第1巻・第2部『深き深淵の闇』|エピソード2・第1分冊
下るべきは、昏き深淵。だが、わずかな狂いがすべてを破滅へと導く
リョウとサムは洞窟の奥深くへと下り続けていた。トンネルを駆け下りる二人の足音が、規則正しく響き渡る。加速するにつれて空気は重くなり、風が耳元でうなりを上げた。
サム:「おい、リョウ……もしあの魔物たちが本当にここで何かを探していたんだとしたら、一体何だと思う?」
リョウ:「さあな。だが、誰かにとってとてつもなく価値のあるものである可能性は高い。とにかく、今は任務だけに集中したい。余計なことを考えている暇はないぞ」
サム:「あぁ、お前の言う通りだ。まずは目の前のことから、だな」
進むにつれて、足場は一段と険しさを増していった。先ほどまでの平坦な道は、不規則に突き出た岩の迷路へと姿を変え、進み続けるには正確に岩から岩へと跳び移る必要があった。傾斜はますます急になり、ついにトンネルは唐突に途切れ、闇の底へと消える垂直の深淵へと変わった。
二人は崖の縁で急停止した。もう跳び移るべき岩はなく、目の前には完全な虚無だけが広がっている。
リョウは目を細め、石壁を分析した。数メートル先、そしてさらに数メートル下に、小さな裂け目を見つけた。岩肌に埋め込まれたその黒い穴は、別の階層へと続いているようだった。橋もなければ、足場もない。それは、壁の小さな穴へと正確に狙いを定める、暗闇への「決死の跳躍」だった。
リョウは、終わりなきに見えるその深淵を見つめていた。その暗黒の喉口は、縁から滑り落ちるあらゆるものを飲み込もうと待ち構えている。わずかな計算ミス、最後の1ミリ秒でのスリップ、あるいは予期せぬ突風。それだけで、二人のどちらかは永遠の闇へと真っ逆さまに落ちていく。底にあるのが岩の地面なのか、それとも虚無の中での緩やかな死なのかすら分からぬまま。リョウは立ち上がり、その崩れない無表情は、相棒の顔に浮かび始めた混乱とは対照的だった。
リョウ:「跳ぶしかない。他の選択肢はないぞ、サム」
サムは一歩後退した。胃袋を物理的に殴られたかのような激しい眩暈が彼を襲う。パニックが一瞬にして彼を支配した。リョウの言葉は、自殺志願者の狂気にしか聞こえなかった。
サム:「いや、無理だ、無理無理! 届きっこないよ、リョウ! そんなの、僕にはそんな勇気ない……足がすくんで動かないんだ……絶対に無理だ!」
リョウはサムの恐怖が伝染するのを許さなかった。一歩前に出ると、サムの両頬を力強く掴み、その冷徹で計算高い瞳を無理やり相棒の目へと釘付けにした。リョウの眼差しには微塵の迷いもなく、ただ燃え盛るような決意だけがあった。
リョウ:「おい、しっかりしろ、サム。よく聞け。ここまで来て、今さら怖気づくんじゃない。お前が先に行け、俺がすぐ後ろに続く。もし万が一、お前が失敗して虚無に落ちたら、俺がすぐに後を追って空中でお前を捕まえてやる。お前一人を落としはしない。分かったか?」
サムは震えていた。リョウが本気で言っているのは分かっていたが、落下への恐怖はあまりにも高い壁だった。しかし、後ろを振り返り、あの少女や奴隷たち、そしてこれまで歩んできた道を思い出した時、ここに留まることは緩やかな死を意味するのだと理解した。
彼は冷たい洞窟の空気を肺いっぱいに吸い込み、胸の奥まで冷やしながら、緊張を吐き出すように強く息を吐いた。そして、次の瞬間には何も考えず、虚無へと身体を投げ出した。
