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「報われる労苦と主からの褒賞」第89話 ブロック4

イッセイ:「深くお詫び申し上げます、ロード・ジュリアン。リョウ(Ryō)様の工房は――いえ、私どもの工房は、いかなる多額の金貨であっても品質を妥協することはいたしません。我がブランドの衣を纏いたいと望むのであれば、待たされる時間と注文のスケジュールには従ってもらうことになります。……まあ、見方を変えれば、それこそが真の独占の証明というものですがね。男爵夫人はすでに女性用の装いを一着買われましたが、製作されるのは全土でわずか5着のみであり、彼女のためのものはそのうちの1着に過ぎません。そして男性用のものは世界で10着限定です。もしお待ちいただけるのであれば、貴方やご友人たちも手にすることができるでしょう」


イッセイの返答に見せたその堂々たる気概は、仕立て屋自身をも驚かせた。青血の貴族たちの前で自分になどあるはずもなかった勇気が、オロbasの静かな存在感によって心の底から湧き上がってくるのを感じていた。


ロード・ジュリアン:「ちっ、残念だな……本当に今週中に一着欲しかったんだが。だが、その世界に10着限定のシロモノを手に入れられると思えば、確かに魅力的ではあるな。仕方ない、待つとしよう」


そこへ割って入ってきたのは、コンデ・アルブレヒト伯爵だった。やつれた外見と綺麗に先が尖った白い髭、そして白鳥の騎士団の儀式用チュニックを纏った老齢の男である。アルブレヒトは州内で最も影響力のあるメセナ(芸術保護者)として知られ、その一言であらゆる職人のキャリアを帝国で栄達させることも失墜させることもできる権力者だった。


コンデ・アルブレヒト:「そこまでだ、せっかちな若造どもよ。真に審美眼を持つ男たちの話を聞くがいい。ミヤケ殿、私はあの少女のドレスのコルセットの縫い目をじっくりと観察させてもらった。金糸の対称性には目に見える結び目が一つもなく、スカートの非対称なカッティングは、私たちがここ何年も用いてきた古典的な仕立ての法則を完全に打ち破っている。磁気式の測定器具でも使っているのか、それとも何らかの魔術的な呪文でも縫い込んでいるのかね?」


イッセイ:「魔術の類ではありません、閣下。これはパターンメイキングに応じた幾何学であり、高精度な紙パターンの使用、そして布地の繊維に対して四十五度の角度で切り出す裁断法によるものです。完全なる数学的技術にございます」


コンデ・アルブレヒト:「魅惑的だ……まったくもって魅惑的だな。機能の革命だ。教えてくれたまえ、もし私がこのヴィレリアの地に、賃貸料、王国の許可証、そして身辺警護の全費用を私が負担する形で、あなた方の名前を冠した大がかりなブティックのオープンに投資したいと言い出したら、貴殿のブランドはいったいどれほどの利益の分け前を要求するのかね?」


イッセイ:「私どものブランドは、フランチャイズの販売や外部からの投資家・パートナーの受け入れは一切行いません、アルブレヒト伯爵。デザインが改竄されるのを防ぐため、生産と流通の全権は私たちが完全に掌握しています。もし製品をお求めになりたいのであれば、今夜登録された貴族の邸宅へと順次発送される公式カタログを通じた、直接の顧客としてのお取引のみとなります」


冷徹で、構造化されており、一切の妥協を許さないイッセイの回答に、群衆の間から畏敬の念を含んだざわめきが広がり始めた。職人や商人がコインを乞うようにひざまずく光景に慣れきった貴族たちにとって、ミヤケのブランドが放つ揺るぎない独占的な姿勢は、彼らの服を買いたいという強迫的な欲望を何倍にも膨れ上がらせるものだった。服はもはや単なる美しい布きれではなく、限られた者、無限の金と忍耐を持つ者だけが触れられる究極のステータスシンボルへと変貌を遂げていたのだ。


窓ガラスを雨が打ち付け、深夜の静けさの中にオーケストラのバイオリンの旋律が消えかかっていく中、イッセイは布地、配送、支払い方法、そして将来のカタログに関する何十もの質問に一人ひとり丁寧に応じ続け、まさにその夜の間に、リョウ(Ryō)が影から設計した経済帝国を揺るぎないものへと築き上げたのだった。


