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-輪廻転生のカルマ-  作者: KANAR1024
第一章-異世界転生のカルマ-
6/11

第三話-魔法への憧れ-

———俺の寝床に、天から光が差し込む。

眩しさで目が醒めると、そこには木で作られた小さなベッドを上から覗き込む人間がいた。


俺の———母親だ。


『—————————!』

指で俺のほっぺたをプニプニしながら、俺の名前を呼んでいる………気がする。



現在俺は、一歳である。

どうやら、俺は異世界に転生した………らしいんだが、漫画とか小説とかであるあるのご都合展開なんて、一つもなかった。

言語もわからないし、特段成長が早いとか鑑定眼を持ってたり、チート能力を持っていたりすることもない。

今の所、ただの一般赤ちゃんだ。

成長したらまだ何かがあるのかもしれないが………現時点では特別なものなど何にもない。


てことで、言語はわからないが、一年間小さなベッドと母親の腕の中からこの世界を見て、わかったことがいくつかある。


まず、一つ目は…さっき言った通り、俺はチート能力なんて持ってなかったこと。

二つ目に、この世界では魔法?が使えること。

三つ目に、この世界には魔獣っぽいのが存在すること。


このくらいか。

こう見ると、すごい、なんていうか………ファンタジーだ。

俺にチート能力があったら、漫画の主人公になってたかもしれない。

まあ、ないけど。



でも、魔法とか魔獣とかの存在はわかっても、詳細はわからなかった。だって、何言ってるかわからないし。

と言う事で、最重要事項は言語だ。頑張らないと恥ずかしい思いをするし、情報収集もできやしない。

………マジで頑張らないと。


それにしても、異世界転生か………何か目標でも決めておかないとな。



—————————

◼︎


小鳥の囀りが聞こえる気持ちのいい朝。

俺は目を覚まし、背伸びをする。

その時、俺の部屋に母が入ってきた。


「あら、起きたのね。おはようカルト」

「うん、おはようお母さん!」

母は俺の部屋の窓を開けに来てくれていた。

窓は手を伸ばせばギリギリ届くと思うが、それでも母は開けてくれる。

優しい人だ。


因みに、窓はしっかりと施錠されていて、防犯意識はしっかりとしているらしい。それと、窓はガラス製だった。




———現在、俺は五歳である。


そして今の会話からわかると思うが、俺は言語を習得した。

………いや大変だったんだぞ、マジで。

日本語とか英語とかとは言語形態が全然違うし、語源とかもわからないもんだから、本当に最初っから学ぶしかないってのがな辛いんだよな………


だが、一歳の前半から、本気で言語を学び続けた俺は、二歳の頃にギリギリだが簡単な言葉なら会話できる水準(レベル)へとなんとか辿り着いた。まあこのくらいなら、本当の子供と言語習得速度はあまり変わらないだろう。


