ウロボロス
ラスト部分で、さらっとですが津波について触れています。
警告が遅れまして申し訳ありませんでした。
そして引き続き改行多くしています。
ご意見下さった方、本当にありがとうございましたー!
正直に白状すれば、あの卵の中身がウロボロスだと判明した時点で、僕としてはもう守護者計画は振り出しに戻ったような気になっていました。
何せ、領域の守護者と世界に絡まる竜では、まるでかけ離れた存在です。
それに鱗瑛たちとの会話でウロボロスの子供が高い知性を持っていることも判明し、廃棄処分の可能性も消えました。まあ、永遠を象徴するウロボロスを処分するなんて、生半可な労力ではないと思いますが。
だから思わずあの堂々たる脱ウロボロス宣言に突っ込んでしまった時も、もう半分くらいは他人事感覚だったんですよね。
なのに現実は残酷で――。というか、ここ最近の僕の現実の残酷非道さは、まさにその『非道』の字の如く、正しい道筋に背いて百回くらい逆走する勢いで残酷なのですが。
「ふむ、そなたが此度の契約者か」
立ちはだかる竜神ふたりの肩ごしに僕を見すえた幼竜が、さらりと恐ろしいことを言いました。
いや、『契約』というのは誇張抜きに、本当に恐ろしい言葉なんですよ!過去にも色々と例があるじゃないですか。魂だの命だの心臓だの、契約を舐めていたせいでとんでもない代償を払うことになったケースが。
とりあえず、ここははっきりきっぱり否定しておかなければ後が怖そうです。
「いえ、違います」
「違わぬぞ。我の瞳はそなたのものと同じ色であろう?契約者の証だ」
「ちょっと待ってください。瞳の色ということは、さっき僕の魔力を吸った時に契約したってことですか?」
僕と卵が接触したのはその時だけなので、他に考えようがありません。
「まさに。とても豊潤で香り高い魔力であった」
「そんなワインか茶のような褒め方をされても複雑な気分なのですが、それが契約であることを相手に伝えずに締結するのは、協会の規定では違法契約ですよ」
ウロボロスが協会法に縛られた存在かは正直なところよくわかりませんが、変な契約に巻き込まれることだけは切実に勘弁していただきたい。
すると人型になった幼竜はきょとんとした顔で、僕とそっくり同じ色の瞳を瞬かせました。
「我の卵には、指を触れれば契約締結になるときちんと明記してあったぞ?」
「え?」
「殻のどこかこの辺に……」
そう言ってテーブルの上の殻の残骸を子供特有のふっくらとした手で漁りはじめます。
「あった」
色白の小さな手で差し出された殻の破片は、やはりと言うかあの文字や記号による複雑なコードで覆われています。そしてその一部を指で示されて初めて、僕はそこに竜言語以外の見慣れた文字が極小のフォントサイズで紛れ込んでいることに気付きました。
「……『甲は乙が己の意思で卵に接触した時、乙が契約者たる意思を表したとみなす』」
ウロボロス、なんという恐ろしい子……!
「鱗瑛、ブレイズフィール!君たちは卵にまったく手を触れなかったんですか?それ以前に、解読を試みた時にこの詐欺まがいの契約書に気付かなかったんですかっ」
僕には珍しく、焦りがはっきりと顔に出ているのを自覚しましたが、今はそれどころではありません。僕の過失でこんな変な契約をクリスティルダに持ち込むわけにはいかないのです。
慌てて振り返れば、竜神のふたりも顔面を蒼白にさせていました。
「解読は上から順に試みていたので、下まではまだとても目が行きとどいていなくて……」
「それに毎日素手で触っていたが何ともなかったぞ?」
すると意外なことに、助け船はウロボロス自身が出してくれました。
「それはそなたらに契約者たる資格がなかったからであろう。我が宿るべき世界をそなたらは持っておらぬ」
「それなら僕だって世界管理者ではありませんから、資格などないはずです」
良かった、これで契約解除できる……!と思ったのも束の間、僕の安堵は容赦なく木っ端微塵に砕かれました。
「いや、契約できたということは、そなたにその資格があったということだ。よって疾く我を新しい世界に案内せよ」
「ありえません。僕は確かに世界管理を代行していると言えないこともないですが、それでも管理者権限は持っていませんよ」
「ウロボロスの契約を見くびるでない。契約できたということは、そなたに我を世界に宿す力と資格があるということだ。なので早う我をそなたの世界に連れて行くがよい」
納得が行かない思いでぐるぐると思考を巡らせていると、それまでずっと黙って成り行きを見守っていた紅が口を開きました。
「少し聞きたいのですが、契約というからには、ウロボロスは蒼にどんな見返りを与えるのですか?」
言われてみればそうです。僕が知る限り、ウロボロスはただ世界に巻きついて眠るだけの竜ですから、自分の世界に宿らせてあまりメリットがあるとは思えません。
「ふむ。我が契約者に与える最大の見返りは、大掃除だな」
「大掃除?」
そのひと言に、部屋の中の誰もが怪訝そうな顔になりました。
「そうだ。契約者が世界の現状に不満を持った時、我が大津波を起こして世界を白紙に戻してやるのだ」
強制リセットボタンですか!
そんな機能、クリスティルダに必要ありませんから……!!
いつもお読み下さってありがとうございます。
改行増やすと尺の感覚が掴めないことに気付きました。
これから慣れるように頑張ります;




