第8話 第2巻「啓示」その1
村の秘密が明かされ始める。だが、事態を把握するのは俺たちと他のキャラクターたちだけだ。なぜなら、リョウはすでにすべてを導き出していたからだ。
ケンゾウはリョウをじっと見つめ、迷いを振り払うように真剣な表情で沈黙を破った。
ケンゾウ:「お前にすべての真実を話そう」
赤髪の少年は簡易ベッドの上で体勢を整え、彼自身の視点からこの村を変貌させた出来事を語り始めた。
ケンゾウ:「ある日突然、人々が奇妙な行動を取り始めたんだ。すべては村長が家から一歩も出なくなってから始まった。以前は俺たち全員に、特に孤児院の子供たちにはとても親切な人だったのに、急に心を閉ざしてしまったんだ」
リョウはその言葉を遮り、冷徹に分析を始めた。
リョウ:「村長だと? 彼の容姿はどんな特徴がある?」
ケンゾウ:「ああ、老人だよ……。だが言った通り、今は家から全く出てこないんだ」
リョウ:「この村へ来る途中、街道である老人に出会った。彼は自分が来たはずの村への道を尋ねてきた。奇妙な話だ」
ケンゾウ:「それが本当に村長だったのかはわからない……。だが一ヶ月前から、村人たちの行動がおかしくなった。同時に同じ言葉を二度繰り返す者や、孤児院の子供たちが俺を冷たい目で睨み、理由もなく避けるようになった。最初はわけがわからなかったが、ある晩、夕食でマリア修道女から差し出された緑の葉を拒絶した瞬間から、俺はここに閉じ込められた。外出も何も許されていない」
リョウは椅子から静かに立ち上がり、右手を顎に当てて思索にふけりながら、静かに呟いた
リョウ:「なるほど、理解した……」
年下の少年の確信に満ちた態度に、ケンゾウは戸惑いを隠せずに問いかけた。
ケンゾウ:「何がわかったっていうんだ?」
リョウ:「村人全員が外部から精神を操作されている。彼らを完全に支配している存在がいるはずだ。そして俺の仮説が正しければ、街道で出会った老人が村長であり、その黒幕と結託している可能性が極めて高い」
ケンゾウは信じられないといった様子で、リョウの推論に疑問を投げかけた。
ケンゾウ:「なぜそう言い切れる? 村長だって他の奴らと同じように操られているだけかもしれないだろう。それに、誰かが人々を支配しているなんて、どうしてそこまで確信できるんだ?」
リョウは視線をケンゾウへと向け、精密な計算のように論理を構築していった。
リョウ:「俺も食事の時にあの緑の葉を勧められ、それを拒んだ。その時のマリア修道女の激昂は異常だった。あの葉はただの飾りに見えたが、強制的に摂取させる目的がなければ、ただの飾りを残しただけであそこまで怒るはずがない。さらに、お前が言った言葉の重複や、壁を見つめて静止する村人たちの奇行。これは精神支配の証拠だ。敵の能力はこれほど多くの人間を同時に制御するには不完全であり、システムに処理の遅延が生じている」
ケンゾウは少年の冷徹な論理に圧倒され、背筋に冷たいものが走るのを感じた。
ケンゾウ:「もしそれが本当だとして……そんな化け物に俺たちだけで何ができる?」
リョウ:「この状況を仕組んだ存在は、俺とお前のほか、相棒のサムが支配を免れていることをすでに察知している。それは奴にとって明確な脅威だ。だからお前を監禁して排除し、俺たちを早急に村から追い出そうとしている」
ケンゾウ:「なぜそこまで言い切れるんだ?」
リョウはその日の午後に掴んだギルドの不審な仕組みについて説明を始めた。
リョウ:「俺とサムはギルドに入ってから二つの依頼しかこなしていない。通常、最初の依頼でブロンズに昇格し、そこからさらに十の依頼を達成しなければアイアンには上がれない。だが、今日のジャイアントボアの依頼を終えただけで、ギルド長は次の一件でアイアンに昇格できると言った。これは規約上あり得ない嘘だ。影に潜む支配者は、俺たちをこの土地から引き離したがっている。この村には俺たちのランクに合う依頼はないと告げ、去るように促した。街頭で見せられた悍ましい幻覚も、俺たちを追い払うための直接的な警告、あるいは脅迫だ」
ケンゾウはリョウの驚異的な洞察力と情報収集力に言葉を失った。
ケンゾウ:「それじゃあ……この事態を打破する策があるのか?」
リョウはあまりにも平然と、拍子抜けするような軽さで答えた。
リョウ:「作戦か? いまのところは何もない。ただ黒幕の元へ赴き、直接排除するだけだ」
ケンゾウはベッドから勢いよく立ち上がり、血相を変えてその無謀な発言に噛みついた。
