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デュアルリバース 転生. (Dual Rebirth)   作者: 善悪 亮 (Ryo Zenaku)
「春日血統の影」ブロック5
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「教えて、なぜ……」第100話 ブロック5

「そしてこれにて、『デュアル・リバース』第100話となります。どうぞお楽しみください」



アカデミーの中庭を包んでいた時間は、窒息するほどの重みを持って過ぎ去っていった。ジュリアンの足音の残響はとうに消え失せ、高窓に打ち付ける首都の冷たい風の遠くで軋む音だけが、この場に残された唯一の静寂を破っていた。


この時、この敷地内に残された魂はシドただ一人であった。冷たい石の床に屈み込み、午後の破壊的な炎の魔力実習によって撒き散らされた炭化した木片と灰の残骸を、黙々と掃き集めていた。その無骨で煤に汚れた手は機械的な精度で動き、母の待つ家へと帰る前にこの場所を完璧に片付けようとしていた。


最後のひと動作で、地面に残っていた最後の炭の塊を拾い上げ、金属のバケツへと放り込むと、シドは肉体的な疲労から深い溜息を吐き出し、ゆっくりと上体を起こして背筋を伸ばした。


シド:「――ふぅ……これで終わりか。二度と終わらないかと思ったぞ」


彼は前腕の甲で額の汗を拭いながら、独りごちた。


だが、バケツを抱えて出口へと身を翻そうとした瞬間、敷き詰められた砂利の上で微かな足音が響いた。それはただの気の抜けた学生の足音ではない。重く、意図的で、冷徹なまでの形式張った足音だった。


誰かの気配を察知し、シドの動きがピタリと止まる。彼はゆっくりと胴体をひねり、こんな時間に誰が近づいてくるのかを確認しようとした。


側廊の暗がりから現れたのは、他でもない魔法戦闘の講師であった。アーチをくぐり抜けて差し込む夕暮れのオレンジ色の光が、彼女の厳格なシルエットを縁取っていたが、シドの血を凍らせたのはその表情だった。いつもの講師としての無機質な中立さは消え失せ、そこにあったのは、硬直した官僚的な無関心と、冷酷なまでの距離感を孕んだ不吉な知らせであった。


シドはそこに彼女がいることに困惑しながらも瞬きをし、ぎこちなくも礼儀正しい穏やかな笑みを浮かべてわずかに頭を下げた。


シド:「あ……先生。こんにちは、こんな時間にどうされたんですか?」


少年はいつもの親しみを込めてそう尋ねた。


講師は彼の挨拶にすぐには答えなかった。冷徹で機械的な動作で、灰色のチュニックの合わせ目から、アカデミーの理事長の公式な銀色の紋章が押された純白の封筒を取り出した。それを真正面から差し出し、シドに受け取るための足一歩を踏み出させた。


その瞬間、空気中の緊張感は呼吸すらも躊躇わせるほどに濃厚になった。中庭の静寂は、耳をつんざくような真空へと変貌した。


講師は彼の目を直視し、一切の共感を削ぎ落とした、切り捨てるような声で告げた。


講師:「聞きなさい、シド……理事長からの直接の命令よ。もうここで働く必要はないわ。あなたは解雇されたの。即日付けでね」


少年の世界は、その一瞬で停止した。


講師の言葉は、まるで鉄のハンマーのように彼の頭上に叩きつけられた。シドは目を見開いたまま完全に硬直し、耳にした現実の意味を理解することができなかった。彼の脳は必死にピースを組み立てようとしたが、それを拒絶していた。


(解雇……? 何を言ってるんだ? 僕はいつも言われた通りに仕事を……)


その衝撃は肉体的なレベルでも暴力的に作用し、手の筋肉から一瞬にして全ての力が抜け落ちた。指が勝手に開き、炭で満たされた金属のバケツが手から滑り落ち、鈍い金属音を立てて地面に激突した。綺麗に掃除し終えたばかりの床に、何時間もかけて片付けたはずの汚れと埃、そして黒い残骸が再び盛大にぶちまけられた。


