話が逸れちゃったわね………話を戻すわ。今日は、四大魔法の基礎を学んでもらいたいと思います。」
「はい、先生!」
そうして母が俺に差し出したのは、先ほどの古びた魔導書。
「それの一ページ目に、四つの詠唱があるのがわかるわね?」
詠唱………あぁこれか。火、水、土、風についての詠唱が並んでいるのがわかる。
「それを………全て詠んでくれるかしら。」
「はい!」
「『生命を癒し、大地を潤す純粋なる水よ、我が身に宿り、その権威を示せ。』
『大地を創造し、世界の基盤となる純粋なる土よ、我が身に宿り、その権威を示せ。』
『煌々と燃え盛り、全てを焼き尽くす純粋なる火よ、我が身に宿り、その権威を示せ。』
『彼の地を覆い、龍の如く吹き荒れる純粋なる風よ、我が身に宿り、その権威を示せ。』」
これで、全てだ。
「!」
読み終えた瞬間、突如として現れた淡い光が俺を包む。包まれた俺は、その光にどことない安心感を抱いていた。
そしてその光のベールが消え去った時、
「読み終わったわね?それじゃあ………魔法習得、おめでとう!」
「え?」
え、今ので?
………もうちょっと………苦労するとか、あるだろう。
「それじゃあまずは、初級魔法から使ってみましょうか!それじゃあ火、水、風、土の順番で………ここだと少し危ないわね………お外に行きましょっか!」
この部屋が魔法授業に適していないと気付いた先生が俺を家の外の庭へと連れて行く。
実を言うと、俺がこの世界に転生して来てから、家の外に出るのはせいぜい三回目ってところなのだ。
なにせ、ずっとこの世界のことを学び続けて来たからな。それと、この村の慣習のこともある。
どうやらこの村では、子供は六歳になるまで家から出ることをなるべく少なくなるようにしているらしい。それにどのような意味があるかはわからないが、慣習は慣習だ。もちろん潔く従う。
そんなわけで、久しぶりに感じた日光の暖かさと、都会などとは全く別物の空気がとても新鮮に感じる。
「うん、ここが良いかな!」
先生がピタリと足を止める。
「それじゃあ、この的に向かって放ってくれる?」
そこで母が何もない地面に向けて手をかざし、恐らく土魔法で的を作り出す。
………で、初級魔法………だったよな?それって、どうやって発動するんだ?
「………あっごめん!うっかりしてたね………初級魔法の発動方法はその本に書いてあるはずよ。」
ふむ、なになに………あぁ!古い本だかなんだか知らないが文字が掠れて読みづらい!えーっと………『初級魔法の使い方』あぁこれか。確か、火、水、風、土の順番って言ってたよな?
俺はその魔導書に書いてある通りの動きを再現してみる。
手を的の方向へとかざし、魔法の指向性を指定する。
次に、魔力に意識を少しだけ向ける。
そして最後に………詠唱をする。
『煌々と燃え盛る火よ、その熱で全てを貫け!火矢!』
詠唱を終えた瞬間、手の先に赤い火が現れ、矢を形成する。その矢は土魔法によって作られた土の的をいとも簡単に打ち抜き、地面へと落ちる前に消え去った。
そう、これだ。これこそが、あの日の空想の中だけにあった………魔法だ。
「あら、凄いわね………使うのは初めてなのに、真ん中に当てるなんて………」
先生はそう呟いた後、即座に土の的を再生させる。
それを見た俺は興奮を抑えられず、間髪入れずに他の魔法を次々と放とうとする。
『————————————!水弾!』
『————————————!風斬!』
『————————————!土砲!』
結果は全弾命中。もしかしたら、俺には魔法のセンスがあるのかもしれない。
「凄いじゃないカルト!流石私の自慢の息子よ!」
魔法を打ち終わった俺の元へと先生もとい母が駆け寄り、頬っぺたをすりすりしてくれた。嬉しい気持ちはあれど、俺の精神年齢は十六………いや、さらに六年が経過したから二十二だ。だから少し恥ずかしい。
それにしても………これが、魔法か。あまり、実感が湧かないな。思っていた以上に簡単に出来たからだろうか。
だが何にせよ、魔法が使えるようになったという出来事は、俺からするとこの世界の今までの出来事の中でも最重要事項であり、もし俺がアルバムを作るとしたら、この場面の写真だけで1ページを埋めるぐらいだ。
俺がそうごちゃごちゃ考えている間にも、どうやら授業の準備は進んでいたらしい。
いつの間にか土の的は五個に増やされ、先程の物よりも分厚くされている。
「次は、私の魔法を見てちょうだい。」
『煌々と燃え盛る火よ、その熱で全てを貫け、火矢。』
母の手の先で火の矢が形成され、放たれる。だがその大きさは俺が作り出した火矢よりも一回り大きく、火の色も心なしか違って見えた。そして火矢は放たれる。その速度は俺の火矢よりも数段速く、五つの土の的をいとも簡単に貫いた。
「さて、カルトの火矢と、私の火矢。違いがわかったかしら?」
「僕の火矢よりもちょっと大きくて、威力が高かったと思います!」
「正解!それじゃあ何でそうなったか、わかるかな?」
何でそうなった、か。今更ではあるが、やはり先生もとい母もといジリスは教員としての才能に満ち溢れているな。どうしてこの結果が出たか………これを生徒自身で考えさせ、思考能力を高める。一番重要なことだ。
「ん、どうしたの?」
おっと。
どうやら、いつの間にかジリスのことをじっと眺めてしまっていたらしい。
えっと、俺と先生での威力の差が、何故出たか…だな?