そうして数時間が過ぎ、イッセイはようやく解放された。壁際に置いた椅子へとゆっくり歩み寄ると、そこにどっかりと腰掛け、天井を見上げながら深く大きな息を吐き出す。


イッセイ:「はぁぁぁ……もうクタクタだ……」


妹のレンが、柔らかな足取りと理解を示す笑顔を浮かべながら近づいてきた。


レン:「すっかりボロボロね。過酷な夜だったみたい。まあ、夜会自体はまだ終わっていないけれど……すでに完全にお休みになられているお方がいらっしゃるわよ」


イッセイが前方に視線を向けると、妹が腕の中に小さなKumiを抱きかかえているのが目に入った。少女はアドレナリンの消耗と激しい疲労の果てに、すっかり深い眠りに落ちていた。


イッセイ:「どうやら、今夜のスピードにはついていけなかったみたいだな……まあ、責められやしないか」


イッセイが腕を差し出すと、レンがその膝の上へと少女をそっと寝かせる。ぐっすり眠りこけているKumiを、イッセイは細心の注意を払いながら優しく支えた。ランウェイの重厚な深紅のドレスはすでに脱がされ、白のシンプルな基礎衣装、ストラップのサンダル、そしてつばの広い小さな帽子へと着替えさせられていた。膝の上ですやすやと眠る彼女を見つめながら、イッセイは耳元でそっと囁く。


イッセイ:「ありがとう、Kumi……すごく手伝ってくれたもんな」


その脳裏に、ドレスや衣装の製作に追われて徹夜を続けた日々が蘇ってきた。夜遅くまで自分のそばに残り、余った布きれを集め、根気よく縫い針を動かし、布花のディテールを整え、自分が疲労に打ち勝てるよう温かいお茶を淹れてくれた娘の姿が思い出される。彼女には心から感謝していた。今、この少女が楽しんでいる休息は、間違いなく彼女が勝ち取った当然の報酬だった。


その瞬間、完璧な足取りでオロbasが姿を現した。


オロbas:「お疲れ様でございました、イッセイ殿。実に素晴らしいお仕事でした。報告をすれば、リョウ(Ryō)様もさぞやお喜びになることでしょう。私からも心からの祝意を申し上げます。見事なデビューであり、そのご尽力には敬意を禁じ得ません」


オロbasはKumiを起こさないよう細心の注意を払いながら、控えめに、そして軽やかに拍手を送り始めた。感極まった様子で、イッセイはこう答えるのがやっとだった。


イッセイ:「ありがとうございます、オロbas殿……ですが、正直に申し上げて、リョウ(Ryō)様のあの革新的なビジョンがなければ、私どもがこのような成し遂げられるはずもありませんでした」


オロbas:「その通りです。ですが、あのスケッチの数々を現実の物質へと具現化できる者が、誰にでも務まるわけではありません。あなたのその手は素晴らしい。リョウ(Ryō)様ご自身も、その才能を高く評価していらっしゃるはずです」


育ってきた環境に染みついた平民としての謙虚さを胸に、イッセイはガックリと頭を垂れた。


イッセイ:「とんでもないことです……ですが、リョウ(Ryō)様がそのように思ってくださっていると知るだけで、誇らしい気持ちで胸がいっぱいです」


オロbasは、まるでやり残した仕事を思い出したかのように、小さく息をついた。


オロbas:「むっ……そうだ、イッセイ殿。これはあなたに」


オロbasは厚手の布地で作られた小さな袋を差し出した。それは金属同士が擦れ合う心地よい重みのある音を響かせる。


オロbas:「今月分の給金です」


イッセイは驚きながらその小袋を受け取り、紐を解いて中身を改めると、あまりの数字に両目を見開いた。


イッセイ:「こ、これは……金貨10枚ではありませんか、オロbas殿! 間違いです、私の取り決めでは給金は金貨3枚のはずですが……」


オロbasは完璧なまでの冷静さと誠実さをもって答えた。


オロbas:「間違いではありません。数日前に、リョウ(Ryō)様から伝言を受け取りました。あなたの新しい月給の額はこれ――金貨10枚です。もう3枚ではありません、これからは10枚です。存分にお納めください」


過分なまでの厚遇に圧倒され、イッセイは感謝の印としてオロbasに向かって深く頭を下げようとした。


イッセイ:「本当に……本当にありがとうございます……!」


オロbasは素早く手を伸ばし、彼がそれ以上頭を下げるのをしっかりと制止した。


オロbas:「私に頭を下げる必要はありません。あなたと同様に、私もまたリョウ(Ryō)様の僕(しもべ)にすぎない。頭を垂れるべき相手は彼であり、誓うべきは彼への絶対の忠誠です」