ケンゾウ:「正気か!? お前は馬鹿なのか!? そんな正体不明の化け物に策もなしに挑むつもりか!」
リョウ:「そう取り乱すな。お前のための作戦ならある。そのためには一つ、協力が必要だ」
ケンゾウは一歩後退し、息を呑んだ
。
ケンゾウ:「俺の……協力?」
リョウ:「この村で支配から逃れているのは、俺たち三人だけではない。孤児院の少女アカリも操られていないが、彼女は巧みに操られているふりをしている。観察したところ、彼女は一人の時は感情豊かだが、他人の前では極めて寡黙になり、気配を消している。計画はこうだ。俺がお前とアカリをこの部屋から脱出させる。敵の精神支配が不完全である以上、お前たち二人が村人の目を覚まさせ、呪縛を解く役割を担う。その間に、俺とサムで元凶を叩く」
ケンゾウは自分に課された責任の重さに驚き、不安げにリョウを見つめた。
ケンゾウ:「だが……村人全員が敵に回る中で、俺一人でどうしろと言うんだ? それにアカリはまだ幼い子供だ。武器も持たずにどうやって身を守ればいい?」
リョウは静かに椅子から立ち上がると、自分のベッドへ歩み寄り、枕の下に手を差し入れた。短い探りの後、鋭く研ぎ澄まされたキッチンナイフを取り出し、ケンゾウの手に直接握らせた。
リョウ:「持っておけ。状況が膠着した時の自衛用だ」
ケンゾウは冷たく光る刃を見つめ、驚愕した。
ケンゾウ:「これをどうやって手に入れた?」
リョウ:「食器を片付けに厨房へ行った際、感謝の言葉を述べる一瞬の隙に、服の中に忍ばせた」
ケンゾウ:「信じられん……。孤児院に来た最初の瞬間から、すべてを計画していたのか?」
リョウ:「いや、森に入る前からの疑念だ。前の村の洞窟で救出した人々も同様の精神支配下にあり、その受け答えのパターンから確信を得ていた」
ケンゾウは力強く頷き、ナイフを衣服の内に隠すと、その胸に確かな覚悟が宿るのを感じた。
ケンゾウ:「わかった……。それで、いつ行動を起こす?」
リョウ:「まだ決めていない。それもこれからの話だ」
ケンゾウはそのあまりの危機感のなさに再び怒りを爆発させ、声を潜めながら怒鳴った。
ケンゾウ:「ふざけるな! 死にたいのか!」
リョウはそれ以上答えず、物静かにベッドに横たわると、寝返りを打って眠る準備を始めた。目を閉じる直前、彼はケンゾウに最後の一言を残した。
リョウ:「休んでおけ。これから忙しくなる」
ケンゾウは薄暗闇の中に立ち尽くし、諦めを込めて深く息を吐き出した。
ケンゾウ:「はぁ……。本当に、いかれた奴だ」
選択肢のないケンゾウは、壁のスイッチに手を伸ばして部屋の明かりを消し、己のベッドに入って再び部屋を沈黙で満たした。
翌朝、丸い窓から柔らかな陽光が差し込み、リョウは目を覚まして大きくあくびをしながら上体を起こした。最初に彼を出迎えたのは、目の前に浮遊して現れたライラだった。彼女は恭しく一礼し、いつもの微笑みを浮かべた。
ライラ:「おはようございます、我が主」
リョウ:「おはよう、ライラ。今日の調子はどうだ?」
ライラ:「万全です、我が主。いつでも命令を」
その時、ケンゾウがその光景を遮るように声をかけた。ベッドの上に座り込んだ彼は、眉をひそめて完全に困惑した表情でリョウを見つめていた。
ケンゾウ:「お前は朝から一体誰と独り言を喋っているんだ?」
リョウは首を傾げ、抑揚のない声で応じた。
リョウ:「ああ……おはよう。もう起きていたのか」
ケンゾウ:「ああ、問題ない」
その瞬間、張り詰めた静寂を破り、廊下から足早に近づいてくる足音が響いた。鍵がガチャガチャと鳴り、硬い金属音が響いて鍵が開けられた。扉が完全に開くと、背筋を伸ばした冷徹な佇まいのマリア修道女が姿を現した。
マリア修道女:「朝食の時間です。速やかに下へ降りなさい」
リョウは短く、無感情に答えた。
リョウ:「はい」
黒髪の少年はベッドから立ち上がり、衣服を整えて部屋を出た。リョウが廊下に出ると同時に、マリア修道女は重い木製の扉を激しく閉め、外から再び施錠して足早に去っていった。
部屋に取り残されたケンゾウは、ため息をつきながら石の床に視線を落とした。すると、扉のすぐ近くに、先ほどまでは存在しなかった小さく折り畳まれた白い紙片が落ちていることに気づいた。
ケンゾウ:「む……」
ケンゾウは警戒しながら近づき、腰を落としてその紙片を拾い上げた。心の中で疑問が浮かぶ。
ケンゾウ:(これは何だ?)
