第2話:ただの箒を一振りしたら、隣国の聖女様と騎士長が腰を抜かした
第2話をご覧いただきありがとうございます!
今回はアルトが自作の「ただの箒」を使い、
隣国の聖女様たちの前でとんでもない無双を見せつけます。
どうぞお楽しみください!
「グラァァァァァッ!!!」
体長十メートルを超える災厄級の巨狼、
トリプルヘッド・ガルムが、
鋭い爪を振り上げて俺に飛びかかってくる。
まともに喰らえば、体なんて一瞬で消し飛ぶ。
けれど、俺は焦ることもなく、
背中のリュックから一本の『箒』を抜いた。
「ふぅ。旅の途中で汚れるのは嫌だし、
ちょっとお掃除しちゃおうかな」
俺の能力【無限充填】によって、
世界最高峰の神話級素材に、
数年分の魔力を限界まで注ぎ込んだ箒だ。
俺にとっては、ただの使いやすい掃除用具。
けれど、普通の人間がこれを見れば、
世界を滅ぼせる神話級の遺物に見えるらしい。
「えい」
俺は迫り来る巨狼に向かって、
普段通りに、サッと箒を一振りした。
ズババババババババァァァァン!!!
俺が軽く箒を振った瞬間。
森の空間そのものが『パキィン』と割れた。
箒の先から放たれたのは、
あらゆる物質を分子レベルで消滅させる、
不可視の超巨大次元断裂。
「グ、ガ……ッ!?」
ガルムは悲鳴をあげる暇さえなかった。
飛びかかってきた巨体は、
放たれた一撃に触れた瞬間、
文字通り『チリ一つ残さず』消滅したのだ。
それだけではない。
俺の放った一撃はそのまま遥か彼方まで飛び、
国境の森を綺麗に数キロメートルにわたって、
一直線に消し飛ばして更地にしてしまった。
「あ、ちょっと力加減を間違えちゃったな。
綺麗に掃除しすぎちゃった」
ポリポリと頭を掻きながら、
俺が箒をリュックに戻した、その時。
「な、ななな、なにあれぇぇぇぇぇ!?」
「ギ、ギョエェェェェーーッッ!!!
ま、魔王軍の幹部クラスが一瞬で消えた!?」
すぐ近くの草むらから、
信じられないほどの大絶叫が聞こえてきた。
驚いて振り返ると、そこには、
豪華な白い法衣をまとった美少女と、
全身を高級な鎧で固めた騎士の男がいた。
二人は完全に腰を抜かし、
白目を剥きながらガタガタと震えている。
「あ、こんにちは。驚かせてすみません」
俺が愛想よく挨拶すると、
騎士の男が震える指で俺を指さした。
「き、君は一体何者なんだ……!?
今のは最高位の神聖魔法か!?
それを、ただの箒で放つなど、
人間の仕業ではない……ッ!」
「えっ? 今のはただの、
落ち葉を掃き出すための箒ですよ?」
「そんな落ち葉の掃き方があるかぁぁぁ!」
男は頭を抱えて叫んだ。
どうやら彼は、隣国の近衛騎士長で、
名前をガイアというらしい。
そして、その隣で呆然としていた美少女――
この地域の聖女であるリリアーヌ様が、
ハッと我に返ったように俺の手を両手で握りしめた。
「素晴らしいです……!
これほどの至高の魔道具を自作されるなんて!
あなた、もしかして伝説の職人様ですか!?」
「いえ、ただの元・掃除係です。
前の国をクビになって、旅をしてる途中で……」
「クビ!? この天才をクビにするなんて、
その国の人たちは全員盲目なのですか!?」
リリアーヌ様は信じられないとばかりに、
美しい目を大きく見開いて怒ってくれた。
そんな風に他人に肯定されたのは初めてだった。
「アルト様、と言いましたね。
もし行く宛てがないのでしたら、
ぜひ、我がエルフ神聖国へお越しください!
最高の工房と、衣食住を全て保証します!」
「えっ、いいんですか?」
「もちろんです! むしろ私からお願いします!」
リリアーヌ様は満面の笑みを浮かべ、
俺を自分の豪華な馬車へと招き入れてくれた。
こうして俺は、隣国へと国賓待遇で、
迎え入れられることになった。
* * *
一方その頃、アルトを追い出した元の国――。
「おい! なぜ結界の維持率が下がっている!」
宮廷の会議室では、魔導師長ゼムルが、
真っ青な顔をして部下たちに怒鳴り散らしていた。
「わ、分かりません!
アルトを追い出してから、城内の魔導具が、
次々と機能を停止しているのです!」
「バカな! あいつはただの掃除係だぞ!?
おい、早くあいつの残した箒を探せ!
あれがあれば、結界は元に戻るはずだ!」
「それが……アルトは私物だからと、
あの箒を持って行ってしまいました!」
「なんだとぉぉぉぉぉぉぉッ!?」
ゼムルの絶叫が、
ヒビの入りまくった王城に虚しく響き渡る。
迫り来る魔王軍の足音が、
すぐそこまで迫っていることにも気づかずに。
(つづく)
第2話をお読みいただきありがとうございました!
聖女リリアーヌ様に拾われ、
アルトの第二の人生がここから始まります。
一方、元の国はすでに崩壊寸前……!?
次回、最終回(第3話)は「最高の工房で溺愛されるアルトと、自業自得で滅びる元の国」です。
スカッとする結末をお楽しみに!
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