第一話-目が覚めると、そこは恐怖の洞窟であった。-
※一応グロ注意
作者はちょーっぴり吐きそうでした。
「———痛ってぇ…」
眠りから覚め、平らで岩のように硬い床に意識をお出迎えされる。辺りを見渡すと、先程までの夕暮れどきの街並みとはうって変わって、夜のような暗闇が広がっている。
「何だ………?こりゃ……」
落ち着け、落ち着け。俺は海斗と別れて、その後トラックとぶつかって………
それで、結末は覚えていないが………
「多分、死んだ………はずだよな?じゃあ、ここはあの世ってことか?」
俺は咄嗟に着ていた服を捲り、自分の体を確認する。
外傷は一切ないし、どこも痛くない。そもそも同じ服を着ていて、破れてたりもしない。
それがこの状況をどう説明してくれるのかはわからないが、取り敢えず俺は死んでないと思う。思った。思いたい。
「一体、何なんだ………」
辺りをしっかり見てみると、ここはゴツゴツとした岩に覆われた謎の暗い洞窟だということがわかった。
それと、洞窟内は謎の光る苔が所々あるおかげで微弱に照らされており、何も見えないというわけではない。
『grrrrrrrrr』
その時、俺の腹が鳴った。
よく考えれば、俺は家に帰る途中だった。だから、飯を食えてない。
「………ここで待つだけだと………死ぬよな」
俺は、多分生きてる。生きていると言う事は、死ぬと言う事だ。どうにかしないと。
もう一度辺りを見渡すと、光る苔が洞窟の奥の方まで続いている事に気付いた。このまま待っているだけだといずれ限界が来ると思った俺は、ひとまず俺は光る苔を辿っていく事にした。
「………痛っ」
足元の岩が俺の足とゴツゴツ当たり、痛みを伝えてくる。
ぬめっとした生暖かい空気が頬を掠め、気持ちが悪い。
何で、俺は今こんなことをしてるんだ。
頭の中は困惑と、洞窟から脱出せねばという考えに埋め尽くされている。
………進まないと。
———
「はぁっ………はぁっ」
光る苔の数が、次第に多くなってきた。地面は今までのゴツゴツとした岩ではなく、完全に苔に覆われている。
これは………どっちなんだ?
出口が近いのか………それとも奥まで来てしまったのか。
わからない。
ここに、その質問に答えてくれる者はいない。
ひしひしと、不安を感じた心臓の鼓動が早くなる。落ち着け。きっと大丈夫だ。出口は近いはずだ。
適当な事を言って自分の体を落ち着かせる。
何だか、息も苦しくなってきた。でも、進まなきゃ。
—————————
洞窟の中を進む。進む。辺りは苔に覆い尽くされ、洞窟の奥苔の光により道が照らし出されている。
だが出口は一向に見えない。
「はっ…………はっ………」
もう、息も絶え絶えだ。吸っても吸っても、酸素が肺に入ってくる感じがしない。
………もう、どれほど歩いただろうか。どれだけ地上に近づいただろうか。
———俺にはわからない。
とにかく、歩く。歩く。
『カチッ』
そうしたら、何かの音が聞こえた気がした。何だろう。
でもそれが何にせよ、この変化の乏しい洞窟の中での、貴重な変化だ。確認する他はない。
俺は少し早足で、奥へ奥へと進んだ。
進んで、進んで………見てしまった。
「……んだよこれ………」
そこには、生き物がいた。
頭の先から飛び出た触覚が何かを探すようにゆらゆらと揺れ、顎に備えた大きな牙がカチカチと鳴らされる。
その長い胴体には恐ろしいほどの数の足がついている。
そう、あの梅雨に家の中で見つけたりするとヒヤッとする…多足類のl……百足だ。
………ただの百足なら、どれほど良かっただろうか。
俺の目の前にいる百足は、家の中で見たりするような可愛いサイズじゃない。
デカいんだ。信じられないほどに、デカい。
ネットとかで検索すると出て来るようなサイズでもない。
下手をすると………70cmはあるかもしれなかった。
そんな百足に恐れをなした俺はとにかく逃げようと後退りを———
『キチチチチチチチチチチチチチチチチチチ』
「は?」
突然巨大百足が鳴いたかと思うと、目の前から姿を消す。
