宴席で存在と威厳を示すアクアスカイ女神
会場に女王陛下と侍女のメルツーチベールさんを転移で連れて来ただけなのに私は床に倒れていた。
「リット。左目に痣が出来てるですよ」
「何故なんでしょうか?」
「女王陛下が転移の最中に『一秒が長い』と、殴っていたです」
「ご無体な。物理的に無理な事ですよ」
「時間を殴れないので怒りの矛先がリットの顔面だったのです」
そのクールシャインナ・フラーナス女王陛下は着くやいなや私を突き飛ばし、大泣き状態で母に抱き着いては胸を叩きを繰り返していた。
侍女のメルツーチベールさんはその横でザイココットエー様と共にハンカチで顔を覆って泣いている。
母は女王陛下の髪を撫で、髪にキスをして宥めた。
会話ができるまでになった女王陛下は母に促され、演台の椅子に座っているアクアスカイ女神様に挨拶をした。
「リット。起きて座って見るです」
私は正座をしてファーナが肩に乗った。目線の先を見て。
「うん。えっ?」
「エルフも創世のアクアスカイ女神様の眷属なのです。手の甲にキスをして妖精の妖力を分けて貰ったですよ」
「だから体がほんのり光っているの」
「です」
「クールシャインナ・フラーナス女王陛下がこっちに来たよ。
えっ?傅いちゃったよ」
「ファーナ様。先程は取り乱し、大変ご無礼を致しました。申し訳ございません」
「いいですよ。再会できて良かったです」
「はい。これもひとえにイルリットちゃん・・失礼。イルリット様の。そしてファーナ様のお力添えあっての事と思います。
ありがとうございました」
「わたくしは何も
肩のファーナが耳元で囁くように。
「リット。そこは謙遜するところではありませんよ」
「そうだね。
クールシャインナ・フラーナス女王陛下、これからもよろしくお願いします」
「はい。使徒様であらせられる、イルリット様の死ぬ気の努力を陰ながら、お力添えを致します」
「えぇぇ?」
「リットが頑張らないと母様は地上に戻って来られないですよ。
先程アクアスカイ女神様がそう仰っていたです。嬉しくて聞いていませんでしたか?」
「いやあのその」
「ご理解できていますよねっ。頑張りましょうねっ」
「は はぁぁ」
(何故か土下座をしてしまった)
「イルリット」
「はい。お母様」
「何時までも土下座をしていないで、皆様をお連れしなさい。顔がもたないわよ」
「リット行くですぅぅ」
「はいぃぃぃ」
その後、十三か国十六人と付き人が揃って、アクアスカイ女神様への挨拶と簡単な自己紹介を行い。
演台中央のアクアスカイ女神様が。
「皆さん。乾杯の音頭をわたくしアクアスカイが取らせていただきます。
皆様のこの良き出会いの場に幸多からんことを願って。
乾杯」
「「「「かんぱぁぁい」」」」
「ねぇ、ファーナ。この宴会って何になったの?
本来はわたしの元気な姿のお披露目会。だったような」
「完璧にアクアスカイ女神様の降臨祝賀会兼母様のお披露目会と化したのです。
そして、エルフと妖精の上位はアクアスカイ女神様であると知らしめたですよ」
「なるほどぉ。この場でLongVacationの穴を埋めよう。と」
「そうなるですね。
最短コースのTopDownを狙ったですよ」
「王様たちが認めたら、貴族が認める。そして国民へ。早いよね」
「開示の許可が下りたら、一瞬で広まるですよ。
ただ、リットの下地作りは欠かせないですよ。
使徒であるリットの動き次第ではアクアスカイ女神様が悪者になっちゃうですよ。
そうさせないために、母様が人質なのですよ」
「で ですよねぇぇ」
「リット主催となっていて、迎賓にアクアスカイ女神様と母様ですよ。
リット。この宴会の失敗は許されないですよ」
「そうなっちゃうよね」
「そうなっちゃうです」
「食材は十二分にあるからいいとして、一気に人が増えたためシェフター料理長は大変だろうなぁ」
「イルリット様。ご心配は無用ですよ」
「わぁ。びっくりした」
「ライニー侍従長さんなのです」
「お二人でひそひそ話ですか?
