「私のリュウのクローン」第3章 第10話(第2パート)
前方を注視したまま、リョウはいつもの冷静さで応じた。
リョウ:「リュウは俺の人格を有している。俺の完璧な投影だからな、失敗することはないはずだ。その場で俺が下すであろう決断と全く同じ選択をする。それに、彼が潜入を担当してくれているおかげで、俺は収集したすべての情報を紙に書き起こしてギルドへ送ることができる。だが、真の計画は町長を救出することだ。そうして初めて、ギルドに真の意味で大きな貸しを作ることができる。潜入をリュウに任せておけば、俺はその部分を心配する必要がなくなる」
パンドラは未解決の懸念点を分析するように、わずかに唇をすぼめた。
パンドラ:「ですが……真の問題は……」
リョウは彼女の言葉を遮り、即座にその先を続けた。
リョウ:「ああ……真の問題は、彼が自身を上回る敵と遭遇した場合だ。今の彼は俺の現在の力の半分しか持っていない。そして今の俺の力が決して強大とは言えない以上、強者との戦闘においては明確な力の不利が生じる」
パンドラは路地の石畳へと視線を落とし、反論する前に別の角度から状況を評価した。
パンドラ:「……ですが、別の見方をすれば『しかしながら』という余地がございますわね、リョウ様?」
パンドラの見抜く力に、リョウは薄い笑みを浮かべた。
リョウ:「その通りだ、パンドラ。今の彼が俺の半分の力しか持たず、それが非常に微々たるものであったとしても、彼の肉体は人間のものではない。だから重傷を負っても何事もなかったかのように再生できる。血の肉体のおかげで、そのわずかな力を俺以上に上手く扱うことができるんだ。筋力や速度は俺と同等、あるいはそれ以上だ。彼の唯一の弱点は心臓……敗北する確率は50%だが、勝利する確率も50%ある。すべてはその場で彼が下す決断次第だ。そして仮に彼が負けたとしても、それは俺自身が負けたということだ。俺も全く同じ決断を下しただろうからな」
会話の途中で軽くあくびを噛み殺すと、リョウは一層リラックスしたトーンで続けた。
リョウ:「だから俺たちは自分たちの計画を進め、時間を無駄にせず次の行動に移るべきだ。あとのことは彼に任せる」
パンドラはリョウの決定を受け入れて沈黙し、二人は街の奥深くへと姿を消していった。
◆
場所は変わり、孤児院の浴室。濃密で温かな水蒸気が室内を満たしていた。絶え間なく降り注ぐシャワーの下で、リュウは全裸のまま佇んでいた。足元へと虚ろな視線を向け、微動だにせず、滴が皮膚を伝うのに任せている。タイルの上に激しく打ちつける水の音だけが静寂を破っていた。絶対的な静寂の中で長い時間を過ごしたのち、彼は重いため息を漏らした。
リュウ:「……ハァァァ……」
蛇口をひねり、水の流れを止めた。タオル掛けへと歩み寄り、白いタオルを一枚手に取ると、時間をかけて丁寧に体を拭き、腰の周りに固く巻き付けた。浴室を出て、廊下を渡り自分の部屋へと一直線に向かう。彼には本物のリョウの記憶が完璧に保持されているため、どの道を進むべきか正確に熟知していた。
部屋に到着すると扉を開け、中へ足を踏み入れて背後でドアを閉めた。流れるような動作で腰のタオルを外し、床へと落とす。薄暗い部屋の中央で、彼は完全な全裸となった。
その瞬間、部屋の暗い隅から、甘く悪戯っぽい声が響いた。
リラ:「あらあら……ただの少年にしては、神様もずいぶん情け深いものを与えてくださったのね。実を言うと、下の方はすっかり一人前の大人の男並みの立派な風格とお姿をお持ちのようだわ」
リュウは扉の枠の近く、左側へと顔を向けた。そこにリラがいた。彼女も彼と同様に全裸で現れ、羞恥心も遠慮もなく、その身体のあらゆる曲線を生々しく少年の視界に晒していた。そのような光景を前に、リュウの頬には微かな裏切りの朱が差した。
照れ隠しのように背を向けると、リュウはベッドへと歩み寄り、縁に腰を下ろして正面を見つめた。正面には全身を映す姿見が置かれている。鏡のガラスにはリュウ自身の姿しか映っておらず、部屋に入ってくるごく普通の人間には誰もいないように見えるはずだった。しかし、同じ本質に繋がれた血の創造物であるリュウには、リラのシルエットが完璧な鮮明さで反射して見えていた。
リラはベッドへと近づき、背後からマットレスの上を這うように移動してきた。野性的なしなやかさで動き、そのままリュウの背中へと柔らかく倒れ込む。彼の首の周りに腕を回し、温かな抱擁で閉じ込めると、その艶っぽい声が耳元に密着して響いた。
リラ:「誰が想像したかしらね……私の主様が、あの服の下にこれほど男らしい体を隠していたなんて……」
鏡越しに、彼は自分の上に覆いかぶさる彼女の姿を捉えていた。露出した肉体、完璧に形作られた大人の女性の豊かな胸。