一体どこに。
そんな考えが脳を巡る前に腕に鋭い痛みが走る。
その瞬間、俺は全てを察し、腕を洞窟の壁へと叩きつけた。
「くそ…!くそっ…!何で俺がこんな………!」
ガンガンと腕が痛むがそんなことお構いなしに俺は腕を叩きつけ続ける。
『ギ、ギギ』
腕から乱雑に引き剥がされた巨大百足が地面にボトリと落ちる。
「死ね…!死ねっ…!」
情けない声を上げながら俺は巨大百足を踏みつけ、殺す。
足に気色の悪いドロドロとした感触が伝わってきて、俺は吐きそうになったが、胃の中は空っぽで、出てくるのは胃液だけだった。
『ギ、ギギィ………』
百足は体を半分以上に折りたたまれ、足をピクピクとさせている。
まだ、生きてるのか。いや、どうせ死ぬだろう。
そんな事より………
「戻るしか、ない。」
蟲において、一匹いるって事は、百匹いるって事と同じだ。
もうこんな奴とは絶対に会いたくない。
「ぐっ…………うぅ………」
恐らく百足に噛まれたであろう右腕がズキズキと痛む。
傷は………見たくない。
心も身体も満身創痍だが、俺は洞窟を歩き続けた。
………戻ったからって、今の状況はどうにもならないのに、俺は戻るしかなかった。
—————————
五分ほど歩いただろうか。俺は苔に覆い尽くされたエリアを抜け、俺が目を覚ました苔が少ないエリアまで戻って来ていた。
「………ぅ?」
その時突然、目の前が弾けた。
酸欠か?
いや、そんなものではない。
明らかに体が生命の危機を訴えている。身体中から汗が噴き出て脳は常に激痛という警鐘を鳴り響かせ手足の筋肉は硬直し目の前がぐるぐると回る。
そこで俺は巨大百足に与えられた傷をを思い出す。
ああ、毒か。
俺は力無く地面へと倒れ込んだ。
(今度こそ、もう無理だ。俺はもう、死ぬ。)
そう思った。
というか、今の俺の状況は何なんだ?トラックに轢かれて、どうなったんだ?ここは地獄なのか?それともただの悪夢か?誰か、俺の質問に答えてくれ。というか、外はどうなってるんだ?ここはどう考えても俺が元いた街じゃない。そもそも、今は何時なんだ。ここは何処で、俺は今何をさせられているんだ。俺には一切皆目見当もつかない。考える、考えて、考えても、わからない。何も、わからないが………今度こそ俺の肉体に死がやってくる事だけはわかる。
俺の脳は巨大百足の毒により勝手にフルで回転させられたままオーバーヒートする。だから、思考は一切纏まらなかった。
『カチッカチカチッ』
洞窟の奥の方から、大量の音が聞こえてくる。
多分、それ同士の細長い足がぶつかり合って、不気味な音を奏でているんだろう。
巨大百足だ。
「………………」
もう、唸り声も出ない。
………毒に、巨大百足。もしここから生き残れたら、俺は多分、神なんだと思う。まあ、そんなわけはない。普通に襲われて、普通に食われるだけだ。そもそも俺の持論では、神は居ないと言う結論が既に出ている。やっぱり俺は厨二病だ。死の間際にいるって言うのにこんな適当なことを考えて………一体、どうしろって言うんだ。
大量の巨大百足が、俺に飛びかかって来た。
———あぁでも、襲われるのが真っ暗闇の洞窟の中で良かった。
だって、見えないからな。
自分が喰われる光景なんて、見たらショックで死んじまう。
あれ?喰われても死ぬのか?
やはり、思考はまとまらない。
ああ、キチキチと、百足の不気味な音だけが聞こえる。果たして俺は今、全身でいうとどの部位を喰われているのだろうか。でも、先程の毒のおかげなのか、痛みはもう感じない。
あれ?そういえばさっき倒れた時に天井にあった苔が見えないな。
あ、そうか。
もう、目が喰われたのか。
———こうして、後藤駆馬は身体中を巨大百足に食い尽くされ、凄惨な死を遂げた。
し、しんだ………
因みにここでの光る苔ってのはヒカリゴケじゃないです。
自分から光を発する謎の品種だとよ………どういう仕組み?
………これを書いてる途中に調べたら大量の百足が出てきて吐きそうになったのはヒミツ。