そして俺は、家族との日々を育み、少しずつ色々な知識を集め、ここまで来たのだ。


………小さな子供を演じるのはちょっと恥ずかしいが………しょうがないだろう。


だって、俺の前世………後藤駆馬はもう終わったんだ。

郷に入っては郷に従え。

赤子になったのなら、赤子になれ。

そう言うものだろう。

今回の人生では、俺はこれを大事にして生きていきたい。


「カルト、朝ごはん出来たわよ!」

部屋の外から俺の名前を呼ぶ声が聞こえる。


「今行くね!」

俺は実の子供になった気持ちでしっかりと返事をする。

いや、実の子供ではあるか。精神はちょっと老けているが………まあ誤差だ。


俺は扉を開けて、食卓があるダイニング………勿論この世界ではそう呼ばれている訳ではないが、とにかく俺はそこに行く。

今日の朝飯は、なんかの魔獣の肉と、なんか野菜っぽいやつ。

まあいつものだな。


話を戻そう。

それで俺は言語を学んだ後、色々とこの世界を調査………と言っても家の中だけだが、とにかく情報を集めていた。



まずは、俺の家族についてだ。


-ジリス・グルーディア

俺の母親だ。

今の年齢は多分二十五歳ぐらいだろう。

髪色は後述のジェリルとは違い、燃え盛るような紅蓮ではなく、淑やかな赤色って感じだ。

彼女は平民出身で、この世界には基本的に平民に性はないらしいのだが、ジェリルに嫁ぐような形で結婚したためジェイルの性が与えられたらしい。

まあ、ここら辺は日本と同じような感じだな。

あと、可愛いらしい名前(地栗鼠)をしているが、意外と気が強くて、怒るとかなり怖い。

一度だけ父のジェリルにブチギレてた事があったが、家が壊れるんじゃないかと思うぐらいに怖かった。

その頃はまだ言語に乏しかったから、どんな罵詈雑言が飛び交っていたかはわからないが、本能的にこれはやばいと感じるレベルだった。


まあでも、それ以上に普段は優しいけどな。


-ジェリル・グルーディア

俺の父親であり、この村の村長だ。

年齢は多分三十歳前後、ジリスよりかは老けている。

普段は村役場で村長としての努めを果たしているらしく、昼に家にいることは少ない。

でも威厳たっぷりで優しい、いい父親だ。

昔何処かで傭兵をやっていたらしく、今でも朝のトレーニングは欠かせないらしい。

でも、その割に体は細くて筋肉は少ないように見えるが…恐らく服の下に隠れているのだろう。

いわゆる細マッチョってやつだ。

あと傭兵時代の傷なのかはわからないが、頬に小さな傷が横向きに走っている。

ちょっと、かっこいい。

ところで、ここはコルティア王国という国の領土のウェグドートという地域なのだが、グルーディア家は代々このドート村の村長を継いでいて、さらにここら一帯の村の統治を任されているらしい。だから平民の身でありながらも、性がある。


………でも、ジェリルは傭兵だったはずなのに、どうして今ここで村長をやっているのだろうか。

まあ、いつかわかることだろう。


-カルト・グルーディア

俺だ。

またしても名(・)前(・)に(・)少(・)し(・)不(・)満(・)が(・)あ(・)る(・)が、この世界にそんな言葉(カルト)はないから、俺の両親は全く悪くない。しょうがないだろう。


一応言っておくと、俺に特別な能力はまだ芽生えてない。たぶん、無いんだろう。


因みに、グルーディア家にはこの三人の他に一人…いや一匹の同居犬がいる。

ペットのガージスだ。

ガージスは優秀な番犬で、結構強いらしい。

でも、俺はまだ戦っているところを見たことがない。

いつか見れるかな。


ということで、この三人と一匹で構成されているのが、我がグルーディア家である。

我ながら、この家庭はすごく恵まれていると思う。

だって、村長だし。

ひとまず、家族に関して得られた情報はこれくらいだ。


次に………魔法についてだ。

正直、俺は今世の半分ほどを魔法に注ぎ込んだと言ってもいい。

勿論、言語を理解するのが最優先ではあったが、それでもだ。


なんてったって、魔法だ。


漫画やゲームに出てくる想像上の力。これだけは、何歳になってもワクワクするものだろう。

だから俺はタイミングを見極めて、父親のジェリルに聞いた。


確かあれは………俺が四歳の頃だったかな———


—————————

◻︎


ジェリルが珍しく昼に家に帰った時、俺はチャンスだと思った。


いつもジェリルはペットのガージスを連れて仕事場(村役場)に行くのだが、今日はいつもよりも早く帰って来た。なんでも、村の近くに魔獣が出て、それと戦ったとか。

あと、ジェリルは気付いていなかったらしいが、ガージスは足に怪我をしていた。

「ワウッ、ワウッ!」

ガージスがジェリルに吠えている。

「どうしたガージス………ん、怪我をしてたのか?気付けなくてすまなかったな………今治す。」



怪我に気付いたジェリルが患部へ手を当て、何かの詠唱をし、ガージスの怪我を治す。

ここがチャンスだと、俺は思ったのだ。


「おとうさん、なにしてるの?」


その時、俺は聞いた。

子供ってものは、何にでも興味を持つものだ。

別に俺が聞いても、違和感はないだろう。


「ん?カルトは魔法に興味があるのか?」

「うん!」


ジェリルは「そうか………それは、うーん………」とぶつぶつ呟いた後、俺にこう言った。


「まだ魔法を習うような年齢ではないが………確かに幼いうちに触れておくのは大切だな………そうだな…俺はあまり魔法に詳しくないから、ジリスに教えてもらったほうがいいだろう。後でジリスに伝えておこう。」


よし、やった!魔法を学べる!


「おとうさんありがとう!」

俺は父の言葉を聞いて、自分の部屋へと走り去った。


多分この時の俺は、今の外側の年齢に相応の笑顔をしてたと思う。だって、魔法だからだ。


—————————

◻︎次の日


やった!今日から楽しい楽しい魔法授業の始まりだ!———っと思っていたんだが…………

「ごめんなさいね………まだカルトには魔法を教える事はできないの………」


え゛


母親から告げられたその言葉に、俺は脳が揺さぶられるような衝撃を受けた。


教える事は、でき、ない?

