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デュアルリバース (Dual Rebirth)  作者: 善悪 亮 (Ryo Zenaku)
第1章 第2部:「戦略を組み立てる刻」
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第1巻・第2部 海底の結晶 一団 エピソード8・第1分冊

息詰まる海底の暗闇の中、深淵の牙がその肉体を切り裂く。生き残るための選択肢は、破滅の代償を支払うこと以外にない

リョウは未知の深淵へと、垂直の下降を継続していた。冷たく重苦しい水の中に没入してから、すでに十五分が経過している。彼の唯一の生命線は口と鼻を覆う空気のエア・バブルだったが、自らの呼吸を絶え間なく循環させているせいで、酸素は確実に枯渇しつつあった。


リョウ:(現時点で相当な深さまで来ているはずだ。十五分もの潜水……。この空気の泡のおかげで呼吸は保てているが、永遠に続けられるわけじゃない。同じ空気を吸い続けるのは致命的だ。早く目的地に到達しなければ、さもなければ……)


その瞬間、リョウは動きを止め、広大な水塊の中で静止した。精神を集中させるために両目を閉じると、水流の中に微かな振動を感知した。彼は瞬時に反転し、刀を抜くと、自らに突進してきた一匹の小さなピラニアを真っ二つに一閃した。その生物は、これまでに見たこともないほど鋭利な牙を有していた。


リョウ:(ピラニアか……。やはり俺の推測は正しかった。この下には怪物がいる)


思考を終えるが早いか、彼は再び身を翻して別のピラニアを斬り捨てた。しかし、その背後からさらに三匹が飛び出し、次から次へと群れが膨れ上がっていく。リョウは精密な剣閃で一匹ずつ確実にほふっていったが、一匹を排除するたびに、それ以上の数が虚空から湧き出てくる。ものの数秒で、密集したピラニアの渦が彼を完全に包囲し、鱗と牙の暴風雨トルネードのただ中へと彼を幽閉した。


完全に退路を断たれながらも、リョウは冷静さを失わなかった。刹那の間だけ目を閉じ、再びそれを見開いた時、彼の左眼には「滅」の文字が真紅の輝きを放って刻印されていた。


無数のピラニアがその身体に群がると同時に、リョウは自身の軸を中心に猛烈に回転した。澱んだ水底で、三秒間の絶対的な緊張が張り詰める。直後、全方位の群れが一斉に放たれた同時多発的な斬撃の嵐によって爆散し、周囲の水域を完全に血の色へと染め上げた。


その瞬間に眼の「滅」の文字は消失した。しかし、体内で弾けた衝撃波の余波により、リョウの生命線であった空気の泡が破裂。直後、水中で激しく咳き込んだ彼の口元から、凄まじい水圧によって一筋の血の糸が吐き出された。


リョウ:(……くそ、痛むな……)


胸を刺す激痛と酸素欠乏を精神力でねじ伏せ、リョウは体勢を立て直してさらに深くへと潜行した。奈落の暗黒のさらに奥底へと降下するにつれ、深淵の闇の隙間から、強烈な「蒼い光」が輝きを放ち始めた。


リョウは降下を続けた。しかし、下層からの蒼い光が輝きを増すのと反比例するように、彼の身体を強引に底へと引き摺り込もうとする、凄まじい大海流の引き込みが彼を襲った。


リョウ:(何だこの激流は? 俺を底へ引っ張り込もうとしているのか?)


岩石によって形成された狭い漏斗状の淵に到達するまで、リョウは降下を強いられた。海流が吸い込まれていくその穴の隙間から、彼は慎重に中を覗き込んだ。そして彼の瞳が捉えた光景は、まさに上層のステージでヴィクトルが目撃しているものと「完全同一の光景」だった。中心に位置し、自転の軸を中心にハイパーボリック(超軌道)な速度で激しく回転する、一つの蒼いクリスタル。そのアーティファクトは、周囲に水と岩塵の激しい竜巻を形成し、その濃密な灰色の雲の内部で激しい電雷を炸裂させていた。


リョウ:(どういうことだ? あれが魔力の歪みを引き起こしている元凶か……。一体どこのどいつが、あんなものをここに配置した?)