そうだな………よくある設定だと………
「魔力の量が違った………とか?」
俺はそう言い、先生の反応を確かめる。
「そう!よく出来ました!実はカルトの言う通り、カルトの火矢には初級相当の魔力量が使用されていたのだけれど、私の火矢には中級相当の魔力量が使用されていたの。だから、威力に差が出たってわけね。」
成程、段々と理解が出来てきた。
恐らく、初級魔法や、中級魔法に付いている位は、最低限使用しなければいけない魔力量を表しているんだと思う。
ゲームで例えるなら、今の俺のMPが10、火矢の発動に必要なMPを2とすると、発動に2MPを使い、残りの8MPで威力を上げる………という感じなんだろう。
つまり、たとえ初級魔法だとしても、使用する魔力量次第で中級魔法の威力に届き得る………ということだ。
「今は多分、使用魔力量の調節は難しいと思うけれど、ずっと使い続けていれば簡単に出来るようになるから………ここからは毎日、魔法の練習をしてほしいの。出来るわね?」
「うん!」
俺は元気よく先生へと返事をする。
勿論、楽勝だ。だって、研鑽というものは大事だからな。
それに、この世界には魔獣やら何やら危険が多そうだ。
鍛えておいても損は一切ないだろう。
「それじゃあ、今日の魔法の授業はここまで!次は、魔法以外の授業にしましょっか!」
もう終わりか………でも、至極単純に、授業ってのはこの世界についてを学べる貴重な機会だからな。意外と苦ではない。高校の授業も、こんな感じで楽しみながら受けれたら良いのに………違いは何だろうか。
………多分、ここが異世界だから
俺はさっさと思考に結論を付けて終わらせ、授業部屋に戻ろうとする先生のあとをついて行く。
そして部屋に入ったところで、授業が始まった。
今日の授業は、この世界の種族について、だそうだ。
この世界には、俺や母、そして父のような人族の他にも、何やら前世の漫画や小説で聞いたことがあるような種族が何種かいるらしい。
例えば、鋭い牙と爪、そして魔力核が他の種族よりも小さいという特徴を持つ、獣族。
それと、最も大きな特徴として、魔力核が非常に大きくなる傾向がある、エルフ。
だがこの種族は、前世の創作物に出てくるような耳の長い姿ではなく、人族と全く同じ姿をしているらしい。
つまり、見分ける要素は魔力核の大きさしか無い。だそうだ。
次に、龍族と竜族。
どうやらこの二種族間では主従関係が種族的に出来上がっているらしい。
ただ、龍族の方が偉く気品があり、身体能力などが全体的に竜族よりも高いという情報以外は、情報がないらしい。
龍族と竜族ここからずっと西に向かったところにある『空中都市』に住んでいるらしいが、何故か今は入ることが出来ないらしい。
龍と聞いて少し会いたくなってしまったから、それを聞いて俺は少しがっかりした。
でも、しょうがない。
最後に、魔族だ。だが魔族といっても、人族、エルフ、獣族、龍族、竜族のいずれにも当てはまらない種族を魔族と呼んでいるらしい。随分と雑だ。
ただ、魔族の中でも有名な一族は、しっかりとした種族名が付けられているものもいるらしい。
例えば、霊族などが有名なんだとか。
恐らく、人族や獣族と、魔族とでは根本的な何かが違うから、そう呼んでいるのだろうが、なんともややこしい。
今日の授業は、大体そんなところで終わった。
さすがに連続で授業を行ったためか、先生………もとい母は少し疲れているように見えた。
そして授業を終えた俺は一人、自分の部屋へ戻る。
………今日という日の出来事はこれで終わり、だって?
