「栄光の夜と動き出す影」第88話 ブロック4
夜が進むにつれて、サロンは絶え間ないグラスの微かな共鳴音、貴族たちの密やかなざわめき、そして外から鳴りやまない雨の湿り気が混じり合う独特の空気に包まれていった。イッセイ・ミヤケは、生地の質感、仕立ての技法、そして注文の相場について質問を浴びせかけてくる貴族や大商人、宮廷の夫人たちの円陣に囲まれていた。あまりの圧倒的な注目に晒され、リョウ(Ryō)の計画の裏にあるロジスティクスを明かす権限も持たない仕立て屋は、ただぎこちない笑みを浮かべるだけで精一杯だった。慌ててワインを一口啜り、その貧しい出自が隠しきれない不格好な一礼でその場を凌ぐ。
時計の針が夜の十二時を指し示し、ヴィレリア大聖堂の鐘の音が遠くから響き渡った。司会者の女性が再びライトアップされた演壇に上がり、銀の小槌で演台を三度叩いて聴衆の注意を引くと、大広間の空気が一瞬にして張り詰める。
司会者:「皆様、どうかご静粛にお願いいたします! 今宵、最も待ち望まれた瞬間がやってまいりました。第5回ファッションナイトの栄えある総合優勝者の発表を行います。審査にあたっては、表現のインパクト、革新性、そしてこの場にお集まりの高貴な方々の間に巻き起こった圧倒的な熱量を厳正に評価いたしました。どうか、最高峰の栄誉にふさわしい敬意をもってその決定をお迎えください」
広間が深い静寂に包まれた。影響力のある貴族たちは期待の笑みを浮かべて息をのび、伝統派のデザイナーたちは自身の名の重みが自分を救ってくれると信じて背筋を伸ばす。女性司会者は金の封蝋が押された羊皮紙の封筒を破り、中の手紙を広げて、そのカリグラフィーで書かれた文字に目を走らせた。思わず笑みがこぼれた唇を開き、力強くクリアな声で宣言する。
司会者:「今宵の紛うことなき勝者は……イッセイ・ミヤケ殿です! 偉大なる勝利、本当におめでとうございます!」
サロンが爆発的な拍手と喝采の嵐に包まれた。すべての視線とグラスが一斉にイッセイへと向けられる。イッセイは一瞬完全に硬直し、胸に押し寄せる感動の中でその現実を処理していた。幸せに震える手でワイングラスを掲げ、その傍らでKumiと妹が狂喜乱舞して自分を抱きしめるのを感じる。
だが、会場の最も暗い隅の一つでは、まったく異なる光景が繰り広げられていた。数時間前、イッセイを平民と呼んで嘲笑っていたあの貴族の仕立て屋が、血が滲むほど固く拳を握りしめ、その顔を病的なまでの赤紫に染め上げていた。
ライバル仕立て屋:「クソが……あの名もない低俗な仕立て屋風情が、苗字すらない平民風情が……この俺に勝っただと? 王家すら担当してきたこの俺を出し抜きやがって……! くそっ……あいつの店を潰して、一筋の糸も残さず工房を焼き払ってやる」
敗北した男の顔に、ねじ曲がった醜悪な笑みが浮かぶ。盲目的な傲慢さと途方もない愚かしさに突き動かされ、彼はざわめき紛れに呟きながら、最悪の計画を頭の中で組み立てはじめた。
ライバル仕立て屋:「……いや、待てよ。むしろ、あいつの工房の『黒幕』を見つけ出してやるのも手だ。追い詰めて、そのデザイン画や設計図をすべて力ずくで奪い取ってから、そいつを殺せばいい。真のボスがいなくなれば、この滑稽な仕立て屋など何もできずに惨めな破産へまっしぐらだ。そうだ……それこそが完璧な計画だ」
男は偽りの称賛を込めて、顔を引きつらせながら空疎な拍手を打ち始めた。しかし、その無知ゆえに、彼は自らが今まさに自身の死刑執行書にサインをしたことに気づいていない。
その男のすぐ目の前、わずか一メートルの距離に、オロbasが立っていた。オロbasは完璧な姿勢を崩さず、凍りつくような冷静さで拍手を送りながら、その深紅の瞳でライバル仕立て屋の口から漏れた一言一句、すべての汚濁に満ちた悪意を逃さず捉えていた。周囲の祝祭ムードを壊さず、衛兵たちの注意も引かないよう、彼は瞬き一つせず、暴力を振るう素振りも見せない。ただ機械的に優雅に拍手を続けながら、聞いていないふりをして、耳にしたすべての詳細をその記憶の深くに刻み込んでいた。
劇場のアーチ状の窓を激しく打ち続ける雨音のなか、勝利の轟音に包まれたヴィレリアのメインサロンは、絹、高価な香水、そしてきらめく宝石の群れへと姿を変えていた。痺れるような指で細いワイングラスを握りしめたままのイッセイは、ライバルたちが先を争うより早く自分を取り囲もうとする貴族の波に突如として飲み込まれた。