慎重に手紙を開くと、そこには力強く素早い筆致で短い一文が記されていた。
『食事に出される緑の葉をすべて保管しておけ。――リョウ』
ケンゾウは眉をひそめ、すぐにそのメモをポケットに仕舞いながら、呟いた。
ケンゾウ:(緑の葉を保管しろだと? 一体何のために……。まあ、奴のことだ、何か考えがあるのだろう)
しばらくして、リョウはサムと共に、昨日ライラの剣を見つけた古びた廃物置の内部で密談を交わしていた。リョウはすでに旅の相棒に作戦の詳細を伝えていた。サムは友人の驚異的な洞察力に感嘆し、頭を掻きながら打ち明けた。
サム:「なるほどな……。本当に信じられないよ、リョウ。僕だったらギルドや村人たちのそんな細かい不自然さには一生気づけなかった」
リョウ:「この作戦を完璧に遂行するためには、最後にもう一つのピースが必要だ。お前の力が必要なんだ」
リョウは突然、物置の隅へと視線を向けた。積み上げられた木板の影に、少女アカリが身を潜めていた。彼女は影からリョウたちの計画をすべて盗み聞きしていたのだ。見つかったことを悟ったアカリは、観念したように這い出て、内気ながらも覚悟を決めた様子で口を開いた。
アカリ:「そんなに簡単に気付かれてしまうなんて……」
リョウ:「最初の夕食の時、お前は食事の礼を言うために俺に近づいてきた。あの時、周囲には俺とサム、そして数人の子供しかおらず、マリア修道女は離れていた。だが、彼女が近づいてきた瞬間、お前は急に黙り込み、何かに怯えるように指示を待つ態度を見せた。マリア修道女の前では常に硬直して命令を待つ人形のようだが、サムと二人だけの時は非常に明るく素直になる」
アカリは自らの靴を見つめ、リョウの冷徹な観察を受け入れながら、消え入りそうな声で答えた。
アカリ:「ええ、その通りよ……。私もこの村がおかしくなった最初の日から気づいていた。ケンゾウが上の部屋に閉じ込められたのも見ていたわ。でも、自分も同じ目に遭うのが怖くて、操られているふりをしてやり過ごすしかなかった。その後……あの森へ他の村人たちと一緒に連れて行かれ、そこであなたたちに救われた。怖くてどうしたらいいかわからなかったの」
リョウは静かに彼女を見つめ、一歩近づくと、普段は見せない温和な仕草で彼女の頭を優しく撫でた。リョウはアカリより少し背が高く、彼女が9歳で彼が10歳という年齢差の割に体格の差はそれほど大きくはなかったが、その佇まいは頼もしい兄そのものだった。
リョウ:「心配ない。恐怖を感じることは決して悪いことではない。それは無謀な行動を避けるための賢明さだ。だが、人生には恐怖を捨て去り、現実と対峙し、降りかかる苦難を受け止めなければならない瞬間が必ず訪れる」
アカリは驚きに目を見開いた。この枯れ果てた村で、これほど強固な決意と包容力に満ちた眼差しを見たのは本当に久しぶりのことだった。少女は小さな拳を固く握りしめ、決意を込めて告げた。
アカリ:「私、全力でみんなを助けるために頑張るわ。村の人たちを救うために!」




