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猫と薄毛とピロリと幻獣



 「じゃあ、まずは幻獣の特性について」

 お昼を食べながら大まかなことは説明しておいたので、テーブルを片付けた後は即本題に入ります。

 「そもそも幻獣とその守護領域をどの程度結びつけるのか、そこから考えないとっすよね」

 食後の口直しに淹れた真っ赤なベリーのフルーツティーを飲んで、珊瑚が発言する。このお茶は酸味も強いので、テーブルの中央には蜂蜜を置いておいたのですが、珊瑚は激甘にして飲んでいるようです。蜂蜜の減り方がハンパない。

 「領域の状態がまんま幻獣の健康状態に反映されるようだと、土地が弱った時に実力行使に出られなくなっちまうな」

 「それじゃ本末転倒ですわね。でも僅かな領域の変化も敏感に感じ取れるようでないと、早期対処は難しいですし……」

 少しずつ飢え(?)が満たされてきたのか、レオニールも萌黄の発言にいちいち騒ぎ立てなくなり、おかげで萌黄も控えめながら議論に参加してくれるようになりました。ありがたいです。変態的うっとうしさから解放されて、実にありがたい。

 「ひたすらに愛くるしい外見にして、弱った時には同情心を煽るなんていうのはどうだ?こう、三角の耳とか肉球とか」

 「翠、それ普通に猫ですから」

 まあ、あの種族の媚攻撃は人間種にも十分通用していますけど。猫ほど人間を下僕扱いすることに成功した生き物を僕は他に知りません。ある意味、十分頂点に立ってますよね、猫。

 「何かあればその原因となった人間種はコミュニティごと殲滅、それくらいの力は持たせたいですね」

 さりげなく物騒な発言をするのは、大抵が紅です。そして搦め手を提案するのは決まって珊瑚です。

 「別に最初から物理攻撃で制裁を与える必要はないんじゃないっすか?」

 「と言うと?」

 「直接数を減らす方法をやめるなら、もっと精神的に追いこむ研究をするべきだと思うんすよ」

 「具体的にはどんなことを考えているんだ?」

 ややいぶかしげに眉を顰めたレオニールが聞けば、珊瑚は右手の人差し指を唇に当てて可愛らしく小首を傾げた後に、実に無邪気に答えました。

 「今ぱっと思いついただけなんで、全然ひねれてないんすけど。半年ごとに領域内の査定を行って、その結果に応じて食事量が変わることにしたら、みんな食われたくなくて頑張るんじゃないっすかね。ついでに幻獣には査定前に思わせぶりに振舞ってもらって、人間の胃に穴とか開いて頭髪も切ないことになってくれると楽しいと思いまっす」

 「相変わらず性格悪いわねー……」

 「確かに頭髪は強力な抑止力だな。人質ならぬ髪質(かみじち)か」

 萌黄が至極常識的な感想を漏らしましたが、レオニールはおかしな部分に感銘を受けたようで、ひどく真面目な表情でしっかりと頷きました。何か切実なものを感じたのは僕だけでしょうか。薄毛の家系なんですかね?

 ちなみに、はっきりと『ハゲ』って言われるより、『薄毛』と言われる方が気を遣われている感じがして余計にいたたまれないと思うのも僕だけでしょうか。魔王種に薄毛の遺伝子はないので、あくまでも僕がそういう立場だったらと想像してみただけなんですが。

 「ちなみに、何で半年なんだ?」

 「胃に穴が開いたとして、塞がりきる前に次の査定が来たら楽しいかなと思ったんすけど。あ、胃に穴が開きやすくなるように、水源にピロリ菌を仕込んでおくのもいいっすね」

 しかし珊瑚の発想は本当にえげつないですね。ただ人類最小の敵とも言える菌類は、使いようによっては非常に効果的ですが、これも完全に制御下に置くのは難しいんですよねー。

 「確かにピロリ菌で直接被害を被るのは人間種くらいですけどね。でもとりあえず菌の話は置いておいて、基本的には魔王種並みの攻撃力と、人間と対等以上にコミュニケーションを取れる知力をメインに考えるということで良いですか?」 

 そう言って僕が議論の軌道修正に努めようとした時、実に物騒な情報がレオニールから飛び出しました。

 「ああ、そう言えばマテアスでは研究者たちが集団詠唱による魔法増幅術式を開発しているな。魔力の弱い者でも練り合わせれば相当な戦力になるらしいから、将来的にはそういう戦術も実用化されることを織り込んでおいた方が良いぞ」

 うわ。出ましたよ、人間種の突然開眼。あ、これは僕が勝手にそう呼んでいるだけなのですが、人間種はある発見をきっかけに飛躍的に技術や文明を進化させますからね。こういうののでかいのが来ると、その後しばらくは対応がとんでもなく大変なことになるんです。

 「お前さー、そんなこと俺たちに暴露っちゃっていいのか?」

 翠の口調はやや呆れ気味ですが、僕もそう思います。

 「お前たちの話を聞く限りでは、この世界を大切にしないと、オレたちの子孫はいずれ生きていけなくなるんだろう?だったら間に合ううちに何とかしようと、できることは何だってやろうと考えるのは当たり前じゃないか」

 「……これが人間種の順応力ってやつですわね」

 萌黄の呟きにみんなが頷きましたが、本当にそうなんですよね。まあ、レオニールが特に割り切りの早いメンタルマッチョな個体であることは否めないとも思いますが。

 「しかしそうなると、私たちが求める幻獣の素体は確実に『竜』になるでしょうね」

 「確かに、竜以上に魔法干渉力を持つ種族はいないだろうな」

 「ということは……幻獣開発課が荒れますわね」

 いささかげんなりした萌黄の言葉で思い出しましたが、そうでした。あそこの部署には、未来予測課とはまた別の意味で扱いの難しい人たちがいるのでした。明日にでも顔を出す予定でしたが、先延ばし――しても意味ないですね……。

 なんか、薄毛遺伝子なんてなくても立派に薄毛になれそうな気がしてきました。もしなったら、協会に労災申請できますかね?

お読み下さってありがとうございます。

締め切り様を無事倒したものの、お仕事用の文体が染みついてうまく元に戻せないのと睡眠不足で変にテンション上がっているのとで、いつも以上に日本語が微妙かもしれません。本当に申し訳なく(汗)

暇つぶし程度になれれば幸いです。

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