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お勉強

 「そもそも今回の件は出足から狂いっぱなしだった。もう好きにやってみるが良い」

 それが通信鏡の向こうで深い深いため息を漏らしたダーヴァラ様のご判断でした。凄い肺活量。ちょっと羨ましいかもしれません。

 でもって、なんか恐ろしい勢いで匙を投げられた気がします。世界スプーン投げ選手権とかあったら、間違いなく歴史に残る記録と言われるんじゃないかっていうレベルの匙投げ。

 というわけで、元勇者のレオニールまでもが僕の離れに転がり込んでくることとなりました。客室の数が足りないので、書斎の寝椅子で寝起きしてもらわなければですが、そこは我慢してもらうしかないですね。

 しかし長く魔王をやってきた僕でさえも、人間種と寝食を共にするレベルで関わるのは初めてのことです。しかも世界管理の裏事情を知る人間というのは、リグヴァルド様がどこぞでペラペラと喋っていない限り、この世界ではレオニールが初めてなのではないかと思います。

 ですが変態である点を除けば、ごく一般的な(多分)人間である彼の視点は、僕の想像を遥かに上回る貴重なリソースでした。


 「オレたち人間が世界バランスを崩しているというのは、具体的にはどういうことを指しているんだ?」

 「うーん、そうですね……たくさんありますが、例えばここ」

 今僕と紅はダイニングテーブルにクリスティルダの地図を広げて、レオニールに基礎知識を与えているところです。まだお昼前ですから飲み物はコーヒーで、お茶受けにはココナッツチップを混ぜ込んだ軽い食感のビスケットを選びました。

 他の三人には、主にはレオニールの変態性を刺激しないように、本館の畑の手入れと近くの町での買い出しを頼んであります。

 「ヤスラという地域ですが、ここについて何か知っていますか?」

 「暑い国で作物が育ちにくいから餓死者が多いんだったかな。子供の健康状態が特に悪いと聞いた気がする」

 「では、その状況を改善するためにヤスラが始めた取り組みについては?」

 「北や西の国々を見習って家畜を放牧して、耕作地も増やしたそうだな。人びとの飢えが満たされるのは良いことだと思うが」

 マテアスの貴族階級に属するらしいレオニールの知識は、人間としては十分なものです。が、人の一生よりも長いスパンで、しかも人間種に肩入れしない中立的な視点で考えられないと、世界管理は務まりません。

 「その結果、増やされた家畜が土地の草を根こそぎ食べつくし、根を張ってくれる草を持たない地面の乾燥――砂漠化が進んでいます。土が簡単に風に舞ってしまうので、今度はいくら種を撒いても植物が育ちません」

 「結局人間種は自分で自分の首を絞めているのですよ」

 溜息と共に、沈痛な面持ちの紅が口を開きました。彼は厳しいようでいて、実はかなり感傷的な精神を持っていると僕は思っています。もしくは根が感傷的だからこそ、外側にきつい鎧を纏っているのかもしれません。

 「だが人間の数を減らしたいなら、それはむしろ好都合なんじゃないのか?」

 「人間が勝手に自滅する分には問題ありませんが、無関係な動植物も巻き添えにされます。そこがこの仕事の難しいところなのです」

 「なるほど……。そういう自然側の事情が人間にも分かれば良いんだがな。こう、大自然からのSOS的な。そうすれば人間側だって他のやり様を考えると思うんだが」

 いや、世界も無言のアピールはしてるんですけどね、旱魃とか旱魃とか洪水とか旱魃とか。

 「以前別の世界で試験的に導入された精霊システムがそんな感じではありませんでしたっけ?」

 ふと思い出して紅に聞いてみれば、彼も丁度同じことを考えていたようです。

 精霊システムとは、自然界の状態を人間に伝達するために開発された人型のインターフェースですが、こちらも色々とあって結局はお蔵入りしたのでした。

 「ええ、そうでした。でも人間種は精霊のアドバイスが発展の邪魔だと言って、結局精霊を殺してしまったんですよね」

 「何たる非道……!!」

 紅が言い終わるか終らないかのタイミングで、レオニールが声を震わせます。うん、正義感はめちゃくちゃ強いんですよ、彼は。だからこそ合法的に幼女を愛する手段を探していて、萌黄を見つけた喜びも一入だったんでしょうけど。でもこの場合、正義感の方向性が何か間違っている気もしないでもない……?

 「この世界の人間も同じことをするとは考えたくはないが……その精霊をもっと強くして、簡単に殺されないようにするのではいかんのか?あとは人間側でも教皇庁や各国に働きかけて、意識から変えて行いくとか」

 「あー、当時は魔王システムとの併用を前提に考えていたので、戦闘能力は持たせていなかったんですよね」

 でもそうなると、魔王システムは廃止になるわけですし、武装した精霊っていうのもアリですよね。上位捕食者の導入だって認められているわけですし……。

 「蒼?どうしました?」

 過去の事例やデータから分析と予測していたせいで、急に押し黙ってしまった僕を紅が怪訝そうに伺います。

 「いや、うん。今件の導入予定の上位捕食者、あれに精霊的なインターフェースとしての役割を持たせたらどうかと考えていたんです」

 「ああ、確かに……」

 「それぞれに領域を持たせて、守護者としての役割を振ったら意外と行けると思いませんか?もちろん寿命や戦闘能力、個体数などは慎重にバランスを考えないといけませんが」

 「じゃあ、今日皆で概要を練って、明日幻獣開発科にアポを取ってみましょうか」

 うん、午後は全員で幻獣デザインと行ってみますか。

ご訪問ありがとうございます。

締め切り様が倒せません……!(悲痛な叫び

というわけでまだ不定期が続きますが、読んで下さる方々のおかげで、おこがましくも頑張ろうと思えます。

本当に感謝です;;

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