………ここからが、本番だろう!今の俺は魔法への探求心で満ち溢れている!だから、今からは個人探求の時間だ。
まずは、試してみたかったことをとことん試す。
まずは、詠唱だ。漫画や小説だと、異世界人が突然に詠唱破棄とか無詠唱とかなかなかにチートな技を使う、という作品がいくつもある。俺も試してみるほかないだろう。
俺はまず魔導書を開き、詠唱を今一度確認する。
ここは室内だからな………窓の外に向かって水弾を放つのが一番安全だろう。
俺は窓を開け、手をかざし、魔法を放つ準備をする。
『この世を流れ続ける水よ、その高貴なる姿をもって全てを貫け!水弾!』
今回はしっかりと詠唱をしたから、勿論魔法は発動する。
そして問題は次だ。
『水弾!』
俺は、詠唱をせず、それだけを呟いた。
………いや、冷静に考えてみれば、結果を見るまでもないかもしれない。
詠唱をしないなんて、無茶があるだろう。
そもそも、簡単にできてしまえば詠唱の存在意義がわからなくなってしまう。
だからおそらく、この魔法は失敗———
だが俺の予想に反して、俺の中の魔力はしっかりと働き、手の先から拳大の水の弾が発射された。
………でき………たな。
できてしまったな。
そうか、できるのか!
まさか、俺にも特別な力が、あったのか?
いや待て、だとしたら………
俺は再び窓の外へと手をかざす。
だが、今度は何も唱えない。
ただ、ただ心の中で思うだけだ。
(………水弾)
魔法は………発動した。
これは、チートじゃないか?
だって、無詠唱だぞ?
無詠唱で魔法が発動できる。
これはどんな作品でも最強格の技だ。
それがまさか、できるだなんて!
俺の気分は再び頂点へと達する。
調子に乗った俺は無詠唱が可能という事実を噛み締めながら何度も何度も水弾を放つ。
あぁ最高だ。
だが、調子に乗りすぎることが何よりも危険なことであることを、俺は忘れていた。
「———ぐっ!」
突如として、俺の胸部———否、魔力核へと激痛が走る。
こ、れ、は!あぁ、そう、か、言ってたな。魔力を、使い果たす、と、激痛を伴い、ながら、死に至るって、でも、死ぬことは、少ない、とも、言って、いたから、大丈夫、な、はず、だ———
俺は床へと倒れこみ、だんだんと視界がぼやけ、白で埋め尽くされる。
———俺は気絶した。
—————————
「カルト!ご飯できるわよ!」
妙に機嫌のいい、母の声。
おそらく、父が何かいいことでもしたんだろう。
———よかった。生きてる。
「はぁ………」
俺は冷たい床から体を起こし、安堵のため息を吐く。
どうやら魔力を使い果たすと、一瞬だけ魔力残量が0になるから、強烈な痛みを感じたようだ。
これからは、気を付けないと。
「はぁ………」
そして俺は、また生きていることに対しての安堵が沸き上がってきたので、二度目のため息を吐いた。
そして———誓った。
もう、調子に乗るのはやめにしよう。
—————————
◼︎次の日
グッドモーニング。心地のいい朝だ。
昨日はあの後、俺は親に無詠唱のことを報告せずに、今日の授業でお披露目するまで、秘密にしておく事にした。
だって、驚かせたいからな。
まあそんなわけで、今日はとっても気分がいい。
魔力核にも、特に異常は無かったしな。
何だか、ソワソワして来た。これが、異世界転生したやつの気持ちかぁ………
いや待て、今また………調子に乗っていたような気がする。
やっぱり、チートっていうのは恐ろしいな………
金は人を変えると言うが、チートはそれ以上に人を変える。
全く、とても危険だ。
そして、
「ご飯できたわよ!」
いつもの、母が俺を呼ぶ声。
俺はさっさと飯を済ませ、魔法の授業をまだかまだかと待つ。
何だか、昨日とほぼ同じ展開な気がするが、気のせいだろう。
「あら、準備はもう完璧なのね。それじゃあ行きましょっか!」
「うん!」
よしきた授業だ!
俺は母の横を颯爽と通り過ぎ、母よりも速く庭へと飛び出す。
母はそんな俺を見て、くすりと笑っていた。
「ふふっ、そんなに魔法が好きになったのね?それなら………今日はもうちょっと難しいことをやっちゃおうかしら。」
ふむ?今の俺は無詠唱魔法を見てもらい気持ちで満たされてはいるが、そのちょっと難しいことってのは気になるな。一体、何なんだろうか。
「今日は………無詠唱についての授業よ!」
へ?
駆馬くんが感じた痛みは、皮膚をつねった痛みとそのまま殴られた痛みが交互に来る感じです。
意外と、耐えれそう…なのか?
ちなみに魔力核の規模に応じて痛みも強くなるよ。
そして無詠唱ですが………この世界では一般的な技の一つなのです。どんまいっ!




