第二話-おはよう異世界-
これは、グロく、ない、よ?
———何だか………温かい………
絶対的な死を遂げた俺は、謎の空間にいた。
全身は何か温かな液体に包まれるようで、心地がいい。
まるで胎内にいる赤子みたいに………
(ここが…天国か———)
俺は完全にリラックスすることにした。
ここにはあの巨大百足もいない。
楽しい………とても楽しい学校生活の真っ最中だった人生とはお別れする事になったが、ここも幸せだ。ぽかぽかしててあったかい。
………そうか………俺は死んだんだよな。
———ここが天国だとしたら………やっぱりあれは、地獄だったのか?
頭の中があの恐怖の洞窟と巨大百足で満たされる。
(まぁもう、何でもいいか………)
俺は思考を放棄し、この温かな液体に身を任せ眠ろうとする。
だってもう死んだんだ。何も考える事はない。
だが突如この空間内を響かせた振動で、俺は強制的に起こされた。
(なん、だ?…何かが、おかしい……………引き摺り出される!)
この空間が自ら俺を引き摺り出そうと収縮している。
嫌だ、出たくない。
(ここは天国じゃなかったのか?クソ、嫌だ!まだここにいたい!)
抵抗しようとするも思うように体が動かない。
(俺は、ずっとここに居たい………ん………?)
———だが俺はその時、この収縮に敵意はないと何となく感じた。
(………)
俺は抵抗をやめ、今度は収縮に身を任せる。
空間内の壁が収縮し、俺をもみくちゃにし始めてから、十分は経っただろうか、頭上から、光が見えてきた。
そして俺は、空間から放り出された。いや、取り出されたと言う方が正しいかも知れない。
空間から取り出された後、俺は全力で泣いた。
だって、そうしないと死んでしまうと思ったから。
———どう考えても今の俺の状況は、昔に保健体育の授業で習った、赤子の出産そのものだった。
部屋の中に俺の産声が響き渡る。
それに呼応して、誰かの泣く声がうっすらと聞こえた。
………産まれたばかりの人間の視力はとても悪いらしく、目の前に父親らしき男がいることと、俺が今四角い部屋の中にいることしかわからない。
ただ、これだけはわかる。
俺の父親の髪色は、赤色だ。燃え盛るような、紅蓮色だ。まあでも、まだ髪を染めているだけの可能性はあるだろう。何なら、そっちの方が高いはずだ。
………だが、なぁ。
(さっき、どう見ても、魔法みたいなのを使ってたよなぁ……?)
俺が見たのは、父親らしき人物が俺の母親らしき人物に向かって手を翳した後、何かを呟き、すごく体に良さそうな緑色の光が薄ぼんやりと掌から発せられたところだけだが………これはもう…確定だろ。
それと、全然知らない言語を話している。
………もし、もしだ。俺が輪廻転生して赤子へと生まれ変わったとする。まあ、人生は一度きりという思想を持っていたのに、それを突然否定されたようで、癪ではある。ただ正直に言うと、もう少し生きられるのは嬉しい。曲げてはいけないとか何とか言っていたが、やっぱり人は生きたいと思ってしまうのだと思う。まぁ、それはいい。
でも、なぁ。
確実に………
———どう考えても、地球じゃ、ないよな………
こうして、この世界に一人の人間が誕生する。
彼の名は、カルト・グルーディア。
特段歴史に名を残すわけでもない、単なるとある村の村長の息子である。
う、うまれた…




