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孵化

試験的に改行大幅増にしてみました。

 ぴき、ぺしっ、ぱりりっ。

 ややくぐもった破砕音が沈黙に支配されていた部屋の空気を震わせました。

 全員の目が大絶賛孵化中の卵に釘付けになる中、室内の緊張感は最高潮に達したまま凍りついています。


 ただ、通常新しい生命の誕生に立ち会う瞬間の緊張感は、どちらかと言えば「がんばって!」的な性質のものだと思いますが、現在この場を支配するそれはむしろ「お前は誰だ!」でしょうか。

 喩えるなら、夜道で茂みがガサッと揺れた時の「クマかイノシシか、どっちだ!?」的な緊迫感と言いますか。


 そんなことを考えている間にも美しかった卵はひびに蝕まれ続け、細かい破片がぱらぱらとテーブルに飛び散ります。

 やがてひび割れた殻の縁に小さな手がかかり、追って鱗に覆われた爬虫類の頭がひょこりと顔を覗かせました。


 薄く青みがかった白銀の鱗に、僕と同じ色のつぶらな瞳。大きさは乳離れしたばかりの子猫くらいでしょうか。殻の天辺部分を帽子のように乗せているのがまた何とも。


 「かわいい……」

 翠が迷わずそう呟くほどにその顔は愛くるしいものです。が――。

 ぷるぷると頭を振って殻の残骸を払い落し、卵の外へと一歩を踏み出したチビ竜(多分)の全貌は、少なからず僕たちの予想を裏切るものでした。


 「かわいいけど……」

 「足、短い……?」

 鱗瑛とブレイズフィールも驚きを隠せないようで、どこぞのアナグマ狩猟用に改良された犬の如き体型に目を見開いています。

 要するに、胴長で翼はなく、身も蓋もない言い方をしてしまえば『短足』。身も蓋もない言い方をしなくても、『足短い』。


 すると僕たちの視線か感想が気に入らなかったのでしょうか。チビ竜の口がかぱっと開き、魔力を伴った甲高い鳴き声が僕たちの鼓膜を揺さぶりました。


 「ピィィィィィァァァァァァァァァッ!」


 その声と共にまたあの銀光の魔法陣がチビ竜を取り囲むように展開し、一瞬で消えた後には青みがかった銀髪の子供がテーブルに腰掛けていました。

 人間で言えば、五、六歳と言ったところでしょうか。肩口で切りそろえられたサラサラの髪に白磁の肌と蒼い瞳。もしかしなくてもあのチビ竜の人化した姿なのでしょうが……。

 

 「人型は足短くないんだ……」

 思わず本音が僕の口から零れおちた瞬間、ピキッという音が聞こえそうな勢いでチビ竜がキレました。


 「先ほどから無礼を申すでない!我の姿形になんら問題などないであろう!」

 子供特有の透き通ったソプラノの声ですが、言葉づかいは非常に傲岸。でも本体を先に見てしまったせいか、いくら怒ろうと背伸びしているようにしか見えなくて、むしろ微笑ましいとすら感じます。


 ただ指示式を突っぱねられた竜神のふたりにとって、この状況はとても微笑ましいなどと言っていられる場合ではないのでしょう。

 「龍族の長、鱗瑛が問います。見たところ僕たちの眷族ではあるようですが、おまえは『何』なのか」


 鱗瑛は、普段柔和な彼にしては珍しく険のある面持ちで少年の前に立ち、優位を主張するかのように上から見下ろしています。

 こういうところは竜も犬もパンダも大差ないですよね。あ、パンダというのは自分の体格をできるだけ大きく見せるために、逆立ちしてマーキングをするそうなので。

 こんなことを考えていると知られたら、全竜種総出でぶち殺されるので、絶対に口には出しませんが。


 「我は『己が尾を銜える者』、死と再生の竜、ウロボロス。龍族の長だか竜神だか知らぬが、我の卵にやたらと干渉してきたのはそなたたちだな?」

 対するチビ竜も負けじと下から鱗瑛を睨みあげますが、まさかウロボロスだったとは。道理で胴体が長いはずです。まあ、あの足の短さは予想外でしたが。


 ウロボロスというのは、世界を取り巻きながら自分の尾を銜えて眠る竜で、その姿形から死と再生や無限性、不老不死などの象徴として知られています。ただ確認されていた唯一の個体は、その個体が取り巻いていた世界が滅んだ時に共に消滅したはずなんですよね。


 「そうだ。だが俺たちは守護者の素体を作っていたんだ。ウロボロスになんか用はねえ。どうして俺たちの指示式を妨害した?」

 鱗瑛の背後からウロボロスの子供をねめつけていたブレイズフィールが吐き捨てました。


 「そなたらの都合など知らぬ。だが我の自我があの卵の中で芽生えた時、我の存在をねじ曲げるかのような干渉が苛立たしくてな。干渉にロックをかけることはできなかったから、誰とも知れぬ輩に干渉されるくらいなら自分で自分を好きなように弄ってやろうと思っただけだ」


 自立心旺盛と言えば聞こえは良いですが、龍とドラゴンを合わせることによって竜神すら否定する竜種が生まれるのはちと問題です。僕の理想の守護者計画をどうしてくれる……。

 ですがそのウロボロスのひと言に、まず鱗瑛が顔色を変えました。


 「ちょっと待ってください。今、『自分で自分を好きなように』と言いましたよね。それって……自分でウロボロスとしての行動コードまで改変したということですか?」

 「何をどう改変したのか、説明しやがれ!」

 こちらも焦った様子のブレイズフィールが詰め寄ります。どうやら自立心というよりも自律心が行きすぎちゃっているレベルで旺盛な個体のようですね……。


 「まず、我はもう我の尾の味に飽きた。だからこれからは他のものを食べようと思う」

 そしてウロボロスの子供が涼しい顔で言い放ったのは、とんでもないひと言でした。


 「尾を銜えないって――それってもうウロボロスではないのでは?」


 思わず僕がそう呟いてしまったのは仕方のないことだと思います。

いつもお付き合い下さってありがとうございます。


冒頭でも書いたように、試験的に改行を増やしてみました。

「読みやすくなった」「むしろ読みにくくなった」「更にもっと改行しろ」など、ご意見がございましたら参考にさせていただきます。

特に何もないようでしたら、完結までいつもの画面みっしりスタイルで行ってしまうと思います;

ただそれが非常に読み難いであろうことは学びましたので、もし次に別の物語を書くことがあれば、その時は最初からこの教訓を活かしたいと思っています。


それでは引き続きお付き合いいただけますよう、よろしくお願いいたします。

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