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第3章 第2話 (秘密) 後編


仮にリョウが「毎分10億ドル」を失い続けたとして、一文無しになるまで「2852年」かかるとしたら……彼はい体どれほどの財宝を手にしたのでしょうか?


そして何より、この途方もない莫大な資産を手にし、彼は一体何を企み、どのように使い果たすつもりなのか――?


リョウは確かな足取りで歩み続け、パンドラとオロバスをその背後に従えていた。一行はしばらくの間、静寂の中で進み、やがて村の建造物は後方へと過ぎ去り、彼らの前方に森の濃密な生い茂る木々が立ちはだかった。樹海の限界線で足を止めたその時、オロバスが一歩前に踏み出し、慇懃な一礼と共に沈黙を破った。


オロバス:「お尋ねしてもよろしいでしょうか、我が主……なぜ私どもは森へ向かうのですか?」


リョウは彼に視線を向けることすら über わず、いつもの素っ気なく落ち着いた声調で答えながら、深緑の鬱蒼とした奥合いを見つめ続けた。


リョウ:「白蛇が潜んでいた洞窟へ向かう。あの場所を確認しておきたい」


オロバス:「畏まりました」


それ以上言葉を交わすことなく、三人は森の深部へと足を踏み入れようとした。雑木林の生い茂る中を一定の歩調で歩むこと約10分、ついに怪物の巣穴へと続く、暗く巨大な大穴へと辿り着いた。


リョウが真っ先に足を踏み出し、絶対の平静を保ちながらその縦穴へと降りていった。両手をポケットに突っ込んだまま、一歩一歩を計算し尽くし、岩から岩へとミリ単位の精度で跳躍していく。オロバスがそのすぐ後ろを追う。同等の俊敏さで降下しながらも、彼は背中の後ろで手を優雅に組み、直立した軍人のような気品ある姿勢を保ち、その動作には一切の隙がなかった。一方のパンドラはよりしなやかに降下し、岩の突起間を軽やかに跳躍しながら、腕を微かに左右に広げて完璧な均衡を保っていた。


急勾配で険しい下降路であったが、三人は卓越した身のこなしで見事に降り進み、過酷な地形と戦闘における彼らの絶大な経験値を物語っていた。足を踏み外す者など一人としていなかった。


坑道の入口へ到達した時と同じく、降下にも10分の時を要した。ついに三人は白蛇の棲む広大な洞窟の底へと足をついた。リョウは最後の跳躍を決め、軽やかに着地すると、短く言い放った。


リョウ:「ようやく着いたか」


オロバスは貴族的な仕草で、肩に落ちた僅かな塵を優美にはらった。


オロバス:「これほど深く降りねばならぬとは、少々骨が折れましたな……」


パンドラ:「私は苦になりませんが……教えていただけますか、我が主。ここで一体何をお探しなのですか?」


リョウは立ち止まることなく前方へと歩みを進め、暗闇を見つめながら答えた。


リョウ:「あの白蛇は、人間を意のままに操り支配していた。だが、実際に土を耕す者がいなければ、どうやって糧を得ていたと思う? あのような存在が農耕に励むはずもない。ならば外部から資源を調達していたはずだ。つまり……」


リョウは足を止め、石壁に沿って歩き始めた。特定の痕跡を探し求めるように、その鋭い眼光で岩肌を注意深く観察していく。数秒後、彼の視線は、肉眼では捉え難いほど微かな黄色い光を放つ小さな亀裂に留まった。


リョウ:「……ここだな」


彼は呟いた。

流れるような疾風の動作で剣を抜き放つと、一閃の水平な斬撃を空に刻んだ。石壁は突如として轟音と共に崩落し、濃密な煙塵の幕が立ち込めて三人の姿を包み込んだ。空気が澄み始めると、リョウは顔を覆っていた腕を下げ、開いた瞳で穏やかに言葉を締めくくった。


リョウ:「……ゆえに、奴固有の『資本』が存在するはずなのだ」


彼らの目の前には、巨大なスケールを誇るもう一つの空洞が広がっていた。それは現実離れした光景であった。地面は純金の金貨、地金、そして遺物の果てしない海によって完全に埋め尽くされていた。金色の山々がいくつも聳え立ち、僅かな光を受けて目を眩ませるほどの絢爛な輝きを放っている。


オロバスは深い感嘆の笑みを浮かべた。


オロバス:「流石は我が主。何一つとしてその眼から逃れることはできませんな」


リョウは眼前に広がる圧倒的な富を前にしても、驚くべき平静さを保ったまま、ただ一言だけ呟いた。


リョウ:「大金持ちだな」


すぐさまパンドラへと視線を向け、簡潔に命じた。


パンドラ:「パンドラ、少し頼めるか?」


パンドラは完璧な一礼で頭を下げた。


パンドラ:「仰せのままに、我が主」


瞬く間に、パンドラの背からふたつの威容を誇る蝙蝠の翼が生え出でた。強力な羽ばたきと共に彼女は宙へと舞い上がり、広大な空洞を見下ろしながらその全貌を検分し始めた。


まさにその瞬間、リラの思念体が再び姿を現し、リョウの傍らに寄り添った。その瞳は眩い黄金の輝きを反射して煌めいている。


リラ:「素晴らしい……! これほどの財宝がすべてご主人様のものになるなんて、信じられません」


リョウは剣を洗練された動作で鞘に納め、再び両手をポケットに入れて歩み始めた。オロバスとリラがその両脇を固め、彼の歩調に合わせて進む。


リョウ:「この金があれば、お前を十分に手入れしてやれる。そうすれば、本来の性能を百パーセント発揮できるようになるだろう」


リラは足を止め、瞳に悪戯っぽくも崇拝の色のこもった光を宿しながら、彼をじっと見つめた。そして可憐な笑みを浮かべ、彼に向かって身を乗り出した。


リラ:「あら……何てお優しいのでしょう、ご主人様。もし武器の精霊に恋をすることが許されているのなら、私は今すぐにでも求婚していたでしょうね。あなたは本当に魅力的な男性です」