おい…どういう事だよジェリル!話を通しておくんじゃなかったのか!?


———いや、待て。冷静になろう。

ジリスは、『まだ教える事はできない』って言った………言ったよな?

ということは、何か理由があるはずだ。


「おかあさん………なんで?」

俺は思いっきり悲しげな表情を作って、ジリスに問いかける。


「うーん………カルトにはまだ難しいかも知れないけど………簡単に説明するわね。」

大丈夫だ。俺の中身は高校生。理解力はそこそこある。だから………多分大丈夫だ。


そうしてジリスは淡々と語り出した。


「まず………この世界には魔力っていう力が世界いーっぱいに広がってるの。」

魔力!やっぱり魔法があれば魔力もあるよな…!


「魔力は世界を変える力と言われていて、人々の願いを叶えてくれるの。」

世界を変える力………人々の願いを叶える………

この世界の魔力ってのは、随分とスケールが大きいんだな…


「それでね、その魔力を感じることが出来るようになるのが………六歳からなの。」

………え?それってつまり………

あと二年は魔法を使えないってことじゃないか………?


「だから、魔法は教えられないの。………ごめんね?」

ジリスは淡々と、そう言い切った後、謝ってくれた。


そうか………六歳まで、無理なのか………


ん?


待てよ、『感じられる』って事は、当たり前だが魔力の存在自体はずっとあるって事だろ?

つまり、魔法の発動方法によっちゃ使えるんじゃないか?


「あ、一つ伝え忘れてたことがあるわ………魔力が感じられないまま魔法を使おうとすると………身体が爆散するから絶対に使わないでね?」

ジリスはまるで俺の心を読んだかのように、疑問に答えてくれた。



………あっぶねぇ!爆散するところだった!

ていうか、なんか物騒だなこの世界。



ジリスのおかげで難を逃れた俺は心を落ち着かせ、思考する。


六歳まで魔法が使えないとなると………やる事がこの世界の調査ぐらいしか無いよな………流石に、スキルとかがあるとは思えないし………剣術ならあるかも知れないが………嫌だな。