滞空の瞬間、サムの心臓は止まっていた。それは見事な跳躍であり、深淵の暗闇を切り裂く完璧な放物線を描いた。幸運にも、あるいは運命がまだ彼に役割を残していたのか、サムは下の小さな洞窟の入り口へと見事に着地した。衝撃を逃がすために岩の床を転がり、すぐに勢いよく立ち上がる。
脈拍は跳ね上がり、アドレナリンが全身を駆け巡る中、サムは新しいトンネルの縁から身を乗り出した。そして、深淵の轟音にかき消されぬよう、大声でリョウに向かって叫んだ。
サム:「成功したよ! リョウ、僕は大丈夫だ! スペースは十分ある、今すぐ跳べ!」
サムはそこで息を止めた。次はリョウの番だった。サムとは違い、リョウが失敗した時に後を追ってくれる者は誰もいない。今度は、この戦略家が、己の自信が単なる他者を安心させるための仮面ではないことを証明する番だった。
リョウは湿気を含んだ極寒の空気を最後に一度だけ吸い込み、肋骨を打ち鳴らす心臓の鼓動をねじ伏せようとした。数歩下がり、サムが待つ正確な一点に視線を定めると、猛烈な決意とともに走り出した。彼の足は力強く地面を捉えた。しかし、本当に最後の1ミリ秒、右足が虚無へと身体を押し出すための爆発的な力を加えるべきその瞬間、太ももを激しい痙攣が襲った。蓄積された疲労、オーガとの死闘による緊張、そしてこの新しい肉体の身体的な消耗が、最悪のタイミングで代償を要求したのだ。
リョウ:「くっ……!」
身体が浮き上がると同時に、不条理への呻きが唇から漏れた。
跳躍は弱く、放物線は途中で途切れた。リョウはトンネルの内部へと飛び込むことはできず、岩の突き出た縁の下側に激しく激突した。彼の両手は必死に掴める場所を探し、指先を岩の割れ目に突き立てることで、かろうじて絶対的な暗黒の上にとどまった。顔を真っ青にし、目を見開いたサムが、全力を振り絞って腕を伸ばし、前方へと身を乗り出す。
サム:「リョウ! 手を! 強く掴まるんだ!」
リョウは身体を引き上げようとしたが、筋肉は一切反応しなかった。寒さで感覚を失い、汗と乾いた血液の薄い膜に覆われた指先が、滑らかな岩肌を1センチ、また1センチと滑り落ちていく。彼の瞳が一瞬だけサムの瞳と交わった。その眼差しは、驚きから、冷徹な「受容」へと変わっていた。重力が彼を支配していく中、苦々しい内なる声が脳裏に響いた。
リョウ:(クソッ……限界か。ミスを補うだけの出力が出せなかった……これが、この脆弱で制限だらけの『人間の肉体』に宿った代償だというのか……!)
ついに摩擦が限界を迎えた。指先が静かに岩の縁を離れる。リョウは垂直に落下し、二人が洞窟に足を踏み入れたその瞬間から待ち構えていたかのような、暗黒の深淵へと飲み込まれていった。彼の姿は数秒で小さくなり、やがて虚無の中へと消え去る影となった。
サム:「リョウーーーーーーーーーーーッ!!」
サムの叫びが洞窟の空気を引き裂いた。純粋な恐怖に満ちたその絶叫は、石壁に何度も跳ね返り、永遠の残響となった。彼は腕を虚無へと伸ばしたまま、相棒が消えていった深い闇を凝視し、硬直していた。その後に訪れた沈黙は耐え難いほど重く、あらゆる希望を圧殺した。サムは崖の縁に膝から崩れ落ち、返事のない虚無に向かって、掠れた声で何度も何度も相棒の名前を呼び続けた。
リョウの姿は深淵の絶対的な暗闇に完全に捕らえられ、深い静寂の中に消える、取るに足らない一つの点となった。
その同じ瞬間、何キロも離れた、全く異なる空の下で、ヴィクトルは激しく身体を跳ね上げさせた。不穏な混乱を宿したその目がカッと見開かれ、彼は己の胸に手を当てた。鈍く、凍りつくような鼓動が心臓を突き刺していた。まるで、内なる見えない糸が、限界まで張り詰められた末に、ぷつりと千切れてしまったかのように。




