↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/100

第3章 第4話 (買い物の日)(前編)

新しい朝と新しい一日が、ついに村へと訪れた。温かな朝焼けの光が民家の窓から静かに差し込み、鳥たちのさえずりが夜の終わりを告げていた。人々は一人、また一人と起きて日課に向かう。ある者は復興作業を続けるために建設現場へ、またある者はそれぞれの職場へと足を運んでいた。


しかし村のhazureにある小屋では、リョウとサムがまだ心地よい眠りの中にいた。二人はマットレスの上で完全に泥のように眠りこけていたが, 窓ガラスを透過した一筋の陽光がリョウの顔を直撃した。


リョウ:「んん……っ」


青年は眉間に皺を寄せ、ゆっくりと瞼を開けた。


完全に意識が覚醒すると、ベッドの上に体を起こした。夜間の寝返りによって、腰まで伸びた長い黒髪は大きく乱れ、ボサボサになっていた。リョウは立ち上がった。上半身は裸で、引き締まった見事な肉体を露わにしながら、浴室のある小屋の隅へと向かった。そこには頑丈な扉はなく、長い緑色のカーテンが部屋を仕切っていた。


中に入ると、蛇口の真上に掲げられた鏡の前に立った。リョウは栓を捻り、冷たい水を流した。両手を cups のように丸めて水を受け止め、荒々しく顔に叩きつけて目やにを洗い流し、脳を強制的に呼び覚ました。近くの壺には、完全に新品と思われる二本の歯ブラシが立てられていた。一本は青、もう一本は深緑だ。リョウは青い方を取った。隣にはペーストの入った瓶があり、純粋な推測から歯磨き粉だと判断した。毛先に適量を付けると、勢いよく磨き始めた。


右から左へ、上から下へ、奥から手前へ。口内の隅々まで厳密に清潔にすること約五分、歯ブラシを吐き出して口をすすぎ、残った泡を洗い流した。仕上げにリョウは鏡の中の自分を見つめ、微かに微笑んだ。そこには欠点一つない、白く整然と並んだ完璧な歯並びがあった。


直後、彼は服を脱ぎ始めた。ズボンと下着を脱ぎ捨て、シャワーへと足を踏み入れる。温水の栓を開けると、間もなく蒸気が狭い室内に充満し、ガラスを曇らせてぬるい霧で全体を包み込んだ。水の下で過ごすこと約三分、筋肉の緊張をほぐしていった。水をとめるとタオルを手に取り、静かに体を拭いて清潔な服に身を包んだ。しかし、腰を越えて太ももの半ばまで届く長い黒髪は濡れたままであった。


支度が整うと、リョウはサムの元へ歩み寄り、起こすために肩を優しく揺すり始めた。


リョウ:「サム……サム、起きろ」


サムは渋々反応し始めた。薄目を開けると、最初に視界に入ったのは濡れ髪で立つリョウの姿だった。


リョウ:「おはよう、サム。もう起きる時間だ。今日はやることがたくさんある」


サム:「あと少しだけ……お願い……」


年少の少年は愚痴をこぼし、毛布をかぶって頭まで隠れてしまった。


リョウ:「駄目だ、サム。重要な件を片付けに行く。早く準備しろ」


リョウが折れないと悟ると、サムは諦めるしかなかった。眠気で目を細めながら、ふらつく足取りで浴室へ向かい、直行でシャワーを浴びた。数分後、完全にさっぱりした姿で出てくると、歯を磨いて服を着替えた。孤児院の服と同じデザインの清潔な着替えだった。


外へ出ると、小屋に一つしかない椅子に腰かけているリョウの方へ向かった。黒髪の青年は頭を後ろに倒し、目を閉じて天井を見上げていた。その表情には絶対的な疲労の色が浮かんでおり、最近の出来事による極度の消耗と睡眠不足を引きずっていることを示していた。


サム:「準備できたよ、リョウ」


しかし、リョウは返事をしなかった。深い昏睡のような状態に没入していた。サムは小さく苦笑し、今度はより強い声で呼びかけた。


サム:「りょーーーう!!!」


リョウは微かに跳ね起きるように頭を上げ、目を開いた。


リョウ:「よし……行くぞ」


リョウは立ち上がり、自身の剣を取ると自然な動作で肩に担いだ。サムは自分の武器を取ろうと腰を落としかけたが、リョウは手振りでそれを制した。


リョウ:「剣はここに置いていっていい。俺は用途があるから持っていくが、お前は当面必要ない」


サム:「わかった、じゃあ置いていくよ」


少年は頷き、ベッドの下に剣を滑らせて保管すると、二人は小屋を出て朝の活気に満ちた村の通りへと足を踏み入れた。


数分後、村の通りを穏やかな足取りで歩きながら、リョウは両手をポケットに突っ込んで思索にふけっていた。突然、彼は足を止めた。右手をポケットから引き抜くと, 指の間には眩い純金貨が挟まれていた。そして年少の少年に声をかけた。