真っ先に群衆をかき分けてやってきたのは、五十歳ほどの、たくましい体格とワインの飲みすぎで紅潮した顔をした一人の貴族だった。その盛り上がった二重あごは、古風な糊の利いた硬いレースの襟にどっしりと乗せられている。身につけているのは、銀糸でモグラの緑を模した刺繍が施された重厚なベルベットのジュポンで、どのボタンも今にもはち切れそうだった。その傍らには彼の妻、ローザ・ジェヌヴィエーヴが寄り添っている。彼女は米粉の白粉で異様に青白い肌と、高くて円錐形に結い上げられた髪に飾られたキジの羽毛が特徴の、傲慢な表情を浮かべた女だった。濃いカーマイン色の口紅がその冷ややかな容貌を引き立てている。
アデリオ・ジェヌヴィエーヴ:「ミヤケ殿! すばらしい、実に見事でした! 私も妻も、あの深紅のドレスの軽快なシルエットにはすっかり度肝を抜かれました。お教えいただきたい、あなたの主たる工房は一体どこにあるのですか? きっと首都の高台か、エフラテスの皇帝大通りにふさわしい店舗を構えておられるのでしょうね?」
イッセイは唾を飲み込み、自らの仕立て屋ジャケットの縫い目を銀の片眼鏡で検分する子爵夫人の、怪訝かつどこか見下すような視線を肌で感じた。
イッセイ:「わ、私どもは……ジェヌヴィエーヴ様。現在は新シーズンのあまりの殺人的な需要にお応えするため、拠点の再編成を行っている最中でして。当ブランドはエフラテスの国境付近に位置する生産拠点からの直接の特注システムを主軸としておりますが、いかなる地方への独占配送も承っております」
ジェヌヴィエーヴ:「国境付近だと? ……奇妙な話ですわね。これほどの才能であれば、首都の広場に立派な店を構えているものとばかり思っていました。まあ、品質さえ変わらなければ場所などどうでもいい。私が本当に知りたいのは、あなたのお供の背の高い男が纏っていたあの男性用装衣の価格です。来月、我が家の長男が宮殿でデビューを飾るものでね、どうしてもあのボルドーのウールで仕立てた衣装を着せたいのです。金額を言いなさい、出し惜しみは無用です」
子爵は自分のワインでむせ返り、夫人は羽飾りの下で目を見開いた。
ジェヌヴィエーヴ:「金糸の総刺繍もなければ輸入物のレースすらない一着に、三面半の金貨だと……!? それは一頭の純血の軍馬に匹敵する価格ではありませんか!」
イッセイ:「失礼ながら、閣下……お客様が買われているのは材料費そのものではなく、織機の技術と裁断の独占性そのものにございます。大陸全土を探しても、これに類するデザインは他には存在しません」
ジェヌヴィエーヴがさらに抗議の声を上げる前に、その場を荒々しく押し退けたのはバローネッサ・ヴァーニャ・フォン・シュタウフェン男爵夫人だった。二十八歳の若い未亡人である彼女は、その鋭い知性と奇抜なセンスで上流社会にその名を轟かせていた。ジェットブラックの髪をアシンメトリーなボブに切りそろえ、玳瑁の櫛で留め、真珠灰色のシルクのチュニックからスラリとした美しい体躯を覗かせている。その知的で計算高そうな緑の瞳は、イッセイをまるで宝の地図でも見るかのようにじっと観察していた。
男爵夫人ヴァーニャ:「どきなさい、ジェヌヴィエーヴ卿、あまりケチくさい顔をするものではありません。真の天才というものは布の量ではなく、その名声と独占に対して対価を払うものです。ミヤケさん、この古い頭の固い老人の言うことなど気にしなくていいわ。私は一着のドレスなど欲していません――秋のシーズンのために、あの深紅のコレクションの『全独占権』を買いたいのです」
イッセイ:「ぜ、全独占権……でございますか、男爵夫人?」
男爵夫人ヴァーニャ:「その通りよ。つまり、このヴィレリアやスクシアの他のどのいかなる貴族の婦人にも、同じパターンを一着たりとも卸さないということよ。大人の女性用のバージョンは、公式の夜会において私一人のものにするという特約の結ばれた契約書を要求します。予約の手続きはどのように進めればいいの、そして手付金はどれほど必要かしら?」
イッセイ:「ある公国領内におけるパターンの完全な独占を保証するためには、総生産額の五十パーセントの初期デポジットが必要となります。それはおよそ八百金貨にのぼりますが……それに加えて、当ブランドのデザインの統括者である私の主君、あるいはその代理人によって直接署名された契約が必須となります」
男爵夫人ヴァーニャは羽扇を動かす手を止め、片方の眉を跳ね上げた。その緑の瞳が鋭い興味で輝きを増す。
男爵夫人ヴァーニャ:「なんですって?……つまり、これらのドレスのデザインやアイデアは、あなた自身が考案したものではないというの?」
イッセイは首筋に冷や汗が伝うのを感じながらも、チームワークを重んじるべきだと自らに言い聞かせ、姿勢を正した。
