第1巻・第2部 地下の盾 一団 エピソード7・第2分冊
極めて不可解な怪物が姿を現す。だが、その風貌は多くの疑問を残した。まるで地獄の底から這い出てきたかのような姿だったからだ
その響きは、強固な岩盤を叩いた時のいつもの鈍い衝撃音ではなかった。彼らの足元で、縦穴の底部が完璧な蜘蛛の巣状の亀裂へと完全に破砕され、一瞬の後、乾いた大音響とともに床が完全に崩落したのだ。床はスリの質量に耐えかねて崩れ落ち、彼らが構築しようとしていたシェルターの真下へと続く、完全に未知の空洞の深淵へとスリを落下させた。
ルシアは新しく開いた穴の縁から恐る恐る下を覗き込んだ。粉砕された岩の塵埃が宙に漂う中、彼女の瞳は恐怖に見開かれていた。
ルシア:「スリ!!!!! 大丈夫!? 生きてる!?」
数メートルの深さがある穴の底から、砕けた石を踏みしめるくぐもった足音のエコーが返ってきた。スリはゆっくりと立ち上がり、肩に積もった瓦礫を払い落としながら装備を整えた。落下の衝撃で多少の朦朧感はあったものの、その肉体に深刻な外傷は見当たらなかった。
スリ:「ああ、大丈夫だ、心配ない!」
完全に直立すると、スリは自分が落下した空間を精査するために反転した。そこは、完全に未知の地下空洞だった。本質的には上の洞窟と瓜二つの構造だったが、彼の注意を即座に奪ったのは、その空間の中心に浮遊している「もう一つのクリスタル」だった。しかし、ヴィクトルとアカネが監視しているあのアーティファクトとは異なり、この結晶は自身の軸を中心に超高速で回転しておらず、嵐を引き起こすことも、暴風の突風を放出することもない。それは完全に「沈黙」しており、上層の敵意とは対照的な、絶対的な静止の中に沈んでいた。
スリは警戒を怠らずに近づいた。慎重な距離を保ちながら視線でそれを綿密に観察すると、幾何学的な構造において先ほどの結晶と僅かに類似していることに気づいた。その物体の不活性な性質に引き寄せられるように、彼はゆっくりと右手を持ち上げ、指先がその冷徹な石の表面に触れるまで伸ばしていった。そして、それをしっかりと掴み取った。――何も起こらなかった。魔力の放出も、爆発も、環境の変異もない。洞窟の静まり返った沈黙は損なわれることなく保たれたままだ。
その発見に満足したスリは、縦穴をよじ登って通路へと帰還すべく身体の向きを変えたが、まさにその瞬間、彼の血液を瞬間凍結させるほどの凄まじい恐怖が彼を襲った。
彼の目の前、退路を完全に塞ぐようにして、それは立っていた。文字通り、悪夢の具現化だった。その異形は、胴体の側面から垂れ下がる六本の細く極端に長い腕を持ち、同様に長く骨張った二本の脚でその身を支えていた。毛髪のない頭部の中心には、まぶたのない巨大な一本の眼が固定されていたが、何よりも恐ろしいのはその「口」だった。首の付け根から腹部まで垂直に広がる異形の裂け目。そこから、不揃いに尖った無数の歯の列が突き出し、お互いを激しくきしませていた。
視覚的なインパクトがあまりにも暴虐的だったため、スリは溢れ出るアドレナリンに身体を硬直させ、三秒間完全に両目を強く閉じた。彼の思考は一秒に千回転の速度で駆動していた。その収差が一体何なのかは分からなかったが、潜在意識の奥底にある奇妙な感覚が、それがどこか漠然と見覚えのあるものだと告げていた。過去の不吉な記憶、あるいは忌まわしい残像のような。彼がようやく恐怖をねじ伏せて再び目を開けた時、すでにその怪物の姿はなかった。空間は完全に空虚であり、彼は完全に一人きりだった。
軽い混乱と、胸の奥で狂ったように跳ねる心音を抱えながらも、彼は地上の緊急事態を考慮し、この事象を深く詮索することを放棄した。再び岩壁を登ろうと右手を調べた時、彼はさらなる異変に気づいた。指の間にあったはずの、あのクリスタルが消えていたのだ。足元や周囲の地面に視線を走らせたが、あの紫色の物体はどこにも存在しなかった。完全に煙のように消失しており、彼の混乱は二倍に膨れ上がった。
スリは重い溜息を漏らし、乱れる精神の攪拌を鎮めようと試みた。
