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デュアルリバース (Dual Rebirth)  作者: 善悪 亮 (Ryo Zenaku)
第1章 第2部:「戦略を組み立てる刻」
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第1巻・第2部 最後まで恐れず エピソード5・第1分冊

サムはリョウと再会し、己の真価を証明する覚悟を決めていた

リョウが視線を上げると、そこにはサムが立っていた。いつもの彼を象徴するような、温かくも自信に満ちた微笑みを浮かべ、手を差し伸べている。だが、サムの雰囲気はどこか違っていた。その背には、専用の鞘に収まった見事な大剣が背負われており、彼の存在そのものから奇妙なほど圧倒的な力の波動が放たれていたのだ。リョウは心底驚いた表情で彼を見つめた。


リョウ:「……どうやってこれほど早くここまで来られた?」


サムは差し伸べた手をしっかりと固定したまま、さらに笑みを深めた。


サム:「話せば長くなるよ」


リョウはその手を握り、引き上げられるようにして立ち上がった。筋肉の激痛は依然として残っていたが、相棒の帰還を目にしたことで、彼の中に確かな安定感が戻ってきた。口元の端から流れる血の跡を拭いながら、リョウは茶髪の少年が背負う武器へと視線を向けた。


リョウ:「いい剣だな」


サム:「だろ? へへへ。それより……ここで何が起きてるのか、教えてくれないか?」


リョウの表情は即座に、いつもの冷徹で計算高い戦略家のそれへと戻った。彼は白泡を立てる広大な水面へと向き直り、その中心を指差した。


リョウ:「あの森の時空の歪みを引き起こしているアーティファクトの所在が判明した。この湖の、最深部だ」


サム:「どうしてそれが分かるんだ?」


リョウ:「この大気があまりにも莫大な魔力マナで満ちているにもかかわらず、その全てが湖底へと急速に吸い込まれているからだ。底にある何かがエネルギーを貪り食っている。私の直感が、あれが森の異変の元凶だと告げている。問題は……」


サム:「問題って?」


リョウ:「湖に巨大な怪魚が番人ガードとして潜んでいることだ。奴の鱗は異常なほど硬く、私の斬撃すら微々たる痛痒つうようにしかならん。水中で奴と戦って無駄に魔力を消耗するわけにはいかない。底へ到達する前に、酸素が尽きて溺死するのがオチだ」


サムは数歩前へ歩を進め、橙色の光を反射する波が黒い砂浜へと消えゆく境界線で足を止めた。かつて彼を支配していた恐怖の色は微塵もなく、ただ静かに広大な湖を見つめ、それからリョウへと視線を戻した。


サム:「リョウは底まで泳いで。あの巨大魚は僕が引き受ける。僕はあまり泳ぎが得意じゃないし、その役割ならお前の方が適任だろ? どうだい?」


リョウの唇に、微かだが鋭い笑みが浮かんだ。この旅が始まって以来初めて、己の重い重荷を、この相棒の肩へと真に委ねられるような感覚を覚えたのだ。


リョウ:「――私の思考を読んだな」


二人は確かな足取りで湖の縁へと歩き始めた。洞窟内の湿気と息詰まる熱気が二人を包み込む。水が膝の高さに達する直前、リョウは一瞬だけ足を止め、隣の相棒を盗み見た。


リョウ:「頼むから、死んでくれるなよ。お前の死を背負って生きるなど、私は御免被りたい」


サムはその冷徹な言葉の裏にある不器用な気遣いを拒絶しなかった。それどころか、瞳の中に新しく宿した自信の火花を輝かせ、彼らしい笑みを返した。


サム:「ここで死ぬつもりなんて、サラサラないよ。心配するな」


リョウは暗い水面へと視線を逸らした。しかし彼の潜在意識の奥底、より深く、痛切な声が激しく共鳴していた。


(――誰かの死を背負うのは、もう二度と御免だ。あんなことは、もう繰り返させない)


これ以上の遅滞を嫌い、二人は極寒の湖へと身を投じた。直後、水中における技量の差が顕著に現れる。リョウは流体力学に基づいた俊敏な動作で、爆発的な速度で泳ぎ、先頭に立って深淵へと急速に沈み込んでいった。一方、サムの進行速度は遥かに緩やかで落ち着いたものだった。泳ぎの技術は未熟だったが、彼は完全に冷静だった。この戦略における自身の役割を百も承知していたからだ。彼は「餌」であり、「盾」であり、そして「剣」だった。


待ち時間は長くなかった。湖の最も昏い深淵から、巨大な影が恐るべき速度で浮上してきた。マグマの光を反射して鋭利な牙を剥き出しにした巨大魚が、直線的に、リョウの肉体を目がけて突撃してくる。


しかし、全ては計算通りだった。完璧なタイミングでリョウは急速に軌道を修正し、急旋回して怪物の進路から外れた。怪魚は自身の慣性に引っ張られ、減速することなく、そのままサムが位置する場所へと真っ直ぐに突進した。


リョウがアーティファクトを追って深淵の闇へと消え去る中、水中へと取り残されたサムは、眼前に迫る怪物へ視線を固定した。新しい大剣の柄へと手を伸ばし、最初の、そして避けることのできない大激突を受け止めるべく精神を研ぎ澄ます。


――ドオォォォォン!!