リョウ:「おい、サム……」


サムは好奇心から振り返り、足を止めた。


サム:「どうしたの、リョウ?」


リョウは手を伸ばし, 自然な動作で金貨を差し出した。


リョウ:「受け取れ。好きなものを買ってこい。特に旅用の清潔な服を揃えることを勧める。俺は別件で用があるから、後で合流しよう」


サムは硬貨を受け取ったが、手のひらに伝わる貴金属の重みを感じた瞬間、信じられないというように目を丸くした。


サム:「こ……金貨!? でも……どこでこんなものを手に入れたの、リョウ?」


リョウは説明する手間を省き、反対方向へと歩き出した。無関心な様子で背を向けたまま右手を上げて応えた。


リョウ:「それはどうでもいい。必要なものに使え。余ったらお釣りはお前が持っていけ」


彼の姿は瞬く間に混雑する群衆の中に紛れ、見えなくなった。サムは一瞬硬貨を見つめ、友の浮世離れした気前よさを噛み締めながら、感謝を込めて呟いた。


サム:「ありがとう、リョウ……」


サムは踵を返し、一人で商業区画へと向かった。


一方、リョウは街道を外れ、奥深い静かな路地へと足を踏み入れていた。


リョウは静まり返った路地を確かな足取りで通り抜け、同じように人通りの多い裏通りへと出た。村の喧騒に身を任せながらしばらく歩くと、激しい熱気と炭の匂いが漂う石と木造の武骨な建物の前で足を止めた――鍛冶屋だ。


重い扉を押し開けて中に入った。店内にはあらゆる種類の武器が陳列されていた。壁に飾られた剣、両刃の斧、鍛鉄の盾。しかしカウンターには誰もいなかった。


リョウ:「頼もう! 誰かいるか?」


明確な声で呼びかけた。その瞬間、作業場の奥部屋から背の低い dwarves が出てきた。胸まで届く濃密な編み込み髭を蓄え、革のエプロンから煤を払いながらブツブツと文句を言っていた。


ドワーフ:「そう大声を出すな、小僧。奥まで聞こえている」


リョウは微かな好奇心を込めて彼を観察した。


リョウ:「ドワーフだな? 初めまして、俺はリョウだ」


ドワーフ:「そうだ、生粋のドワーフだ。初めまして、ワシはトーリンという。何の用だ、若者?」


リョウは背中に手を伸ばして剣を外し、刀身を覆っていた古びた布を静かに取り払った。ライラの鋼が木製のカウンターの上に露わになった。


リョウ:「最高のメンテナンスを施してほしい。それと、可能なら最高品質の専用の鞘を作ってくれ。今は鞘がないんだ」


トーリンはすぐには答えなかった。目を細めて刃に近づくと、ベルトから精密作業用の小さな金槌を取り出した。金属の各所を軽やかに叩き始めた。コン、コン、コン。


トーリン:「なるほど……」ドワーフは眉をひそめて呟いた。「刃の状態が極めて悪い。接合部には深い錆が残り、芯の金属がかなり弱っている。前回の戦闘で真っ二つに折れなかったのが奇跡なくらいだ。研ぎ直し、新たな鉄で焼き入れして強度を戻し、風を切るほど磨き上げて専用の鞘を作ることはできる……だが、かなり高くつくぞ」


リョウ:「正確にはいくらだ?」


トーリン:「まず、もう一つ確認させろ」と言ってカウンターの裏へ回った。


ドワーフは柄を掴み、焼き入れに使うぬるま湯が入った大きな桶の中に剣を完全に沈めた。その瞬間、驚くべきことが起きた。水中で剣の刃が眩い神秘的な黄金の輝きを放ち始めたのだ。


金属の表面に古代のルーン文字が浮かび上がり始めた。輝く金色の文字で、片面に名前が刻まれた――L Y R A。


絶句したトーリンは水中ので刃を素早く裏返した。ライラの名が下になり、反対側の鋼には同じ黄金の輝きで二つ目の名前が描かれた――M A S A M U N E。


ドワーフは大急ぎで水から剣を引き揚げ、再びテーブルの上に置いた。金色の文字が強く輝き続けるのを眺めながら、その手は微かに震えていた。


トーリン:「見るところ……お前の剣には意志(精神)が宿っているな?」


リョウ:「そうだ。名はライラという」


トーリン:「素晴らしい……自我を持つ剣など、何年ぶりにお目にかかったか。王国でも最高位の騎士くらいしか所持しておらん、極めて稀少なものだ。だが、本当に驚くべきはそこではない……」


ドワーフは極めて慎重に武器を再び回し、金属に輝く二つ目の名前を指し示した。


トーリン:「オロボリアスの伝説の鍛冶師の手による剣を見たのは、ワシがまだ子供の頃以来だ。マサムネ……この世に足を踏み入れた中で最高の鍛冶師。一千年以上前に没したはずだが、まだ作品が残っていたとはな。こんなものを手にしているとは、大層な幸運持ちだぞ、小僧」