シドはその場に突っ立ったまま、口を半開きにして呆然とした。冴えていたはずの思考は、突如として暗く制御不能な感情の渦に飲み込まれていた。恐怖、不安、混乱、そしてどうしようもない理不尽さが、背骨の底から彼を打ち震えさせた。全身の産毛が逆立ち、冷たいアドレナリンが皮膚の表面を駆け抜けるような、あまりにも生々しい恐怖が彼の感覚を支配した。


絞り出されたのは、あまりにも短く、空中に溶けて消えるようなか細い掠れ声だった。


シド:「……え……?」


少年の呆然自失とした反応を目にし、機関のプロトコルを汚すようなドラマ的茶番を防ぎたい講師は、さらにそのトーンを硬化させ、彼らの間に決して越えられない壁を築いた。


講師:「残念だけど、シド。上からの直接の指示よ、議論の余地はないわ。これが今月ここまでの労働に対する給与よ。これまでのサービスには感謝するけれど、今すぐここから立ち去りなさい……さもなければ、衛兵を呼んで力尽くでもこの敷地から叩き出すことになるわよ」


その最後の脅しが、シドのシステムにとっての電気ショックのように作用した。衛兵、スキャンダル、上流階級の面前で打ち据えられ、消えない烙印を押されるかもしれないという可能性は、彼の内側にあったささやかな反逆心を完全に溶かした。その時の彼には、貴族学校という不都合なシステムに対して言語的あるいは物理的な戦いを挑むだけの気力も精神も残されていなかった。これ以上事態を悪化させるわけにはいかなかった。母親は、彼がここで稼ぐわずかな賃金に頼りきっていたのだ。


喉の奥で膨れ上がった巨大な塊を無理やり飲み込み、怒りと無力感の涙が薄茶色の瞳から溢れ出そうになるのを感じながら、シドに残されていた唯一の鎧――強制された服従をもって彼はそれに応じた。


震える手で短く尖ったピンク色の髪を撫で上げ、ポーカーフェイスを作ろうとしながら、空虚で震える愛想笑いを顔に張り付けた。


シド:「へへっ……分かりました、先生……じゃあ……これまでの機会をいただけたこと、本当に感謝してます。それじゃあ……失礼します」


彼は一歩下がり、深く丁寧な一礼を捧げた。情け容赦なく切り捨てるこの世界のルールに、最期の瞬間まで従いながら。


そして、彼は踵を返した。


ひっくり返ったバケツも、もう片付ける必要のない散らかったゴミも、アカデミーでの儚い未来の残骸も、すべて背後に置いていった。講師はその場に微動だにせず立ち尽くし、引き裂かれた尊厳を引きずりながらゆっくりと遠ざかっていく少年の背中を静かに見つめていた。


シドは広大な訓練用の中庭を抜け、外へと続く石畳の小道を通り、最終的にアカデミーの威圧的な鉄格子の正門へとたどり着いた。門番の男は無関心で冷淡な視線を向けたまま、重いレバーを引き下げた。鈍い音を立てて機械的なロックが外れ、彼一人を通り抜けさせるだけの隙間が門に開いた。


一度たりとも振り返ることなく、シドはその境界線の向こう側へと踏み出した。彼の背後で、重々しく金属的な決定打となる音が響き、門が閉ざされた。彼は公式に外へと放り出され、首都の冷たく霧に煙る街路のただ中に、たった一人で置き去りにされた。


時間は処刑の遅々とした歩みのように過ぎ去っていった。霧と冷たい夕暮れに包まれた首都の街路を、シドは宛てもなく歩いていた。


肉体は純粋な惰性で動いていたが、その魂は完全に空っぽだった。顔は救いようがなく俯き、その表情は死人のように生気の輝きを失っていた。一歩一歩が目に見えない鉛の鎖を引きずるように重く、丸まった肩と頭は数トンの重みがあるかのように彼の首にのしかかり、空の全てが自分の上に崩れ落ちてきたかのようだった。解雇の言葉が頭の中で無限ループのように反響し、彼の希望の残りカスをすり潰していた。


シド:「どうして……だよ……」


彼は掠れた、ほとんど聞き取れない声を空気に吐き出した。


石畳の歩道を彼はゆっくりと進んでいた。腕をしっかり保つ気力すらもはや残されておらず、両腕は両脇にぐったりと垂れ下がり、不格好に引きずる足の歩幅に合わせて揺れるだけだった。


