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デュアルリバース 転生. (Dual Rebirth)   作者: 善悪 亮 (Ryo Zenaku)
「春日血統の影」ブロック5
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「薄闇の舞踏」第94話 ブロック5


16年前、バレロストラ国。


バレロストラ国の奥深くに佇む公爵家の領主館。そのメインサロンの空気は、まるで鉛のように重く立ち込めていた。それは童話に出てくるような華やかで賑やかな繁栄ではなく、暖炉の煤で黒ずんだマホガニーの木壁と、湿気と数世紀にわたる密閉された時間の匂いを放つ深紅のベルベットのカーテンが醸し出す、落ちぶれた優雅さであった。


重厚なオーク材のテーブルの上では、銀の燭台に立てられた獣脂のろうそくが気だるげに揺らめき、ほとんど手に付けられていないごちそうの山や、酸化した血のように濃厚で暗い赤ワインが紫色のリング状の染みを残す重厚なクリスタルグラスの上に、細長い影を落としていた。


そこにあっけらかんとした笑い声はなかった。漂っていたのは、計算された密談の囁き、喉の奥で押し殺された失笑、そして磁器に触れるカトラリーの金属音というギアが絶え間なく噛み合うような密度の高いノック音だった。執事たちは、呼吸を苦しくさせるパリッと糊の効いた襟と黒い給仕服を身にまとい、無言の亡霊のように部屋の隅々に沿って動いていた。壁にへばりつくように視線を低く下げ、冷めきったキジの残骸や萎びた果物の載った銀のトレイを運んでいる。


小さなガーゴイルの彫刻が酒を見張るように刻まれたサイドバーでは、ソムリエが乾いたコルクの音を立てて新たなボトルを開けていた。液体がグラスの底へと虚ろで、どこか陰鬱な音を立てて注がれる中、バレロストラの貴族たち――アヘンと近親相姦によってやつれた顔の男たち、細すぎる首に偽物の真珠のネックレスをきつく巻きつけた女たち――は、すでに墓場の匂いのする政治的同盟に興味があるフリをしていた。


天井を見上げる者は誰もいなかった。バレロストラの夜が庭園を呑み込んでいく屋外に目を向ける者もいなかった。サロンはそれ自体が閉じられた孤島であり、時間が進むことなく、ただゆっくりと腐敗していくだけの砂時計であった。


大人の悪循環や空疎な乾杯から離れたサロンの最も離れた隅に、十二、三歳ほどの二人の少女が立っていた。彼女たちは双子のようであり、将来のアカリ(Akari)の瞳と顔立ちの骨格を驚くほどの正確さで受け継ぐことになる、細く物憂げな面影を共有していた。特にショートヘアの少女の顔立ちには、その面影がより顕著に表れていた。二人は珍しいピンク色の髪を共有していた。一人は肩の上にまっすぐ垂れるロングヘア、もう一人は幼い優雅さで顔を縁取るショートヘアだった。彼女たちの装いは色合いこそ微妙に対照的だったが、仕立ては全く同じであり、ロングヘアの少女は鮮やかな yellow(黄色)のドレス、ショートヘアの少女は深みのある blue(青色)のドレスを纏っていた。


ショートヘアの少女はため息を重く吐き出し、腕を組みながら行き交うゲストたちを不快そうに眺めた。


「――はぁぁ、こんな官僚的な集まり、なんて退屈なの……お家にいたかったわ」


彼女の妹にしか聞こえないほどの囁き声で不平を漏らした。


ロングヘアの少女は諦めたような視線を返し、黄色のドレスの折り目を整えた。


「――仕方がないでしょう。お父様とお母様の言うことに従わなきゃいけないのは、分かってるでしょ」


「――そうだけど、こんなのすっごく煩わしいじゃない……」


ショートヘアの少女は不満そうに唇を尖らせて言い返した。


彼女が言葉を最後まで言い切る前に、丁寧で細やかな親切さに満ちた男の子の声がサロンのくすんだ喧騒を潜り抜け、絶妙なタイミングで彼女たちの会話を遮った。


「――失礼。君が春日家の未来の当主様でお間違いないかな?」


二人の少女は一斉に振り返った。目の前には、完璧に整えられた短い金髪を持ち、高貴な身分を示す隙のない礼装を身に纏った少年が立っていた。年齢は同じく十二、三歳ほどで、整った細やかで魅力的な顔立ちをしていた――もちろん、リョウ(Ryō)を特徴付けるような謎めいた圧倒的なオーラは皆無であったが。