俺がそんな事を考えていた時、

「でも、魔法についてのお勉強だけなら、可能よ………お勉強、する?」


マジか。


「うん!」

勿論、即答だ。魔法についての勉強?やるしか無いだろ。


「分かったわ………けれどね!」

急にジリスが語気を強め、顔を寄せてくる。

「魔法の使い方だけは、危ないから絶対に教える事は出来ないし、万が一魔法の使い方を知っちゃっても絶対に使っちゃ駄目だからね!わかった?」

「う、うん。おかあさん………」


ちょっと、迫力があってビビったが、それだけ危ないという事なんだろう。

どっかの小説の主人公だったらここで調子に乗って魔法を使ったりして痛い目を見るかもだが………俺は調子に乗らない。だって、命は惜しいからな。


「よろしい!それじゃあ………魔法を学ぶうえで最も大切な、一人の賢者のお話をする必要があるから………しっかりと聞いてね?」


賢者の話…この世界(異世界)なら、御伽話ってより代々受け継がれて来た伝承って感じか。


それにしても………いるのか、賢者。

もしかしたら、魔王とか、勇者とか…………色々いるのかも知れないな。


「それじゃあちょっと長くなっちゃうけど………寝たらだめよ?」

そうしてジリスはゆっくりと語り始める。とある一人の賢者の物語を。


『誰も知らないような遠い昔………世界には四人の支配者がいました。

北の地を苦痛の氷で覆い、民の心をも凍り付かせた氷の女王

南の地を炎で埋め尽くし、己さえも焼き尽くす炎で世界を支配しようとした炎帝バルナロク

東の地を水で満たし、全てを海の底へ沈め、強欲にも自らの国を作り上げた水王クライス

西の地を吹き荒れる風で閉ざし、自らに仇をなすものを全て殺し尽くした風皇カルヴァール

この四人の支配者が、人間を支配し、二百年もの間、支配者として君臨し続けました。


人間たちは、この支配者達からの解放の日を待ち続けました。


そしてついに、この世界に一人の救世主が現れるのです。


その名は、賢者アルテロ。


アルテロは、この混沌の時代の中、人間に抗う力を授けました。

これは後に、四大魔法と呼ばれるものでした。


遥か昔、この世界は魔力で満ち溢れていると言うのに、魔法は限られた者にしか使えず、人間の大多数は抵抗する力もないまま支配を受け入れ、儚く散るほかありませんでした。


その中でアルテロは、誰でも使えるように簡易化された、炎、水、土、風の四種の魔法を創り出したのです。

炎の魔法は北の地の氷を溶かし、水の魔法は南の炎を鎮め、土の魔法は侵食する大海を埋め尽くし、風の魔法は暴風を掻き消しました。


こうして、この世界に君臨していた四人の支配者は倒され、人間は支配されることのない、平和な世界を手に入れる事が出来たのでした………』


「これが、偉大なる賢者アルテロの物語よ。」


………なんだろう。俺は少し、この世界で生きるのが不安になって来た。

魔法のスケールが大きすぎる。勿論その過去の支配者達みたいな力を持つ奴がポンポンいる訳じゃないだろうが………流石に怖い。


いや、でも俺は転生者だからな………もしかしたら何かしらのイレギュラーですごい力を持っている可能性がまだ、まだある筈だ。


うん、そう思っておこう。


「それじゃあ、今日はこれでおしまいね。」


え、もう終わるの?

残念だ………でもあまり我儘は言えないな。


「ありがとうね!おかあさん!」

俺はしっかりと感謝を伝える。


「ええ、どういたしまして。」

ジリスはにっこりとした笑顔で、返事をしてくれた。


—————————

◼︎現在


って事で、魔法は六歳からしか使えない事がわかった。

そして、実は今日はついに俺が六歳になる一日前だ………まあ、六歳になった瞬間に魔力が感知できるようになるってわけじゃないだろうがな。


因みに、魔法と魔力についての授業は、だいたい一週間に一回の頻度で行われた。

まあ、この世界の日数の数え方は少々特殊だし、俺の中で日本基準にして考えてるから、間違ってるところもあるかも知れないが………誤差だ。


因みに、天才母親先生ジリスの授業では色んな事を学べた。


この世界の殆どの現象は魔力によって引き起こせるということとか、この世界には魔獣という生物がいることとかだ。


それでこれは………予想通りっちゃ予想通りではあるんだが、喜ばしいことではない。


この世界には魔王がいる。

その名は、魔王ソルディガート。


魔王はこの村から、はるか北にあるアルティナ大陸の東端に四千年ほど居座っているらしい。

だが、現在は同じく北にあるガティリア帝国との戦争を百年ほど続けていて、他の大陸や国との戦争は少ないらしい。

だから、普通に生きていたら魔王と戦うことはまず無いだろう。

だがそれでも世界各地に魔王軍は散らばっているらしく、とある目的のために人間を襲い続けている……らしい。

恐らく俺はこの村の村長を継ぐだろうし………しっかりと防御策を考えないといけないかもな。


それにしても………魔王か。

いよいよガチファンタジーだなこの世界は。


というか、賢者アルテロの話に魔王が出て来なかったって事は、賢者アルテロがいたのはそれよりも前ってことになるのか…?

いちいち話のスケールがデカくて、これ以上何か情報が出て来たら頭がこんがらがりそうだ………歴史は苦手なんだよな………


「カルトー!晩御飯出来たわよ!」

部屋の外からジリスの呼ぶ声が聞こえてくる。


え?もう夜なのか?さっきまで朝だった気がするんだが………


窓の外を見ると、既に暗闇が広がっていた。


やっぱり、魔法のことを考えていると時間の流れが早く感じるな………

それと……なんだろう、いつもよりジリスのテンションが高い気がする。

ま、いいか。


「今行くよ、お母さん!」

俺はしっかりと返事をしてから部屋を出て、ダイニングの方へ行く。



そしてダイニングに続く廊下の角を曲がったその時———


「「カルト!六歳の誕生日………おめでとう!」」


「えっ」


突如俺に投げかけられた、祝福の言葉に、俺は動きを止める。


まじか。

四歳とか五歳とかの誕生日でも何か特別なことは無かったから、てっきり誕生日を祝う習慣はないって思っていたのに………


流石にこれは嬉しい。最高のサプライズだ。

ちょっと、泣けて来たな。


「さあ、座って座って!今日はご馳走よ!」

ジリスに促されて俺はストンと椅子へ腰を下ろす。


出て来たのは、今までのなんかの野菜となんかの肉みたいな貧相な物じゃなく、豪華に彩られた異世界の食材達がキッチリと整列させられ、食べられるのを待ち望んでいるような様々料理だった。