再び唇を開き、彼は聾者(のうしゃ)のような世界に向けた絶望的な問い、押し殺した悲痛な叫びを漏らした。


シド:「なんでだ……? 言われた通りに文句も言えず、頭を下げて、みんなに踏みにじられるがままにしてきたのに、どうして何も報われないんだ……? どうしてこんなクソみたいな貴族なんてものが存在しなきゃならないんだ……?」


あまりにも激しい詰まりが彼の喉を襲い、呼吸を断ち切った。かつて静かな決意に満ちていた彼の瞳は今や、堪えきれない涙の苦い熱で焦げ付いていた。足がもつれ、胸が耐え難い痛みで締め付けられ、自分に依存しているたった一人の人間のことを思うと、最も暗い罪悪感が彼の内側を蝕み始めた。


シド:「もう疲れたよ……これ以上は無理だ……母さん、ごめん……役立たずでごめんよ……」


煤に汚れた頬を最初の冷たい涙が伝う中、彼は完全に心が折れた痛切な囁きとともに崩れ落ちた。


どうやってたどり着いたのか、彼の足は小さなパブリック・スクエア(広場)へと引き寄せられていた。そこには、すり減った石造りの噴水が単調な音を立てて水を零し、その周囲には暗い木製のベンチが並んでいた。これ以上一歩も進む力のないまま、シドはその一つの上にどさりと重く崩れ落ちた。


彼の周囲では、家路を急ぐ人々の遠いざわめき、絶え間ない水の滴り落ちる音、そして石畳を染める夕暮れの冷たく死にかかったオレンジ色の光だけが、崩壊していく世界の中で際立っていた。


シドは完全に体を丸めた。両膝にしっかりと肘をつき、顔を両手の中に埋め、左手の指で退職金が包まれた皺だらけの白い封筒を必死に握りしめた。頭の重みを預け、石の床に向かって再び呟きながら、彼は音のない泣き声へと砕け散った。


シド:「どうしてなんだ……誰か理由を教えてくれよ……頼むから、どうしてこんなことを俺たちにするんだ……っ……!」


どうして……?


自分の声の残響が唐突にかき消された。そのまさに瞬間、一人のシルエットが彼と夕暮れの最後のオレンジ色の光の間に割り込んだ。暖かく、細身で、見覚えのある影が彼をすっぽりと包み込み、夕方の冷たいそよ風を遮った。


シドは息を呑んだ。直ちに顔を上げるにはあまりにも怯えすぎており、それが衛兵や自分をトドメを刺そうとする貴族の誰かではないかと恐れていた。だがその時、自分自身のものと寸分違わぬ震えで引き裂かれた、聞き覚えのある女性の声が、影の向こう側からあえて彼に語りかけた。


カスガ・サユリ:「――どうして、って……? 私たちがあまりにも正しくあろうとしたからよ……頭を下げ、唾を飲み込み、この腐った場所で生き残るためならどんな屈辱も耐え抜いてきた。でもね、現実は……私たちがどれだけ足掻いたって、貴族たちにとって私たちの命なんて最初からちっとも価値なんてなかったのよ」


シドは、痛みで縮こまった魂を抱えながら、目の前に誰がいるのかを確認するためにゆっくりと顔を上げた。


そこに彼女がいた。


夕暮れの消えゆく光の中で、彼は彼女が立っているのを見た。彼と全く同じトーンの、長く美しいピンク色の髪が彼女の肩に柔らかく流れ落ち、通常であれば間違いなく心臓を高鳴らせるであろう繊細で美しい顔立ちを縁取っていた。だが、その瞬間に際立っていたのは美しさではなく、彼女が彼を見つめるその表情だった。それは無限の優しさ、忍耐、そしてあらゆる装甲を貫通する深い理解が入り混じったものだった。


カスガ・サユリ:「――どうして……?」


彼女は自身の涙を堪えながら、柔らかい声で繰り返した。


カスガ・サユリ:「――それでも私たちは立ち上がり、前へ進む。何度踏みにじられようとも、一歩進むごとに魂が引き裂かれるような痛みがあろうとも……どうして私たちはそうするの? それが私たちだからよ。最後まで、とことん、どうしようもなく頑固で、この世界の何にだって屈してなんかやらないからよ」