スリ:「はぁ……一体、今ここで何が起きたってんだ?」
これ以上の猶予はない。スリはひび割れた壁面を掴み、垂直の縦穴の入り口へと這い登っていった。そこでは、焦燥しきったルシアが彼を迎えた。
ルシア:「本当に大丈夫なの、スリ?」彼女はもう一度問いかけ、最後の段差を登りきるのを助けるために手を差し伸べた。
スリ:「ああ、平気だ。今起きたことは忘れてくれ。それよりセレナに、下の洞窟の準備ができたと伝えてくれ。完全に空間が開いている。あの下の空洞を、爆発から身を守るためのシェルター(防空壕)として利用する」
ルシア:「分かったわ、すぐに!」
ルシアは反転し、自分たちが掘り進めた通路を全速力で駆け登り、セレナが周囲の警戒を維持している地上へと俊敏に到達した。
ルシア:「セレナ! シェルターの確保が完了したわ! スリが下に安全な空洞を見つけた!」
セレナは汗に濡れた顔に安堵の表情を浮かべて頷き、革手袋のストラップを締め直した。
セレナ:「よし……それじゃあ、いよいよ最終フェーズの実行ね」
ルシア:「ええ、行きましょう」
二人は迅速に大空洞の開口部へと向かい、そこで待機していたアカネとヴィクトルと合流した。ヴィクトルはすでに射撃の姿勢をとり、縁の近くで片膝をつき、即席の弓の弦を限界まで引き絞ったまま、ルシアとセレナが地下の避難所が完全に機能していることを報告し、決定的な一撃を放つ合図を出すのを今か今かと待っていた。
セレナは彼の隣に位置取り、その肩を力強く叩いた。
セレナ:「準備完了よ、ヴィクトル。いつでもいけるわ。下の退路は完全に開いている」
ヴィクトルは重心を低くし、滑りやすい岩の上で自らのバランスを安定させた。湾曲させた木製の弓を構え、アカネが金属に定着させることに成功した凝縮された火炎によって、危険な輝きを放つ「ナビハの矢」を番える。彼は、耳を聾する暴風の突風を放ちながら、竜巻の中心で激しく自転する蒼いクリスタルへと直接照準を合わせた。
しかし、彼は無謀に引き金を引くつもりはなかった。彼の脳内では、すでに全てのプロセスが冷徹に計算され尽くしていた。水飛沫の洗礼を頬に受けながら、ヴィクトルは心の中で自らに語りかける。
ヴィクトル:(――あの竜巻は左回り(反時計回り)だ。もしクリスタルに向けて完全に直線軌道で矢を放てば、風圧の質量によって軌道は即座に左へとねじ曲げられ、弾道が逸れる。ならば……目標から右に約二メートルずらした位置を狙えば、風が矢をちょうど中心へと押し込んでくれるはずだ)
脳内の方程式が完全に解けた瞬間、ヴィクトルは姿勢を微修正し、あえて右側の虚空へと向けられたナビハの白熱する先端に視線を一直線に並べた。そして、烈風の咆哮を圧倒するような、確固たる声でカウントダウンを開始した。
ヴィクトル:「一……。二……。そして……」
ヴィクトルの指先がエラスティックロープを解放するまさにその直前、周囲の全環境が、一瞬の何分の一かの刹那の中で「凝固」したかのように見えた。炎の残光たるオレンジの光が湿った壁面に最後の反射を刻み、洞窟は完全な暗黒の深淵へと没入していく。大気中にただ一つだけ取り残され、サスペンドされた音は、水の奔流が立てる鈍い落下の残響だけだった。
また一話、エピソードを書き終えることができました。皆様に楽しんでいただけていれば幸いです。
残りあと3エピソードで、この第1巻(皆様のお好きな呼び方で言えば、第1章ですね)が完全に、一括して完結を迎えます!
ここで皆様に一つだけお伝えしたいことがございます。今回登場した「あの不気味な怪物」についてですが、その正体や背景の解説には、作中で少しお時間をいただくことになります。ただ、これだけは言わせてください。あの存在は、決して物語の穴を埋めるためだけの、その場しのぎのプロット(設定の穴埋め)などでは断じてありません! 彼らには物語の根幹に関わる非常に重要な役割があるのですが、それが明かされるのはもう少し先の話になります。
それでは、また次のエピソードでお会いしましょう。バイバイ!




