進む女神の策略。術中に陥る地上の者達
パーティー会場には既に私と母、アクアスカイ女神様以外が集っていた。
会場手前の控えの間で、アクアスカイ女神様と母に挨拶を終えたリミットベイ隊長達は会場の壁際に控える事になった。
そこでマードさんは五体投地して大泣きになり、母がそっと手を取って立ち上がらさせ、マードさんの手の甲を優しく撫でていた。
どうも古くからの知り合いで、十年前に亡くなったマードさんの奥さんとも仲が良かったようだった。
私に付いている使用人でお風呂に入っていなかった人達も母に抱き着いて泣いていた。
ファーナは気付いていたらしく、色々知らなかったのは私だけのようだった。
「ハロマイネさんとアルレシアさん。アウンさんの事は知らなかったのに?」
「リット。突然どうしたですか?」
「ファーナは可愛いな。と、思って」
「言うですよぉぉ。ハロマイネさん達には関係無いじゃないですかぁぁ」
「あぁぁ耳がぁぁ」
パーティー会場の方でおじ様やお爺様が外交官達と挨拶を終えた頃、私は演台に立った。
「皆様大変なご心配をお掛け致しました。
イルリット・ファム・ミウラール改めここウォーガット領の領主となりましたイルリット・ファ・ウォーガット騎士爵でございます。
以後、イルリット騎士爵とお呼びください。
それで、料理を目の前に少々手前勝手な事をさせていただきます。
皆様の右手前方の扉をご覧ください」
「まっ・・まさかぁぁ
会場が騒めく中を母がアクアスカイ女神様の左手を取って、しずしずと演台に向かって来た。
ファーナはアクアスカイ女神様の肩の上。
「足元を気を付けて上がって下さい」
演台中央に達した二人は会場に向き直り。
「皆さんはわたくしの事は知らないでしょうから、彼女から自己紹介を」
「皆様。お久しぶりでございます。
こちらにおわします創世の女神様アクアスカイ様に命を吹き込んで頂きました、イルリットの母。
マーリレスでございます」
会場のおじ様達も含め全員が傅いた。
(練習もしていないのにほぼ同時でしたねぇ。
母に傅いたのか。アクアスカイ女神様なのかの確認ですね)
「皆さん。初めまして。創世の女神アクアスカイでございます。以後、良しなに」
「「「は はぁぁ」」」
「立って頂いて結構ですよ」
「「「はっ」」」
(わぁぁ認めてしまいましたぁぁ)
「こちらのマーリレスは八年前。ある者の謀略によって毒殺によりこの世を去りました
(あららら。声にならない怒号で床が振動してきましたよ)
「今ここでその者の名を告げると料理が・・・
詳細は後程として、わたくしの肩に座っている小さな人型が見えるでしょうか。
この者はわたくしの眷属で」
「皆様。初めまして。イルリットの妖精。ファーナと申します。宜しくなのです」
「「「「えぇぇぇぇ」」」」
「この子、ファーナはこの世界の地上に於いて視覚的、聴覚的に認識できる妖精はこの子たった一人です。
触れる事が可能なのはイルリットが認めた者のみ。
わたくしの神力とイルリットの持つわたくしの力が奇跡を産み、この子が奇跡的に認識できるようになりました。
正直に申しますと創世の女神であるわたくしも驚いております。
見ての通り、わたくしの肩に座る事を許せる立場に居る。そう認識してください。
ファーナはイルリット意外に移譲する事も憑依する事も奪う事も殺すことも出来ません。強行すればその者にとっての最悪が訪れる事でしょう。
人型で認識できますが、妖精の力をイルリットは得ています。
ファーナの妖精の力は地上の妖精の中で最強です」
「「「おぉぉぉ」」」
「皆さんもご存じの通りイルリットは今もって地上で並ぶ者がいない程の強さを誇っています。
そこにファーナの力が相まって世界最強となりました」
「「「凄いなぁ」」」
「おっちょこちょいで、アホな事さえしなければその強さに勝てる者は居ないでしょう」
「「「確かにぃぃ」」」
(あのっ。皆さん?そこは納得しなくても。
ルクイッドギルド長もメルナさんもブレンドル様もラーライナ様も頷きすぎですよ・・・ライニー侍従長とみんなもぉ。リリース笑い過ぎですよぉ。えぇぇお母様までぇ?)
「それで、わたくしとファーナ。マーリレスも宴席に参加させて頂いても良いでしょうか」
「「「御心のままに」」」
「イルリット様」
「ナメナット女王国の外交官
「アルエ。お久しぶりね」
「お母様。ザイココットエー様ですよ」
超が付くほどのエルフさんの美人さんで超エリート外交官。
エルフの男性から求婚が殺到しているそうですが、母の忘れ形見の私に仕えたいと全てを断っているそうです。
(これで、ご結婚できますよ。おめでとうございます)
「イルリット様。間違いはございません。恐らくアルエの意味を含めた愛称をご存じなのはマーリレス様だけでございます」
(もう我慢しきれない涙が溢れ出ていますよ)
「アルエ。ハンカチよ」
「ありがとうございます。ありがとうございます」
「アルエ様とは、お母様しかご存じ無いのですか?」
「そうよ。それでまだ結婚していないの?」
「はい。これでようやく
(うんうん。お幸せになってください)
イルリット様を婿に迎えるご許可が頂けると信じています」
(ん?)
「その件は追々ね。それでアルエは何用かしら?」
「この喜び満ちたるこの会場に主を呼びたくご許可願えないでしょうか?」
「後方に紙通信を用意いたしましたよ。
ニナルッス連合国は四名の長。他は陛下と従者一名をアクアスカイ女神様からご許可が出ています。
いいわよ」
「「「「有りがたき幸せ」」」」
「お母様。全員が行ってしまいました」
「リット。頑張りなさい」
「はい?」
一番早く戻って来たのはナメナット女王国のザイココットエーさん。
(確かに呼びにくいのでアルエさんの方が良いかも。でも、二人の間柄がなせることなのでしょうね)
そしてファックス用紙を預かって見てびっくり。母に渡した。
クールシャインナ・フラーナス女王陛下の涙で滲む殴り書きの文字は。
「もう、あの子ったら。【呼ばなかったら絶交です】って。リットお願いね。気を付けて」
(母と女王陛下は他の十二か国が認める大の親友。侍女のメルツーチベールさんから伺ったのは訃報を聞いた女王陛下が自殺未遂を計って三か月間監禁生活だったこと)
「何にでしょうか?」
「行きなさい」
「はい。ああファーナぁぁ」
「はいなのです。行くですよ」
「了解」