イッセイ:「スケッチ、その革新的な幾何学、そしてすべての装いが内包するビジョンは、私の主のものでございます。彼はすべての創造の源であり、資本の提供者でもあります。しかしながら、物理的な実作、糸の選定、正確な布地の裁断と工房での縫製は、すべて私の全責任において行われております。彼はその創造の結晶を私の手に委ねてくださいました。なぜなら、そのヴィジョンを現実の形へと昇華させられるのは、この世界で私だけだからです」
男爵夫人ヴァーニャ:「神秘的な作者と、その信頼厚い主席仕立て屋……魅力的だわね。ぜひそのボスとやらに一目お目にかかりたいものだ。その男を私の前に連れてきなさい、その頭脳を一番乗りで囲い込みたいわ」
イッセイは引きつった笑いを漏らしながら、あわてて襟元を整え、その場を取り繕うための適切な言葉を探した。
イッセイ:「おや……それはあいにく、当面の間は不可能にございます、男爵夫人。私の主は現在、長期の出張に出ておりまして、次にどこへ向かうのか、いつ戻るのかすら私に告げておられません。それに彼は……極めて秘密主義な人物でしてね。表舞台に立つことを極度に嫌い、自らの作品にのみ語らせることを好むのです」
男爵夫人ヴァーニャは不快感を抱くどころか、かえって興味深そうに微笑んだ。貴族社会において、名声を拒絶する匿名のエキセントリックな天才という存在は、ありふれたどの商人よりも価値があり、何よりもそそられるものだったからだ。
男爵夫人ヴァーニャ:「孤高のアーティスト……気に入ったわ。いいでしょう、ミヤケ。その条件で契約を結びましょう。ただし、あなたのそのボスに伝えなさい――このヴィレリアの地で、ヴァーニャ男爵夫人が彼の最初の最大のパトロンになったのだとね」
白のキッドスキン製の手袋を微かに引き締めながら、男爵夫人は楽しげに笑い声を零した。
男爵夫人ヴァーニャ:「それで、教えてちょうだいミヤケ……あの背の高い若者が履いていた白い履物についてよ。あれは一体どんな素材でできているの? あんなに柔軟で、足取りに負担のないソールなど、これまで一度も見たことがないわ」
ヴァーニャが詳細を心にメモしていると、パステルカラーの膨らんだ古臭い服に身を包んだ三人の若い侯爵の若者グループが、イッセイを取り囲むように割り込んできた。そのリーダー格であるロード・ジュリアンは、豊かな金髪とふっくらとした頬、そして塩鉱山の経営で財を成した一族の富が生んだ傲慢な雰囲気を漂わせた若者だった。
ロード・ジュリアン:「おい、仕立て屋。俺たちは宮殿の契約や男爵夫人のパーティーなんぞには興味がないんだ。俺たち仲間が知りたいのは、あのダークなセーターの一着を仕上げるのに何日かかるかだ。今週末の狩猟トーナメントにどうしても間に合わせたいんだよ、あの野性的でいて洗練されたスタイルをどうしても着ていきたいのさ」
イッセイ:「ランウェイでお見せしたあの解剖学的なフィット感を持つ一着を縫い上げるには、私どもの専属の織り手たちによる少なくとも七日間の不眠不休の作業が必要にございます、若様。布地の構造を妥協しない限り、急かせるような仕事はできません」
ロード・ジュリアン:「四十八時間以内に納品してくれたら、倍の額を払おう。私の馬車には今すぐ三千金貨が積んであるんだ。不可能だなどとは言うな、誰にだって値段というものがあるだろうが、この平民が」
その瞬間、一メートルの距離を保って背中に腕を組み、天井の一点を凝視していたオロbasが、わずかにその頭を垂れた。彼がその巨体から落とした静かな影のプレッシャーにより、ロード・ジュリアンは思わず背筋に走った凍てつくような寒気から、知らず知らずのうちに半歩後ろへと後じさっていたのだった。
皆さんこんにちは、良い朝を迎えられていることを願っています!
さて、ご報告なのですが、今月分の期間が切れてしまい、第4ブロックの公開を最後までやり切ることができませんでした。ですが、それは完全に私の責任です。第4ブロック自体はすでに書き終えていたのですが、翻訳して公開するのが面倒になってサボってしまったのです。
でも、ここからは違います! これからの数日間は休むことなく一気に公開していきますよ。というのも、現在第5ブロックの執筆を進めており、現在は第105話を書いているところなんです。そのため、今月はほぼ丸々を使って、ここ日本での第4ブロックの公開を完了させ、さらに第5ブロックの公開も今月中に進めていくつもりです。
これからも休むことなく「月に1ブロック」のペースで続けていくつもりですので、この物語を楽しんでいただけていると嬉しいです。
それでは、言うべきことはこれだけです。皆さん、良い一日を! さようなら!