少年は白い手袋をはめた手をピンクのロングヘアの少女へと差し出し、礼儀正しく微笑んだ。


少女は突然の注目と驚きで頬をかすかに赤らめ、まばたきをしてから不器用に答えた。


「――えっ……? ええ……はい、私がそうです」


「――お目にかかれて光栄です。僕はジュリアン・ヴァンス(Julián Vance)と申します」


金髪の少年は、退廃的なバレロストラ公爵領のそれよりもはるかに古く厳格な帝国宮廷に相応しいような、ミリ単位の正確さと折り目正しさで深々と一礼した。


ピンクのロングヘアの少女は、彼の苗字の重みと人間離れした所作の優雅さを幼い頭でゆっくりと反芻しながら、驚きで目を丸くして彼をじっと見つめた。彼女の家系が要求する気品を保とうと、消え入りそうな声で答えた。


カスガ・サユリ:「――私は春日サユリ(Kasuga Sayuri)……そしてこちらは姉の春日シオリ(Kasuga Shiori)です」


ジュリアン・ヴァンス:「――お二人にお会いできて光栄です。ねえ、春日サユリ……僕と一曲踊っていただけますか?」


少年は優しさと絶対的な不可避性を併せ持った所作で、手袋をはめた手を再び差し出し、尋ねた。


サユリは胃のあたりに塊を感じながら彼を見つめていた。踊りたくはなかった。見知らぬ視線と計算深い眼差しが飛び交うサロンの中央に立ちたくなどなかった。ただ部屋の隅に縮こまり、この息苦しい空気から消え去りたいと願っていた。しかし、彼女は春日家の未来の当主だった。彼女の立場は幼い我儘を許さなかった。断ることは貴族社会の面前で一族の名を汚す許されざる不礼であり、この約束から逃れられるような安易な言い訳を思いつく悪知恵も持ち合わせていなかった。


指の震えを抑え込み、唾を飲み込むと、自らの世界が要求する偽りの体面を保つために最低限必要な言葉を無理やり絞り出した。


カスガ・サユリ:「――よろこんで」


サユリはジュリアンの手を取り、使い古された大理石のタイルに歪んだ影を落とすシャンデリアが吊り下がった、ダンスフロアの中央へと導かれていった。部屋の隅から、春日シオリは目を凝らして二人を呆然と見つめていた。シオリは妹が貴族としての純粋な礼儀から承諾せざるを得なかったことを完璧に理解していたが、それでも冷たく説明のつかない痛みが胸を駆け抜けた。彼女の幼い心の奥底で、奇妙で甘酸っぱい感情が渦巻いていた。たとえ腐りきった世界であっても、世界の重心が常にサユリへと傾いていくかのような自尊心の傷――劣等感の兆しだったろうか。彼女は息を殺しながら、力強く腕を組み、下唇を噛みしめることしかできなかった。


フロアの中央で、音楽の didn’t が変わり始めた。それは北方の舞踏会で見られるような硬質で予測可能なワルツではなく、より旋律的で、異国的であり、それら伝統的な社交界では禁忌とされるようなリズムだった。遠い異国の熱気を思い起こさせる濃厚でしなやかな旋律が、小さな手鼓の乾いた響きと木管フルートの物憂げな嘆きによって刻まれていた。


ジュリアンは計算された一歩を踏み出し、サユリの腰を力強く包み込むと、彼女の年齢には不釣り合いな自然さで自らの身体へと引き寄せた。サユリは距離の近さに小さく身をすくませ、相手の冷たいワックスと男らしい香水の香りを感じ取ったが、少年の腕は狂いのない正確さで彼女を支えた。


最初の小節が拍子を刻んだ。スローな横へのステップ、大理石の上を靴が滑る繊細な動き、そして呼吸が同調するかのような緊張感に満ちた間。ジュリアンは催眠術のような巧みさで少女をリードし、濃密で退廃的なバチャータの歩調で時間を刻んでいった。彼らの身体の動きの一つひとつに、早熟な親密さが宿っていた。彼が彼女を揺らし、身体を密着させて引き寄せる時、太鼓のリズムは薄暗いサロンの中で加速する鼓動のように打ち鳴らされた。腰とステップが連続した揺らめきの中で重なり合い、密着したステップ、滑らかな回転、そして宙に浮いた視線が交差する舞踏は、惹かれ合いと差し迫った危険の振り付けへと変わっていった。