リョウ:「そうだな。俺は最先端を走る男だ」


リラは愛らしく鈴を転がすように笑うと、無限に続く黄金の丘へと再び視線を投げかけた。


リラ:「やはり……私の選んだお方は間違いなかったのですね」


その言葉を残し、リラの姿は空気中へと溶けるように消え去った。リョウとオロバスはゆっくりと歩みを進めたが、足元に足の踏み場もないほど堆積した財宝のせいで、足取りは困難を極めた。


オロバス:「この黄金を用いて、未来の基盤を固められるおつもりですね」


リョウ:「ああ。これは巨大な財政的蓄えとなる。これで資金が底を突く心配は永遠になくなる」


リョウは懐に手を差し入れ、村を救った報酬としてギルドから受け取った革袋を取り出した。ためらうことなく袋を傾け、すべての銀貨を床へとぶちまけると、それらは黄金の海の中へと混ざり合い消えていった。そして彼はかがみ込み、この世界で現在流通している金貨を正確に15枚だけ拾い上げた。


リョウ:「骨董価値のあるものではなく、現在使用されている金貨を15枚持っていけば、旅費としては十分すぎる。合計で約15万ドル相当か。当面はこれで足りる」


その時、風を切る音がパンドラの帰還を告げた。悪魔の給仕はリョウのすぐ隣へ完璧な優雅さで着地した。翼は背中の中へと完全に収縮して消え去り、彼女は検分結果を報告し始めた。


パンドラ:「我が主、測定を完了いたしました。この洞窟の広さは縦横共におよそ7キロメートル、平均天井高は12メートルに及びます」


リョウ:「ご苦労、パンドラ」


リョウは佇み、静寂の中で眼前に広がる圧倒的な富を見つめ続けた。頭の中で素早く試算を行い、冷ややかに呟いた。


リョウ:「正確な数値の算出は困難だが……この規模であれば、仮に毎分10億ドルを失い続けたとしても、完全に破産して一文無しになるまで2,852年かかる計算になるな」


主が誇る規模と知性に深く衝撃を受けたオロバスは、思わず片膝を地面につき、庄重な一礼を捧げた。


オロバス:「素晴らしい……実に見事な分析にございます、我が主。実に崇高でございます」


リョウは答える労力すら払わなかった。ただ両手をポケットに入れたまま立ち尽くし、洞窟の薄闇の中にどこまでも広がる幾重もの金の山脈へ、虚ろな視線を投げかけていた。


巨大な富の深淵を見つめ終えると、リョウは絶対の平静さをもって身を翻した。


リョウ:「よし、戻るぞ」


オロバスとパンドラがその後に続き、一同は退出の途についた。洞窟の開口部、すなわち坑道の出口へと辿り着くと、リョウは足を止めた。目にも留まらぬ速さで剣を抜き放ち、魔力を収束させると、入口の天井に向かって強力な斬空の波を放った。衝撃によって制御された落盤が起き、巨大な岩石が雪崩となって入口を完全に削平・封鎖し、亀裂の痕跡すら消し去った。


リョウは刃を納め、冷徹に言い渡した。


リョウ:「他人にこの財宝を見つけられれば、最大のアセットを失うことになる」


オロバスは手袋を整えながら、優雅に頷いた。


オロバス:「慎重さは美徳にございます、我が主。実に見事な采配にございます」


リョウ:「行くぞ」


何の未練もなく、三人はその場を後にした。凡人にとっては限りなく無限に近い富を、暗闇の奥底へと封印したまま。


しばらくの後――。


一行はすでに村の通りへと戻り、夕暮れの斜陽の下を穏やかな足取りで進んでいた。リョウの一歩後方を歩いていたパンドラが、好奇心を覗かせて沈黙を破った。


パンドラ:「旅立ちの刻はいつ頃をお考えですか、我が主?」


リョウ:「明後日だ。明日は身体を休めることに集中する。まずはサムの様子を見に行こう」


パンドラ:「かしこまりました、我が主」

従順に頷き、答えた。


三人は中央の小道を突き進んでいったが、避難所に近づくより先に、一人の男が彼らの立ち塞がり、進行を遮った。男は村の自治組織のリーダーであり、白蛇が全てを破壊し始めた際に進んで避難を指揮し、命を懸けて住民を助けたあの村人であった。


男はリョウの目の前に立ちふさがり、その顔は深い苦悶と焦燥で歪んでいた。青年の瞳をまっすぐに見つめるその佇まいは、まさに命運を分ける一事を口にしようとしているかのようであった。


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