リョウはその名を聞いて硬直した。脳裏で、その名に見覚えがあるような感覚を覚えていた。


リョウ:(マサムネ……? その名は……)


トーリンはプロとしての冷静さを取り戻すため、咳払いをして思考を遮った。


トーリン:「さて、勘定の話だ。危険な状態であること、意志を持つ剣であること、高級革の鞘の費用を合わせれば、通常なら銀貨130枚は頂くところだ……しかし、あのマサムネの作だ。ワシにとってもこのような芸術品を修復し、往年の栄光を取り戻させるのは名誉なこと。銀貨80枚で手を打とう。どうだ?」


リョウは極めて落ち着いた様子でポケットに手を差し入れた。常に持ち歩いている財産――眩い純金貨の一枚を取り出し、木製のテーブルの上に置いた。


リョウ:「お前の手で可能な限り最高の修復をしてくれ。珍しい素材を使って価格が上がっても構わない。やってくれ」


トーリンは金貨を見て目を丸くした。その重みを確かめるように素早く拾い上げると、ほとんど神聖な敬意をもってライラを手に取った。


トーリン:「よし、小僧。取引成立だ。金曜の朝には完全に仕上げておく」


リョウ:「結構だ」


その時、トーリンの作業台のすぐ後ろに、半透明で美しいシルエットが実体化し始めた。ライラだった。剣の精神は愛おしそうに妖艶な微笑みを主人に向け、甘い声で別れを告げた。


ライラ:「数日後にお会いしましょう、我が主様……より強くなられてあなた様の元へ戻ることをお約束します」


リョウは微かに微笑み、別れの gesture として右手を上げて応えた。


リョウ:「またな、ライラ。気をつけて」


取引を終え、リョウは踵を返して鍛冶屋を出た。外へ出ると朝の心地よい風が彼を迎えたが、今度はその体が心なかし軽やかに感じられた。


一方、サムは商業区画にある巨大な衣料品店にいた。少年は身丈ほどもある大きな鏡の前に立ち、ファッションの真のジレンマに陥っていた。五分ごとに着替えること三十分以上――フォーマルなドレススーツ、カジュアルな日常着, ゆったりとしたチュニック、あらゆる奇妙な組み合わせを試していた。混乱の極みで女性用の一般的なドレスを着る羽目になり、数分後には試着室から豪華な白いウェディングドレス姿で現れる始末だった。


自分の好みに合うものがまったく見つからず、サムは心底参って頭をかきむしった。周囲を見渡すと、自分が引き起こした惨状に気づいた。店の女性店員たちが疲弊しきった様子で、彼が床に放置した服の山を回収するために右往左往していたのだ。


散らかりようを目にして、サムの顔は羞恥心で赤く染まった。


サム:「あっ! 本当にすみません! 手伝わせてください!」


深く考える間もなく、サムは急いでしゃがみ込み、衣類を拾い集め始めた。近くでズボンを畳んでいた店員の一人が驚いたように彼を見つめ、親切に微笑みかけた。


店員:「お気になさらないでください、お客様。これが私どもの仕事ですので、お手を煩わせる必要はございません」


サム:「いえいえ、手伝わせてください。不配慮で整理もできなくて……今後は絶対にこんな散らかし方はしませんから」


素早く丁寧に、サムは床の最後の服まで拾い集めて綺麗に畳み、女性に手渡した。彼女は一礼して感謝を述べ、両腕いっぱいの服を抱えて去っていった。


しかし最大の課題は残っていた――サムは何を買うべきかまったく見当がつかず、ストレスを感じ始めていた。近くの椅子に崩れ落ち、溜息をつきながら小声で自分に語りかけた。


サム:「はぁ……何を買えばいいんだろう? 服はたくさんあるのに、どれもしっくりこないや……」


再び立ち上がり、今度は落ち着いて棚を調べ始めた。やがて、隅にあるマネキンに目が留まった。そこには完璧な冒険者の衣装が着せられていた。サムは上から下まで綿密に観察し、満足げな笑みを浮かべて自分のサイズに合うものを棚から外した。


サム:「これ、すごくいいかも」


試着室へ駆け込み、数分かけて着替えた。カーテンを開けて出てくると、劇的な変化を遂げていた。頑丈な茶色の革ブーツを履き、太い革ベルトで締めたアースカラーのパンツ、快適な黒の半袖Tシャツ、そしてその上には固定用ストラップと小さなサイドバッグを備えた軽やかな旅用の羽織を着用していた。


鏡を見つめ、その似合いぶりに驚きながら、後ろ姿を確認するためにクルリと回った。


サム:「これ、完璧じゃないか! すごく気に入ったよ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。