水中での衝突音は凄まじかった。サムの新調された大剣が怪魚の顎へと真っ向から激突し、その強烈な一撃は怪物の頭部を右ストレートのように激しく揺さぶった。激怒した番人は即座にその身体を回転させ、猛烈な尾鰭の制裁を叩き込んだ。その衝撃でサムの身体は弾き飛ばされ、岩壁へと一直線に吹き飛ばされる。それは先ほど、リョウが窮地に陥ったあの危険な状況の再現だった。


だが、サムは背後からの衝撃で肉体を粉砕されるような男ではなかった。驚異的な反射神経で水中で身体を反転させ、両手両足を岩肌に突き立てて衝撃を完璧に吸収した。怪魚は一瞬の猶予も与えず、超高速で再び突撃してくる。サムは岩壁を力強く蹴り、怪物へと真っ向から跳び出しながら、脳裏にある確信を走らせた。


サム:(もし、この場所に関するリョウの仮説が正しいのなら……水中だろうと、僕の「炎」が点火できない道理はないッ!!)


魔力を練り上げ、サムは自身の出力を限界まで引き上げた。彼の蒼いオーラが水中であら割れんばかりに爆発し、怪物の驚愕を誘うように、新しい大剣の刃が水によって消されることのない、生きた火炎となって激しく燃え上がった。俊敏な身のこなしで怪魚の顎をかわしたサムは、その背中へと位置取り、一閃の燃え盛る斬撃で背鰭せびれを完全に叩き斬った。


怪魚は水中特有の、くぐもった痛みの悲鳴を上げた。そして盲目の狂気とともに、彼を喰らい尽くそうと反転する。回避する空間がないと悟ったサムは、その正面突破を真っ向から迎え撃った。最後の数ミリ秒の極限において、彼は大剣を怪物の片目へと正確に突き立て、その視界を完全に奪い去った。


獲物が悶絶する隙を逃さず、サムはその巨体に強固にしがみついた。そして、肉を融解させるほどの極限の火炎の熱と、新たな肉体から湧き出る膂力りょりょくを利用し、刃を怪魚の脇腹から尾に向けて一気に引き裂いた。それは、怪物の腹部を完全に両断する壊滅的な一撃となった。


巨大な怪魚は、激しい絶命の苦悶の中で悶絶し始めた。大量の鮮血を撒き散らしながら、水中を激しく振動させるくぐもった咆哮を上げ、鰭を激しく動かす。サムはそれが、深淵に潜む「群れ」への救援信号であると本能的に察知した。時間を無駄にすることなく、サムは怪物へと猛烈に泳ぎ寄り、最後の一閃のクリーンな斬撃でその巨体を真っ二つに叩き斬った。血の濁流が湖を濃い赤色へと染め上げる中、番人の生命の灯火は完全に掻き消えた。


酸素の枯渇で肺が焼き切れるような痛みを覚えながら、サムは水面を目指して力強く足を蹴った。


サム:「はっ……ぁぁぁっ! ふぅ、ふぅ……っ!」


水面を割り、大洞窟の生暖かい水を漂いながら、サムは必死に空気を貪った。

日本の皆様、そして私の大好きな国である日本でこの作品を読んでくださっている皆様、おはようございます。今日も皆様にとって素晴らしい一日になりますように、心からお祈り申し上げます。


いつも作品を読んでくださり、本当にありがとうございます。ここで皆様に一つ大切なお知らせがございます。実は、この『Dual Rebirth』の第1巻は、残り5エピソードで完全に完結いたします。


そこで、第1巻の結末を迎えた際には、最後まで読んでくださった皆様の率直なご意見やご感想をぜひお聞かせいただきたいと思っております。「ここをもっと改善してほしい」といったご指摘や、「こういう要素を追加してほしい」というご要望があれば、ぜひ教えてください。皆様のコメントにはすべて目を通し fluid に、今後の物語の中で間接的な形でうまく組み込んでいけないか、しっかりと検討させていただきます。

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