追及は止めておきましょう。
料理の方は問題はございませんよ」
「そうなんですか?」
「メルナ様やラーライナ様。ハロマイネとアルレシア、ロマネスも応援に行っています。
それにイルリット様の近衛兵隊と使用人の家族でマーリレス様に恩義を受けた者達です」
(返す必要は無いですよと、言える立場にはないですね)
「いつの間に?」
「イルリット様が各方面にお迎えに上がっている間にご挨拶も済ませています」
「ありがとうございます。ライニー侍従長。
そう言えばマードは?」
「何処にも居ないですよ」
「ファーナ様ご心配には及びませんよ。
既に食事も済ませ、アクアスカイ女神様の横のお花からこのテーブルのお花も全てマードが仕上げております。
嬉しくて泣いておりました。やっとイルリット殿下のお役に立てると。
『私の中ではいつまでも。いつまでもイルリット殿下』だそうですよ。
それで今は温室の方で皆様のお帰りの際の花束の準備をしていますよ。それはもう嬉しそうに」
「あ”っ」
「リット。頑張って直ぐに用意するですよ」
「おっ。おうっ・・・そうだ。おじ様とお爺様に聞いてみよう」
「おじ様、歓談の最中すみません」
「何だい?」
「お爺様もいいですか」
「孫が用事があるそうなので、少々失礼」
「どうぞ」
「お酒の試飲をお願いしたいのです。いいですか」
「改まってどうした。
ここのミードやワイン。エードは旨いぞ。何処で作っているのだ」
「おじ様、それは後程。試飲して欲しいのはこちらです」
「素晴らしく美しいグラスだな。見た事が無いぞ」
「ブランデーグラスと言います。ほんの少し唇に付ける程度で舐めてみて下さい」
「良い香りじゃな。少々アルコールが強めか。どれ」
「「んんんんん?」」
「わたしは、お酒の味が全く解からないので」
「「旨い」」
「そうですかぁ良かったぁぁ」
「わしにいくらで売る」
「私にいくらで売る」
「まだ販売できる段階に至っていません。
先ずはアクアスカイ女神様に献上しようかと思っています。
ささやかではありますが、母を蘇らせてくださったお礼にと。
如何でしょうか」
「それは名案だ。これならばお歓びになると思うぞ」
「私も同意見だ。グラスと共に献上するとなお、お歓びになると思うぞ」
「そちらは差し上げます」
「「リットちゃぁぁん」」
「イルリット」
(お母様ぁ。おば様とお婆様の目が・・)
「クールシャインナ女王陛下の分も含めて四個置いて行きます。収納に仕舞ってくださいね。非常にもろいので」
「「「お酒は?」」」
「このハーフボトルでお許しください」
「「「行ってらっしゃぁぁい」」」
「はい」
(なんか複雑な気分)
アクアスカイ女神様に群がっている方達をかき分け。
「アクアスカイ女神様。ご堪能いただけていますか?」
「良い宴席ですね」
「ありがとうございます。
それで母のお礼も兼ねてこちらを献上いたします」
木箱にビロードの布の下に海藻の海綿を柔らかく乾燥させた緩衝材を入れ、そこにブランデーグラス三個とブランデーのフルボトル一本を入れた物を見せた。
「これはお酒ですか?」
「はい。先日お聞きしたブランデーでございます。こちらが試飲用です。どうぞ」
「良い香りですよ」
「唇に少し付けて舐めてみて下さい」
「はい」
「いかがですか?」
「これはいいですよ。
少々強めですがとても透き通る美味しさです。琥珀色がまた素敵。
今までなかったのでは?」
「お伝えした通り、十五か国にはありませんでした」
「褒めて遣わしますよ」
「ありがとうございます」
「マーリレスの件はわたくしの御願いも込めてです。判りますね」
「はい」
「ファーナも判っていますね」
「はいなのです。全力で頑張るです」
「お願いよ。
それでイルリット。これの追加は?」
「こちらのお方達のお土産に配ってから再度製作いたします。
造りかけがございますので直ぐに献上できるかと存じます」
「待っていますよ。それで、この試飲用は?」
「どうぞ、お召し上がりください」
「ありがとう」
「リット良かったのです」
「ファーナのお陰だよ」
「あまり協力していないのです」
「そこは謙遜するところでは無いよ」
「あれれぇ。なのです」
「「ぷっぷっぷっぷ」」