リュウ:「お前がいつかこんなことを仕掛けてくるだろうとは思っていたが、これほど早いとは思わなかったな。プライバシーというものをまるで尊重しない、本当にとんでもない無恥な奴だ」
リラはただ笑みを深め、少年の首の周りに回した腕をさらに固く締めた。リュウの肩の上に顎を乗せ、露わになった胸の確かな弾力をクローン少年の首筋へと直接押し付ける。リラの白い肌は部屋の影と鮮烈な対比をなし、鏡の中のリュウの顔は真剣そのものでありながらも、頬の赤みが状況による不可避の羞恥を物語っていた。
ゆっくりと、リラは唇をリュウの耳たぶへと滑らせ、危険なほど官能的で囁くようなトーンで呟いた。
リラ:「こんなに美味しそうな男の子を前にして、一体誰が抗えるっていうの? 教えて、リョウ……私って、あなたにとって魅力的じゃないかしら?」
姿見を通した構図は、息が詰まるほど艶やかで官能的だった。絡み合う二人の姿、リラの挑発的な視線と裸体、そしてリュウの剥き出しの肩に凝縮された緊張が鏡に反射していた。
そして、リラは手を滑らせ始めた。左手はリュウの胸の上に置かれ、その力強い脈拍を感じ取り、右手は静かに、そして緩やかに下降を始めた。引き締まった腹部の起伏を撫で下ろし、温かな皮膚を伝って、彼の男性の象徴へと一直線に向かっていく。掌は、少年の肉体を完全に支配し味わい尽くすまで、ほんの数センチの距離に迫っていた。
しかし、その手が目的に達する前に、リュウは瞳を閉じた。素早く確実な動作で、彼は指先でリラの手首を掴み、その進行を遮った。
リュウ:「お前が美しいということは否定しない。その黒髪は俺の髪と容易に溶け合うし、瞳も目を見張るほどだ。……だが、俺とお前がこういう関係を結ぶことはできない。お前は精神体であり、俺は物理的な肉体を持っている。多少触れる程度なら構わんが、それ以上はダメだ。俺にこんな形で快楽を感じさせる域までは許さない。それに……俺は自分の体を誰彼構わず安売りするつもりはないんだ。俺たちはパートナーだ。俺はお前に恋をしているわけじゃない、リラ。もし惚れていたなら、お前の望む通りどこでも触らせてやったかもしれないが……生憎とそうじゃない。俺の心を射止めるには、お前はまだ遥か遠い場所にいる」
手首を強く掴まれ、冷たくも決絶とした言葉を聞かされたリラは、自身の企みの敗北を受け入れた。静かに手を引くと、彼の背中から離れ、ベッドの脇に腰を下ろした。
リラ:「相変わらず氷みたいに冷たいのね……でも、挑戦してみずにはいられなかったわ。あなたが見せるその照れた顔を見るのが大好きなの」
リュウは立ち上がり、接触から身を解き放つと、長いため息を漏らした。
リュウ:「俺に羞恥を感じさせることができるのは、世界でお前だけだ。一体どうやってそんな芸当ができるのか、不思議でならない……」
リラはベッドに腰掛けたまま全裸で、両腕をシートの上に伸ばして体を後ろに傾け、厚かましくも足を組んだ。
リラ:「私には私なりの秘策があるのよ」
リュウは一瞬瞳を閉じ、自身の感情を完全にコントロール下に連れ戻した。
リュウ:「どうでもいい。服を着る」
それ以上の会話を断ち切り、リュウは手際よく衣服に袖を通し始めた。ゆったりとしたパンツと、彼の体躯にフィットする軽やかな生地の白いTシャツ。完全に準備が整うと、彼はベッドに座る彼女の姿を横目で見やった。
リュウ:「じゃあな。また後で話そう」
彼部屋を出て、ドアをひと引きで閉めた。
部屋の中に残されたリラは、全裸のまま、閉じられた木製のドアをじっと見つめていた。静まり返った部屋の中で、彼女は神秘的な笑みを浮かべ、自分自身に囁いた。
リラ:「私には私なりの『手』があるのよ……」
部屋は再び深く静まり返り、先ほどまでの出来事の唯一の痕跡として、リュウが腰掛けていたシーツのシワだけが残されていた。
これにて第3章は完結となります! 楽しんでいただけていれば幸いです。
今回は戦闘シーンがなく、少し退屈に感じられた方もいらっしゃるかもしれませんが、キャラクターたちの内面や人となりを描くためには必要なエピソードでした。
現在、第4章を執筆中で、すでに第5話まで書き進めております。来月1日より順次投稿を開始する予定です。
なお、第4章で巻き起こる出来事は第5章、そしておそらく第6章の mid-point(前半)まで大きく続いていくことになります。これらのエピソードは「政治的な駆け引き」や「暗闇で繰り広げられる暗殺劇」が中心となりますので、もしそういった展開が退屈に感じられましたらご容赦ください。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
それでは、来月1日にお会いしましょう。またね!