シドは唇を震わせながら彼女をじっと見つめた。その正確な瞬間、彼が抑え込もうと必死だった涙のダムが崩壊し、煤に汚れた目から制御不能に涙が溢れ出た。


雷に打たれたような強烈な衝撃が彼を襲った。出会った当初、シドが彼女に見出すことができたのは、その深く輝く美しい青い瞳だけだった。だが今、この深い悲しみと幻滅のただ中で、奇妙なことが起きた。彼女の目を見つめた時、彼は壊れ果てた自分自身の魂の正確な反射を見たのだった。


それは、まるで二面鏡が暗闇の中で互いを見つめ合っているかのようだった。最初、その鏡は何色をしていてどんな形をしているのかを知らなかった。だが、互いの姿を映し出すことによって、自分たちが完全に同じものであることを理解したのだ。シドの瞳は計り知れない痛み、悲しみ、そして純粋な屈辱を映し出していたが……それはサユリの瞳にも鮮明に映し出されていた。だが同時に、彼女の瞳の奥底を覗き込んだ時、彼女もまた同じ感情、同じ重み、そして同じ嵐を共有していることに気づいたのだった。


彼を窒息させる結び目を抑えきれず、シドは感情的に崩壊し、引き裂かれた声で彼女に答えた。


シド:「分からない……こんなにも厳しいんだ……この数年間ずっと必死にもがいてきた、だからこそ人生はこんなにも容赦なく僕を叩きのめしてきたんだ。馬鹿みたいに、頑固で、融通が利かなくてさ。もう何も信じられないよ……物事は良くなると、いつかここから這い上がれるって信じすぎて、結局今の場所に縛られたままだ。限界を超えて、限界のその先まで必死に努力したのに、何一つ成し遂げられなかった……! それが本当の『どうして』じゃない……僕が知りたいのは、そんなことじゃないんだ。どうしてこんな悪いことばかりが起きるのかの理由なんてどうでもいい……俺が知りたいのは、なんでそんなに失敗すると分かっているのに、それでもまだ諦めずに続けようとしちまうのかってことなんだよ……」


サユリは完全に沈黙したまま、慈悲と痛みの入り混じった表情で彼を見つめていた。


おそらく、外から聞いていた者にとっては、それは完全な自己矛盾に聞こえたかもしれない。彼は自分の苦しみの理由を求めていなかったのか? もしかしたらそうだったのかもしれない。だが、その現実の答えがあまりにも明白であり、彼の存在の最も深いところで彼自身がすでに知っていた痛ましい真実だった――この世界は完全なクソ溜めだった。それは足の裏から決して抜けない棘であり、人生がいかに残酷で屈辱的であるかを絶えず思い出させる存在だった。シドはそれを痛いほどよく知っており、サユリはそれ以上に深く理解していた。


涙で濡れて輝く瞳のまま、サユリはさらに一歩前へと踏み出し、しっかりと力強くその右手を差し出した。


カスガ・サユリ:「――あなたの言う通りよ……私たちがなぜこんな馬鹿なことを続けているのか、その正確な理由なんて分からないかもしれない。こんな十字架を背負い続けるだけの価値がどこにあるのかもね。だけど、もし私たちがどうして前へ進み続けるのか、その理由を一つ言わなければならないとしたら……私はこう答えるわ。ずっと昔に気づいたから……ダイヤモンドは、極限のプレッシャーの下でしか形作られないってことよ」


その言葉を聞いた瞬間、シドは大きく目を見開いた。そのフレーズは、彼の心の中の暗闇の真ん中に投げ込まれた白熱の火花のように落ちた。恐怖と絶望を焼き払い、頑なで温かな炎が突如として彼の内側に灯った。


彼はサユリの差し出された手と、そしてその顔をじっと見つめた。そこには、あらゆる痛みを抱えながらも、純粋で輝かしい、紛うことなき本物の笑みが浮かんでいた。それ以上迷うことなく、シドは手を伸ばし、彼女の手を力強く、しっかりと握りしめた。


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