第1話:魔力ゼロの掃除係はクビ。ただし、俺の箒が国家結界の核でした
初めまして、ご覧いただきありがとうございます!
全3話の短編ファンタジーです。
スマホでサクッと読めてスカッとするお話をお届けします。
どうぞ最後までお楽しみください!
「おいアルト。お前のような無能な掃除係は、
今日限りで我が宮廷魔導具師団からクビだ」
きらびやかな装飾が施された宮廷の最高会議室。
ふかふかの高級ソファーに深く腰掛けた、
魔導師長ゼムルは鼻で笑いながら俺にそう告げた。
その隣では、取り巻きの魔導師たちが、
「ククク……」と下卑た笑い声を漏らしている。
「クビ、ですか?」
「そうだ。我が師団は国中から選りすぐりの、
天才が集まるエリート集団。
それなのに、魔力もまともに測定できないお前が、
毎日毎日『箒』を持ってウロウロして、
同じ給料を貰っているなど不公平極まりない。
お前が作った魔道具なんて、
ただの安っぽい掃除用具ばかりじゃないか」
ゼムルの言う通り、俺の魔力測定値は『ゼロ』だ。
だから俺は宮廷魔導具師でありながら、
毎日城内の掃除ばかりを命じられていた。
だが、ゼムルたちは決定的な勘違いをしている。
俺の魔力がゼロなのは、自作した魔道具に、
すべての魔力を完璧に『充填』しているからだ。
空間に漂う魔力を100%魔道具に注ぎ込める、
【無限充填】――
それが、俺の持っている真の能力だ。
そして、俺が毎日「掃除」と称して、
城中を磨き上げていたあの箒やバケツこそが。
この国を外敵から守る、
【国家級防衛魔導結界・アイギス】の、
制御装置そのものだったのだ。
「……分かりました。お世話になりました」
俺は反論しなかった。
度重なる嫌がらせや、徹夜での魔道具作り。
そのすべてをゼムルたちの手柄にされる日々に、
もう心底疲れ果てていたからだ。
「ふん、潔くて結構だ。
おい、お前が持ってきた薄汚い掃除道具一式も、
さっさと持って出て行け!
二度とその不細工な顔を俺たちの前に見せるな!」
「はい、お荷物になりますので、
私の私物はすべて持ち帰らせていただきますね」
俺は丁寧に一礼し、愛用している、
『ただの箒』と『ただのバケツ』、
そして『ただの雑巾』を手にとった。
これらはすべて、俺がSSS級の神話素材を、
極限まで圧縮して作り上げた、
世界に一つしかない神話級の魔道具だ。
俺がそれらを持って一歩、
会議室の外へ踏み出した瞬間。
――パキィン。
不穏な、ガラスがひび割れるような、
硬い音が王城の空に響き渡った。
(あ、結界の核である俺の箒を移動させたから、
お城の防衛結界の維持率が下がっちゃったな)
まあ、クビになった俺にはもう関係のないことだ。
俺はゼムルたちの嘲笑を背中で聞きながら、
すっきりとした気分で王都を去る準備を始めた。
* * *
王都を出てから、およそ三日。
俺は隣国へと続く広大な国境の森を歩いていた。
「ふふん、ふふーん♪」
足取りは最高に軽い。
これまでは薄暗い地下の工房に閉じ込められ、
迫り来る納期とゼムルの罵声に怯えていたのだ。
それが今や、見渡す限りの青い空と緑の自然。
これからは誰の目も気にせず、
好きな魔道具を好きなだけ作ることができる。
「まずは、もっと性能の良い、
全自動の洗濯機でも作ろうかなぁ」
俺は背負った大きなリュックを揺らしながら、
未来のモノ作りに思いを馳せていた。
そのリュックの脇には、
あの『ただの箒』が差し込んである。
その時だった。
ドォォォォォン!!!
凄まじい爆発音と共に、
目の前の大木が何本もなぎ倒された。
立ち込める土煙の向こうから現れたのは、
体長十メートルを超える巨大な影。
「グラァァァァァッ!!!」
血走った三つの目でこちらを睨みつける、
漆黒の毛並みを持った巨狼。
間違いない。
冒険者ギルドの危険度指定で最上位に君臨する、
災厄級モンスター【トリプルヘッド・ガルム】だ。
「うわぁ、大きいワンちゃんだなぁ……」
ガルムは鋭い牙からボタボタと、
大地を溶かす強酸のヨダレを垂らしている。
完全に、俺を美味そうな餌として認識していた。
(どうしよう。俺の進路を塞ぐように、
立ち塞がっちゃっているな……)
呑気に首を傾げる俺に向かって、
災厄の巨狼が、大地を爆らせて飛びかかってきた。
(つづく)
第1話をお読みいただきありがとうございました!
アルト、絶体絶命の大ピンチ……!?
果たして「ただの掃除係」がどう切り抜けるのか。
次回、第2話は「ただの箒の一振りで、聖女様が腰を抜かすお話」です。
お楽しみに!
少しでも面白い、続きが気になると思っておられましたら、下部にある【広告の下の☆】から、評価やブックマークをいただけますと執筆の励みになります!