胸の内に言い知れぬ歓喜を溢れさせながら、イッセイは力強く答えた。


イッセイ:「私の忠誠はすでにリョウ(Ryō)様に捧げております。本当に……私の人生をこれほど変えてくださったのですから……夢にも思わなかった形でね」


オロbas:「忠誠を誓い、彼に仕えることを選んだあなたに祝福があらんことを。それから……もう一つ。こちらもリョウ(Ryō)様からの預かりものです」


オロbasは自身のチュニックの懐から、上品な金色に染められた、かなりの重みを感じさせる厚手の封書を取り出した。


イッセイ:「リョウ(Ryō)様からの……? まさか、私に……?」


イッセイが封の蝋を割り、中から幾重もの折られた紙片を取り出して読み始める。最初は技術的なスケッチ、複雑な裁断のパターン、そして将来デザインすべき新しい衣装の設計図だった。イッセイは思わずあきれたような、しかしどこか誇らしげな小さな溜息を漏らす。


イッセイ:「あー、なるほど……要するに、もっと働けってことですね」


オロbasは口の端をニヤリと歪めた。


オロbas:「最後までお読みなさい、イッセイ殿。しっかりと隅々までね」


イッセイが最後のページを広げると、そこには直筆のメッセージが記されていた。リョウ(Ryō)の整ったカリグラフィーで綴られたその言葉は、彼の心をこの上ない幸福感で満たしていく。


『素晴らしいデビュー、おめでとうございます、イッセイ殿。あなたがこれを読んでいる頃には、プレゼンテーションは大成功を収めていることでしょう。あなたの能力について、私は最初から微塵も疑っていませんでした。


その完璧な働きを讃え、あなたの両手の卓越した技量に深く敬意を表します。これほどまでに複雑なアイデアを物質的な形へと翻訳することは、この大陸のいかなる職人にとっても容易ではない偉業です。あなたに心からの敬意を。本当によくやってくれました。


それだけで言葉を尽くすつもりはありません。尽くされた労苦には必ず報いなければならない。ささやかながら、あなたの多大な努力に対する追加の報酬です。どうか、良い夜を。』


イッセイの胸が誇らしさで大きく膨れ上がった。すべての黒幕であるあの天才が、自分の価値をこれほどまでに認めてくれているという事実そのものが、いかなる貴族の賛辞よりも重く、価値のあるものに思えた。


オロbas:「ふふ、封筒の中にはまだ続きがありますよ、イッセイ殿」


イッセイ:「えっ?」


金色の封筒の重みに改めて気づき、イッセイが指を差し入れると、そこから追加の金貨10枚が入った小さな小包と、次のような極小のメモが転がり出た。『これもお前の努力への褒賞として受け取れ。』


先ほどの新しい月給である金貨10枚に、手紙に添えられていた追加の金貨10枚を合わせると、イッセイの手に渡ったのは合計20枚の金貨となる。最初に受け取っていた3枚の月給からすれば、実に6倍以上の収入を手にしたことになるのだ。


オロbas:「それから、もう一つ詳細があります。リョウ(Ryō)様は、街で最も高級な宿屋の宿泊費と、完全に費用が全額保証された一週間の遊覧旅行の旅程を手配されています。一週間、この街でゆっくりとお休みになられるといい。こちらがその施設の住所とプログラムのスケジュール表です。参加されるかどうかは、あなたの自由にご判断ください」


あまりのスケールの大きさに呆然としながら、イッセイはヴィレリア最高級の宿の案内が書かれた紙片に見入った。


イッセイ:「リョウ(Ryō)様が自らの懐から全額を出してくださるというのに、参加しないなんて選択肢があるわけないでしょう……! 本当に、どうお礼を申し上げていいのやら……」


オロbasは公式の通行証を手渡し、自身のケープを整えながら半歩だけ後ろに下がった。


オロbas:「本日の用件は以上です、イッセイ殿。発注のロジスティクスや今後の衣装の販売については、また明日協議しましょう。私にはまだ片付けねばならない仕事がありますのでね。どうか、良い夜をお過ごしください」


イッセイ:「わかりました、オロbas殿。明日またお会いしましょう。良い夜を」


時計の針はすでに夜の二時に差しかかろうとしていた。あれほど荒れ狂っていた大雨はすっかり上がり、石畳を濡らす心地よい微かな霧雨だけが残されている。オロbasは闇の中へと身を翻し、ヴィレリアの街路へと消えていった。その背中を見送りながら、イッセイは眠りこけた娘をその腕にしっかりと抱き締め、手の中の莫大な富の重みを感じつつ、顔いっぱいに満面の笑みを浮かべるのだった。


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