なるほどこれはご馳走だ。


今までのご飯も決して不味かった訳ではないが………この料理はどこかレベルが違う。

というか、異世界でこんなにレベルの高い料理が出てくるとは思っていなかったな………


「それじゃあ、食べ———」

「あぁすまんなカルト、ちょっとだけ待ってくれ。」

早速そのご馳走達を貪り尽くそうとしていた俺を、父が制止する。

何だよ、早く食べたいのに………


「先に、俺たちからお前への、贈り物を渡させてくれ。」

えっ、まじで?あんの?


まず母が何かを取り出し、俺に手渡してくれた。

布に包まれた何か………棒のようなもの………まさか!?

「カルト、開けてみて?」


母がそういう前から俺は既にその布についている紐を解き始めていた。

これは………魔法ファンタジーの代名詞とも呼べる、あの!



「杖………」

「えぇ、杖よ。まだちょっと気が早いかもだけれど………せっかくの誕生日だもの、それが私からの贈り物よ。」

「お母さん!ありがとうございます!大切に使わせていただきます!」


あ、嬉しさでつい敬語を使ってしまった………いやどうでもいいか。

ふむふむ、これが杖か………母に教えてもらった話だと、魔力の増幅と指向性とかに関係があるらしいんだが………あぁ、これか。


杖の先端には小さめの緑色の石がついている。

これは魔石というやつだ。

生物の中で魔力が凝縮されて出来る結晶………いわば、魔力の核みたいなものか。

魔石には魔力を溜め込む性質があり、それが魔法の発動を手助けしてくれるらしい。

まあ、魔法が使えるようになったらもっと詳細もわかるだろう。


いやぁそれにしても………嬉しいな。

なんかこう、家族を感じられた。


「カルト、杖に見惚れてるところ悪いんだが………俺からも贈り物がある。」

あぁ、そうだった。つい杖に見惚れて忘れていたが、まだ贈り物はあるんだった。


「最初は魔法についての本がいいかと思ったんだが………カルトは賢くて、とても小さい子供だとは思えないほどだったから、必要ないかと思ってな………」


まあ、確かにそうか。

この世界、本はそこまで貴重ではないらしいが、この家には八冊しか本がなかった。

でも、俺には母(先生)がいた。

並大抵の本を読むよりも、母に教えてもらったほうが早いってことだ。

どうも昔は教師を目指していたらしく、教えるのも上手い。

最高の先生だ。



………あれ?さっき父が俺のことを「とても小さい子供とは思えない」って言ってなかったか?