二人の周囲で、バレロストラの貴族たちの喧騒がゆっくりと消え去り始めた。ワイングラスが唇へと向かう途中で止まる。数十年におよぶ単調さに顔をやつし、退屈しきっていた貴族たちが、一斉にフロアの中央へと顔を向けた。十二、三歳の子供二人から、これほどの優雅さが繰り出されるとは誰も予想していなかった。二人の動き、ジュリアンが彼女を回転させてから寸分の狂いもなく再び胸へと抱き止める所作、そして黄色のドレスを纏ったサユリの顔に浮かぶうっとりとした表情と戸惑いが、目撃することすらどこか痛々しいほどの、奇妙な美しさの絵画を作り出していた。


フルートの音色が長く持続するトレモロの中で薄れていき、小さな手鼓が最後の乾いたエレガントな一打で締めくくられた。ジュリアンは最後のポーズでサユリを宙に固定し、彼女の背中は繊細にしなり、彼の黄金の視線が彼女の青い瞳の奥深くへと刺さっていた。


一瞬、サロン全体が息をのんだように思えた。そして、冷ややかな貴族の無関心というプロトコルを打ち破り、観客の間から拍手が沸き起こり始めた。最初は承認の囁きであり、やがてマホガニーの壁に響く乾いた手拍子となり、最終的には満場一致の称賛となった。彼らを見守っていたすべての貴族たちは、これほど幼い年齢でこれほど魅力的に踊る二人に対し、嫉妬と魅惑が入り混じった思いで拍手を送らずにはいられなかった。


ジュリアンはサユリの身体を優しく起こし、目立たないほどの僅かな笑みを浮かべた。一方、少女は恥ずかしさで頬を真っ赤に染め、喉の奥で鼓動が激しく打ち鳴らされる中、あまりにも多くの視線の重みに耐えかねて立つのがやっとだった。


しかし、サロンの調和と拍手は、召使いたちすら足を踏み入れるのをためらうような重々しいオーク材のテーブルの向こう側、暗い一角で打ち砕かれた。暗がりの中から、シオリと同じ十三歳ほどの少女――眩い黄金の髪と、鋭く飢えた怒りを撒き散らす同色の瞳を持つ少女――が、フロアの中央へと憎悪に満ちた視線を突き刺していた。


トミコ・ヒノ:「――あの春日の女……生意気な牝犬が……!」


歯を食いしばりながら低く呟き、掌に爪が食い込むほど強く拳を握りしめた。


日野家(Hino)と春日家の歴史的な対立は、バレロストラ国における権力闘争と傷つけられたプライドに根ざし、遥か昔から続いていた。しかし、その時トミコ(Tomiko)がサユリに対して抱いた盲目的な憎悪は、単なる政治から生まれたものではなかった。嫉妬が彼女の黄金の瞳から何キロも先まで溢れ出し、彼女の内臓を焼き尽くしていた。彼女は毒を込めた声で独りごちた。


トミコ・ヒノ:「――ジュリアンは私のものになるはずだった……私と一緒に踊るはずだったのに。どこから湧いて出たのよ、あの忌々しい女は……!」


彼女はサユリを軽蔑の目で見つめ続け、少女の一歩一歩の過ちが、社交界全体の面前で彼女を躓かせることを願ってやまなかった。


その間、フロアの中央では音楽が完全に止まっていた。ジュリアン・ヴァンスは完璧な佇まいを保ち、残酷なまでに洗練された礼儀正しさでパートナーを間近で見つめた。


ジュリアン・ヴァンス:「――僕の誘いに応じていただき、誠にありがとうございました、ミルディ。楽しんでいただけたなら幸いです」


サユリはダンスの熱気と他人の視線の重みで頬を強く赤らめ、声の震えを抑えるのがやっとだった。彼の深い青い瞳をじっと見つめ返し、不器用に答えた。


カスガ・サユリ:「――は、はい……とっても楽しかったです」


胸の中で鼓動が破裂しそうなほど打ち鳴らされ、その輪の圧力から逃れ出したいと心から願いながら、サユリは軽く一礼すると、急いで身を翻し、姉が待つ部屋の隅へと歩み寄っていった。


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