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悪役王子は、元聖女のために全てを壊すおつもりです  作者: 白波さめち【カクヨムコン11 受賞】


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16話 元聖女を尋問


 ベアトリスが逃げ出さないよう、長椅子の背に手を添えて彼女を閉じ込めた。


 ベアトリスは長椅子に座ったまま僅かに身じろぎながら、悪女の仮面を被り直し精一杯の微笑みを浮かべる。


「何の話かしら」


「トリスカ国の一行を尾行していたな。馬車を壊したのも君だろう?」


 彼女は気まずそうに視線を逸らした。

 その反応こそが肯定の証だが、そんな事は告げない。


 彼女の顔色、視線、瞬きの回数。全身から発する反応の全てを捉え、彼女の目的を……手繰っていく。


「マクスベルの馬車に国使を同乗させ、確実に仕留めることが目的だったのか?」


「なっ……そんな訳ないでしょう!」


「じゃあ何故同乗させた」


「誰かに……襲われるかもしれないと思ったからよ」


「ほとんど交易もない国の、国境近くでか?」


 ベアトリスは答えない。

 ただ、揺れる瞳を必死に耐えながら増える瞬きに、俺の喉が鳴った。

 

 ベアトリスは『国使が襲われる』ことを事前に知っていた。それしか彼女が起こした行動に説明がつかない。


 ただ、彼女は『誰が』襲うかまでは知らなかった。

 それもまた、彼女が隠す真実だ。


 ベアトリスの行動、言動を脳内で繋ぎ合わせていく。


 妨害された国使との接触。

 首謀者であるマクスベルを、国使の守りに使ったこと。

 それは、一つの答えを示していた。


「ああ、俺が国使を襲うと……そう思ったんだな」


 びくりと震えた身体。

 怯えた瞳が、彼女の行動の意図を肯定を証明していた。


「ベアトリス様、ギルバート様は……」


「いや、いい」


 カイルの言葉を、手を挙げて制止した。

 計画のため、俺は自分の悪評すら利用してきた。王宮にも、王都にもこれ以上なく悪評が広がっている。

 

 手段を選ばないという一点で、彼女が抱く俺への懸念は正しい。


「それで? 俺は君の危機を救い、トリスカ国の一行は無事国へと戻った。俺への疑いは晴れたのか?」


「……国使を襲ったのはマクスベル王子でしたけど、だからって貴方を信じる理由にはならないわ。私達を助けたということは、貴方もあの場にいた。そういうことでしょう?」


「それは、何を知っているか話すつもりはないということか?」


「そうよっ! 当たり前でしょう? 思い通りになるなんて考えないことね!」


 問い詰めて分かった。

 彼女は、全てを知っているわけでない。

 ベアトリスは断片的な情報から行動を起こしている。

 

 それは懐柔できる可能性を示していた。


「ふふっ。ふははははは」


「な……何よ!」

 

「全てを知っているわけじゃないと分かって、安堵しただけさ」


 そう。俺は嫌われている訳じゃない!!

 要は()()()()()()。そういうことだ!


 ベアトリスは勝気な笑みを浮かべたまま、キッと俺を睨みつける。


「……だから何? 吐かせるために拷問でもする気?」


「拷問? 被虐趣味でもあるのか」


「あるわけないでしょう!?」


 良かった。俺にもそんな趣味はない。

 彼女の細い顎に指先を添えた。

 触れただけで、彼女の身体がびくりと反応する。


 うん、めちゃくちゃ怖がられてる。

 それを解かなくては始まらない。


「拷問なんてしなくても、やり方はある」


「……な……何を」


 何故ベアトリスが咄嗟に手で胸を庇ったのかわからない。


 暗器を忍ばせてる可能性を考慮して、彼女の手首を掴み上げ距離を詰めた。


 自分で距離を詰めておきながら、彼女の吐息が触れる距離に心臓が飛び上がる。

 

 断られませんように。

 断られませんように。

 断られませんように!!!!!

 

「デートをするぞ」


 精一杯の微笑みを浮かべると、ベアトリスは一拍置いて「んぇ!?」と素っ頓狂な声を上げた。


 拒否はない。

 断られなくてよかった!!


 視界の端でシーナが両手を口に当て、頬を赤く染めて震えている。カイルは小さく首を傾げたままポツリと呟いた。

 

「盛大にすれ違ってますね」


 掴んだ手首のサイズを必死に指先で測りながら、俺は彼女の警戒を解くための計画を脳内で練り上げるのだった。

 

 


ギルバートさん、ちょっとベアトリスが関連するとIQさがっちゃうんです。


可愛いなーと思ってもらえれば嬉しいです。

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