年相応だと思われるように努力したつもりだったんだが………駄目だったか。

…まあいいか。



それで、本の代わりの贈り物って何なんだろうか。

「だから………これにしたんだ。」


そう言って父が手渡してくれたのは、少々模様が刻まれている一つの木箱。

中を開けると………指輪が入っていた。


「それは旅の行商人から買ったものなんだが…………その指輪には魔石が組み込まれていて、もし指輪の装着者が危機に陥った時に、助けてくれる………らしい。」

何だか胡散臭いが………まあ多分、大丈夫だろう。流石に付けた瞬間に呪い殺されるとかはないはずだ。

でも………


「何で、二個なの?」

指輪は、二つ入っていた。


青の魔石と赤の魔石…二種類だ。

「その………あれだ。カルトにも好きな子が出来る日がいつかくるだろう?その時のためだ。」

なるほどな。

貴族ともなると恋愛に自由は少ないが、平民は基本的に自由だ。

恋をする日もきっと来るだろう。

いやぁ………この家に生まれて本当に良かったな………


俺は青の魔石の指輪を指に嵌める。

効果があるのかは半信半疑だが、付けておいて損はない。


「ありがとう!お父さん!」

「あぁ、どういたしまして。それじゃあ、お楽しみの、飯の時間だ。今日は沢山食べてくれ!」


俺は素早く飯に食い付くと、凄い勢いで食べ始める。

そういえば、食べるのは前世から好きだったな………




———前世、か。

前世って………今どうなってるんだろう。



考えても仕方がないか。


俺は少しだけモヤっとしたが、直ぐに意識は食事に注がれ、その気持ちは一瞬で消え去った。


—————————

◼︎


ふぅ………お腹いっぱいだ。

俺は母と父に日本で言う「ごちそうさまでした」的なことを伝え、風呂に入る。


いや、俺もこの世界に風呂があるなんて考えてなかったんだが、意外とどの家にもあるらしい。

ただの薪を燃やしただけの簡単なものから、魔石を使った本格的な風呂などがあるらしい。

因みにうちは、魔石を使った本格的な風呂だ。

まあ多分、村長だからだろう。


そういえば、初めて風呂に入ったのは四歳ぐらいの頃で、初めはジリスと………いや、やめておこう。

一応、俺の心は男子高校生とだけ言っておく。


そして俺は風呂を出て、布で体の水滴を拭き取ってから、自分の部屋へとまっすぐ戻る。

因みにこの布は父が魔獣から獲ってきたものを加工したものなのだとか。

俺もいずれ、魔獣を狩るようになったりするかもしれないな…


そんなことを考えながら、俺は魔光石に布を被せ、部屋を暗くしてからベッドに倒れ込む。

魔光石とは魔石の一種で、辺りの魔力を吸収して光る便利グッズだ。

この世界には電気とかの技術は無いが、便利なものは多い。


これだけは、異世界転生系のご都合展開なのかも知れないな。


そんなことを考えながら俺は眠りに———


眠りに——————



…………つけるかよ馬鹿野郎。


明日から魔法が使えるようになるかも知れないんだ。興奮して眠れるわけがない。

しかも、さっきの両親からのサプライズの興奮もまだまだ収まっていない。


俺はどうにも、明日の朝までは寝れそうに無かった。


かと言って………暇だな。

なんか………修学旅行前日みたいな感じだな。

寝なきゃいけないのに、楽しみすぎて寝れない。

まあ、この世界だと別に寝なきゃいけないって事は無いだろうが………それでも修学旅行前日って感じだ。


うーん………やっぱり寝る努力はしたほうがいいか?

いきなり魔法が使えるようになるとは限らないし、時間の無駄かも知れないな。


よし、羊でも数えるか。


羊が一匹…羊が二匹……羊が三匹………羊が四匹…………羊が五匹……………羊が六匹………………羊が七匹…………………羊が………………………………………………………


ゆったりと俺の意識は落ちる。











だが、

「——————っつ!!」

胸元に走る強烈な刺激によって俺の意識は完璧に引き戻された。


何だ?何だ?何だ?

鋭い痛みと鈍い痛みが交互にやってくる。

まさか指輪に呪いでもかかってたのか!?

いや、それは無い。

父の事だからちゃんとチェックはしているはず。

それじゃあこれは何なんだ!

死ぬほどってわけじゃ無いが、とにかく痛い!


俺はその痛みに耐えかねて足をドタバタさせて逃げようとする。

だが当然、そんなことで逃げることはできない。



そして数分ほど経った頃、


(あぁ、でも、少し、収まって、来たか?)


ゆっくり、ゆっくり、痛みが和らいでくる。

一体、何だったんだ。


ふう、ふう、と深呼吸をして、息を整える。

そうすると、何かを感じた。




それは、何かとしか言い表せないような、全能感というか、優越感というか、いろんな感情がブレンドされた、謎の心地よさが辺りを漂っているのを感じる。


ここまで来れば、誰でも察するだろう。









これが、魔力だ。

状況説明苦手なので、現在の話は◼︎ 過去の話は◻︎で表すことにしました。

すまんの


※言い訳ゾーン↓


彼はカルトのことを熱狂信者と呼んでいますが、カルトの本当の意味は礼拝です。

まあ、現代人だし、映画とかの見過ぎだね。


それと、これからは主人公フィルターで異世界言語が常に翻訳されるのでとても読みやすくなっています。ありがとう駆馬君。


※雑学ゾーン↓


異世界便利グッズランキング〜!


第一位:魔光石………光るぜ。明かりってのは大切だよなぁ?

第二位:魔石(魔光石以外の種類)………ま、そりゃ便利よ。だって、色んなことが出来るんだし。

第三位:魔鉱物………魔石と違って無機物を触媒に魔化したやつだから硬いねんな。だから、武器とか防具によく使われてるんよ。おん。

第四位:◼︎◼︎◼︎の◻︎◻︎◻︎………五千年前に◼︎◼︎◼︎が遺した◻︎◻︎◻︎。△△を⚪︎⚪︎⚪︎し、◇◇◇◇することが出来る優れモノ。

※伏字の全部が本編内で明かされるかどうかは微妙です。

第五位:秘密


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