その刹那、リョウの全身の危険察知センサーが最大限界まで跳ね上がった。彼が電光石火の速度で反転した時、上層の地表に現れたあの巨大魚と「同種の怪異」が、まさに自身の背後に迫っているのを発見した。サムが対峙し、地上で葬り去ったあの怪物と同じ種族。しかし、この個体は明らかに地上のものよりも巨大で、強靭であり、そして「老獪ろうかい」だった。


リョウは即座に刀を構え、水底の岩盤を足場にして爆発的な跳躍を敢行。巨大魚の突撃ルートから間一髪で脱出した。


魚はリョウの移動先へと瞬時に軌道を修正し、質量を乗せた凶悪な頭突きを叩き込んできた。その一撃により、リョウは岩壁へと凄まじい衝撃とともに叩きつけられる。リョウはすぐさま立ち上がったが、魚はすでに正面から次の蹂躙体制に入っていた。リョウは再びその猛進を回避することに成功した。しかし、この個体は先ほどのものとは比較にならないほど俊敏だった。正確無比に放たれた尾ひれの一撃コレットがリョウをとらえ、彼は反対側の岩壁へと激しく叩きつけられた。


連続した二度の重撃により、リョウの意識は極度の朦朧状態に陥った。標的の衰弱を悟った魚は、全速力で三度目の致命的な突撃を仕掛けてくる。残された最後の反射神経を振り絞り、リョウは刀の刃先で獣の頭上を微かに掠め取るような太刀筋を放った。その一撃が引き金となり、魚は軌道を下方へと狂わせ、激しい勢いで海底の地盤へと正面衝突した。

その衝撃で底面にひびが入り、砕けた岩の破片がクリスタルの竜巻へと次々に吸収され始める。リョウはその光景を直感的に見抜いた。このままでは足場が段階的に破壊され、強固な基盤を失えば、あの竜巻は自分自身をも呑み込むだろう。戦闘を迅速に終わらせる必要があったが、敵はあまりにも速く、容易に隙を晒してはくれない。


リョウ:(この状況で、俺に何ができる? ……選択の余地はなさそうだな)


リョウは再び左眼の「滅」の文字を起動させた。その瞬間、彼の精神世界の深淵、底知れぬ暗黒の奥底で、全く同じ文字をその身に刻んだ「謎の紅い眼の影」が、不敵な笑みを浮かべてその両目を開いた。しかし現実の世界において、リョウは確固たる意思で前進した。水中で身体を横に捻り、刀を突き立てようと試みる。だが、この怪物の鱗の硬度は先ほどの個体を遥かに凌駕しており、さらに自身の刀はこれまでの激戦によって刃が完全に磨耗し、かつての鋭利さを失っていた。刺突が通用しないと悟ったリョウは、刀をまるでハンマーのように扱い、硬質な打撃を打ち込むことで魚の軌道を無理やり逸らす戦法に切り替えた。


しかし、対峙する宿敵も愚鈍ではなかった。野獣でありながら、そこには「驚異的な知性」が宿っていた。魚は水中で瞬時に姿勢を再構築し、リョウの肉体へと一直線に向かっていく。衝突のまさに直前、魚は目を見張るべき速度で軌道を変更し、瞬きの一瞬の間にリョウの死角(背後)へと消失した。リョウは反応の猶予を完全に奪われ、背後からその全質量を伴う衝撃を直撃させた。


巨大魚はリョウを岩壁との間に圧殺するように固定し、巨大な顎を開いたまま、彼を上方へと力任せに引き摺り回し始めた。不規則に突出した鋭利な岩肌に、彼の身体が連続して削られていく。リョウの肉体は致命的なダメージを蓄積していった。突出した岩の突起に衝突するたびに、彼の頭部からは鮮血が噴出し、背中は凄まじい摩擦によって衣服が完全に引き裂かれ、皮膚が削れて生肉が露出していく。全身が焼き付くような激痛に苛まれる中、何よりも彼を苛んだのは「左眼」の燃えるような渇きだった。彼の左眼からは、一筋の血の雫が静かに流れ落ちていく。


魚は減速することなく、彼を地表(水面)へと引き摺り登っていく。完全に退路のない、絶体絶命の窮地。


リョウ:(この一撃を放てば、その後に何が起こるのか、どんな代償を支払うことになるのかは分からない……。だが、どんな犠牲を払ってでも、やってやる)

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