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デュアルリバース (Dual Rebirth)  作者: 善悪 亮 (Ryo Zenaku)
第1章 第2部:「戦略を組み立てる刻」
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第1巻・第2部 未知なる力が、君の中に流れ込む エピソード4・第2分冊

どうやらリョウは見かけほど弱くはなく、人間の仮面の裏にその力を隠しているようだ

一方、別の一角では――

黒い砂浜に打ち寄せる水の、静かなせせらぎ。それが、リョウの意識を覚醒へと連れ戻した最初の感覚だった。重い瞼を辛うじて開くと、マグマの死に絶えゆく残光の下で、彼のオッドアイが微かに光を反射した。超人的な意志の力でゆっくりと上体を起こしたが、身体はまるで鉛の塊のように重く、蓄積された疲労のせいで全ての筋肉が悲鳴を上げていた。


彼はしばらくの間その場に座り込み、指の隙間からこぼれ落ちていく暗い砂粒を、虚ろな眼差しで見つめていた。


リョウ:「自分がどこにいるのかも、ましてやここから脱出する方法も分からない。それでも……目的は果たさなければならない。だが、肉体が思うように動かないな。クソッ、片付けなければならない課題タスクが山積みだというのに。その中には、サムと合流することも含まれている」


己の強靭な精神力を誇示するように、リョウはふらつきながらも立ち上がり、どうにか均衡を保った。彼の視線は湖の水面へと釘付けになる。巨大な怪魚の襲撃が嘘だったかのように、今は奇妙なほど静まり返っていた。


リョウ:「この場所に足を踏み入れた瞬間から、大気が魔力マナで飽和しているのを感じていた。だが、何かがそれを絶え間なく削り取っている。だから私の魔力はこれほど早く枯渇したのだ。ということは、あの森で時空の歪みを引き起こしている原因のアーティファクトは、間違いなくこの下――この湖の底にある」


彼は眉をひそめ、いつもの冷徹な論理思考で危険性を評価した。


リョウ:「現在の最大の障壁は、あの巨大な魚だ。深淵にどれほどの怪物が潜んでいるかも分からない。それに、正確な水深すら不明だ。私の肺が、魔法のように水中でも機能してくれるわけではないからな」


腕を組み、状況のあらゆるパラメーターを分析する。戦略家としての頭脳が脱出経路や不測の事態への備え(プランB)を弾き出していくが、導き出される結論は常に同じだった。


単独での安全な遂行は不可能である、と。


リョウ:「まずは体力を少しでも回復させる術を試し、それからサムとの合流手段を模索する。彼の協力があれば、あのアーティファクトを破壊できる。もし単独で決行してここが崩落し始めれば、サムが脱出する前にトンネルが崩れる可能性がある。何が起きているかも知らぬまま、彼の頭上に天井が崩落するようなリスクは冒せない……。それが単なる可能性に過ぎないとしても、不必要な危険だ」


リョウは次の行動に必要な正確な魔力量を計算しながら、上方へと続く道や、相棒の形跡を探して岸辺を歩き始めた。


リョウは脱出路を探す前に、己の限界を試験することを決意した。溶岩湖の縁へと近づき、極寒の水に踵を浸すと、正確に三秒間だけ目を閉じた。目を開けた瞬間、周囲の大気が一変した。彼の左の虹彩の中で、赤の色彩が爆発的に跳ね上がり、そこへ「滅」の文字が、脅迫的な輝きを帯びて刻印された。


刹那、彼を縛っていた疲労の重圧が霧散し、全身に力が満ち溢れていくのを実感した。


リョウ:「長くは維持できないな……。ほんの試行(実験)に過ぎん」


躊躇うことなく、彼は湖へと身を投じた。水の暗黒が彼を包み込んだ直後、底知れぬ深淵から、あの怪魚の巨大な影が彼を目がけて急浮上してきた。リョウは退かなかった。真っ向から、怪物の進路へと突き進む。ミリ単位の精密さで、凄まじい音を立てて閉じられた顎を回避すると、巨体が通り過ぎる寸前、猛烈な力でその尾鰭おひれにしがみついた。そして、肉体を固定するためのアンカー代わりに、分厚い組織へと剣を深く突き立てた。


激怒した怪魚は、猛烈な一閃の尾を振るった。その衝撃でリョウの身体は引き剥がされ、水中へと弾き飛ばされる。捕食者は即座に自転して軸を戻し、再び突撃してきた。リョウは剣を両手で構え、怪魚の顔面が目前に迫った瞬間、人間業とは思えぬ怪力で渾身の唐竹割りを叩き込んだ。


凄まじい衝撃により、怪魚の軌道は底へと叩き落とされた。しかし、リョウの腕には不快な振動と激痛が走った。あの怪物の鱗は、理不尽なほどに強固だった。彼が構え直すよりも早く、水中での圧倒的な機動力を活かした怪魚の体当たりが、リョウの肉体を水没した岩壁へと容赦なく叩きつけた。


リョウ:(これ以上は無理だ……。早く離脱しなければ)


水中、彼の唇から一筋の血の泡が漏れ出た。傷の血臭を嗅ぎつけた怪魚が、最後の致命的な正面突撃を仕掛けてくる。リョウは壁を蹴った推進力を利用して再度それをかわし、怪物の脇腹へと剣を突き刺した。しかし、刃は天然の装甲に阻まれ、数センチほど浅く食い込んだだけで無情にも滑り落ちた。


現在の状態ではこの戦闘に勝利できないと悟り、リョウは残された全ての力を振り絞って水面へと泳ぎ上がった。彼の瞳に宿る「滅」の文字の輝きが薄れていく。怪魚の顎が彼の足首を捉えるまで、あと数センチという極限の猶予。リョウは間一髪で水面から飛び出し、黒い砂の上へと転がり込んだ。


獲物を逃した魔物は、怒りに任せて岸辺を激しく叩いた後、再び闇の奥へと沈んでいった。黒い砂浜に膝をついたリョウは、激しく咳き込み、地面を汚すほどの鮮血を吐き出した。あの「文字( kanji )」の力は絶対的だが、人間の肉体に要求する代償は、あまりにも壊滅的だった。


リョウ:「……高すぎる代償だな」制御を失ってガクガクと震える筋肉を抑え、口元の血を拭いながら、彼は微かに呟いた。「やはり……私には、サムが必要だ」


その瞬間、激しく揺らめく溶岩の残光によって切り取られた、一人のシルエットがリョウの頭上に投影された。上空から、聞き馴染んだ声が洞窟の静寂を破った。

「――僕の手が必要かい?」

リョウが目の前に立つ人物へと視線を上げると、その唇には、心の底からの、本物の安堵を宿した笑みが浮かんでいた。

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