全てに驚愕するイジルバーバラ妃
宮城のイジルバーバラ妃の寝室のベッドの上。
イジルバーバラ妃は一人きりで拡声器の水晶に向かって。
「連絡が途絶えた?ジュポータ・ナックは?」
{ボスは第一中継地点に居ます。闘技場に入った所までは第一中継地点に念話が来ていたそうです。
今現状その第一中継地点ともジュポータボスとも音信不通。三十分程になります}
「問いかけは?」
{もちろんしております}
「二十人よ。前金で金貨六十枚もの大金を払ったのよ。依頼金も金貨百枚よ。まさか持ち逃げ?」
{いえ。間違いなくミルカマイナ辺境伯の屋敷に潜入し、闘技場に入ったようです}
「根拠は」
{ミルカマイナ辺境伯とリーナス夫人の模擬戦を観覧しながら実況中継が入っていたようです。
お互いの剣戟で火花が散るほどであったと}
「嘘よ。足腰が立たないおいぼれに成り下がったと聞いているわよ」
{それはどうか判りかねますが、観覧席にお爺さんとお婆さんが居たようです。作り話では難しいです}
「まさか、レイジャックとハルーライは生きていた?」
{恐らく。ミルカマイナ辺境伯が観覧席に据えると言ったらお二人しか居ません}
「イルリットの報告書では三年前に死んだはず。騙された?」
{行方不明のドワーフの捜索の報告書に、あくまでも未確認情報と記載されていました。しかも宰相宛の書簡。それを見て高笑いをなさっていたのはお妃様ですが}
「お黙りなさいっ」
{申し訳ありません。お待ちください。おい、騒がしいぞ何をしている。今、イジルバーバラお妃様と通信中だぞ、騒がしいぞ
〚母さん。俺だ。メドーダスだ〛
「通信を切るわよ」
イジルバーバラ妃は慌てて拡声器を枕の下に隠し、平然を装って。
「お入りなさい」
「昼間っから寝てた?」
「用件は何っ」
「俺が陛下の執務室で雑談していたら、マルージム近衛公安騎士隊長が陛下の執務室に入って来てよぉ
「同じことを繰り返さなくていい。要点を言いなさい」
「えぇぇっとぉぉ。人の名前が覚えられねぇんだよなぁぁ。何とか元公爵
「レイジャック・アイナ・バルナウス元公爵」
「それ。そいつって没落したじゃん。で、再叙爵を何とかでぇ
「何ですってぇぇ。もういい。私が直々に陛下に聞く。おどきなさい」
「そんなペラペラの服で行くの?見えてるよ」
「そこのガウン」
「おっおう」
(一体、何が起きているというの)
「陛下」
「いくらお前でもノック位はせぬか。それになんだその格好は」
「申し訳ございません。マルージム近衛公安騎士隊長。まだ居たの?」
「ええ。直視は許されませんので
「いいわよ。気にしない」
「はっ。メドーダス君がここで待っていろと仰いましたので、お待ちしておりましたよ」
「君?」
「はい。王家の血を引いて居りませんので部外者です。
一応、陛下が私設秘書として留め置くと仰いましたので」
「まぁいいわ
「良くは有りませんよイジルバーバラ妃様。これをご覧ください」
「二人とも死んでいたのでは?」
「いいえ。そちらにお二人の生存証明の直筆のサインが御座います。
ミルカマイナ・マーガレット・シャウザー辺境伯。リーナス夫人。イルリット・ファ・ウォーガット騎士爵のお認めのサインも御座います。
過去のサインと照合いたしましたが正真正銘レイジャック・アイナ・バルナウス元公爵。ハルーライ夫人と確認が取れました。
陛下もお認めです」
「陛下」
「ああ。間違いないな。いや。間違いようがないな。
ここに至るまでの全ての事象を含めた二人の直筆だ。
今正に生きておる証となった」
「この証拠は何処から?」
「証人の開示は本人の承諾無く出来ません。ご存じでは?」
「わたくしはどうなるの?」
「現状では八年前の事なのでお妃様の処遇は陛下がお決めになります」
「陛下」
「考える時間をくれ」
「レイジャック・アイナ・バルナウス元公爵はどうなるの」
「それは容疑者であるイジルバーバラ妃様には関係の無い事。立場上、わたくしの口からは何とも。
ご家族の団欒の時にでも。
では失礼いたします」
「レイジャック・アイナ・バルナウス元公爵は王家の失態で没落した。
いや、わしの知らぬところでお前が貶めた。わしへは事後報告でな。
まぁわしもお前の言葉を信じ、調べることなく鵜呑みのにしたがな。
ただ、これだけの証拠が有れば再叙爵せねばならん。
今、あの二人が攻め入って来たらわし一人で立ち向かう事になる」
「何故ですか?国軍も近衛兵も
「ばぁぁか。
今の状況を理解できておらぬのか。
わしの命令に従う訳が無かろうが。
わしは平民の犯罪者三人を城に匿っておるのだぞ」
「うっ」
「一切の落ち度は無かった事のへ謝罪の明文と謝罪金一千枚を添えて再叙爵だな。
頭が完全に上がらなくなった」
「知らぬ顔を
「バカ者が。お前が犯した罪だぞ。わしが他貴族から責任を取らされるであろう?
まさかお前。わしを殺す気か?」
「滅相もございません」
「ああ。わしを殺してお前さんの旦那様を解放
「違います。本当に違います。
もう、未練も何もございません。
陛下のお命も狙ってはいません。
もしそうであるなら、ご一緒に寝た昨夜でも可能でした」
「ご一緒に寝た。ねぇ。まぁ信じるとしようか。
でだ、公爵として再叙爵。
先日処刑したドーナッテン・ファイ・シラーケド子爵領をイルリットがレイジャック・アイナ・バルナウス公爵に割譲しよった。
本日夕刻の処刑が決まっておるヒルデンブルック・ファイア・ヒコットセン子爵は王家の転覆を狙っておった。
その証拠を提出した手柄でイルリットの領地となっておる。
その領地を南隣のイーナポインター・リバード・リコイン男爵を王家転覆罪の捜査協力の功績で子爵に陞爵して割譲しよった。
わしの命を救った以上文句も言えんわ。
それで北の四領地。しかもバールデシタと魔物をイルリットは手中に収めよった。
これだけのお仲間と私設軍が居れば両方の敵に向かうのは容易であろう。
バールデシタの方もこの情報を得たらおいそれとは立ち入っては来れんであろうな。
そして全てマーリレスの親族だ。お前が毒殺した」
「あぁぁぁ
「で、この再叙爵によってレイジャック・アイナ・バルナウス公爵が・・・ミウラール王国でただ一人。王位継承権を得た」
「なんでですかぁぁ」
「何でも何も有るか。
お前がそれを嫌ってどこぞの宰相と策を練って没落させたのだろう。
知っておっただろうが?」
「あ”ぁぁぁぁ」
「つまりだ。この一件で わしが レイジャック達を貶めたことになる。
そして正式に謝罪して王位継承権を認めざるを得なくなった。謀ればわしが貴族から殺される。
わしが早死にすればイルリット君のお爺ちゃんが国王様。
そしてお前は・・・処刑一択」
「どうしてぇぇぇ」
「そして恩赦でイルリット君の王位継承権が復活」
「なんでよぉぉ。なんでなのよぉぉ」
「イルリット君は真っ先にメドーダスとイグアスを処刑するだろうな」
「いぃぃやぁぁ」
「アジレッタは娼館送りかのぉ」
「嫌よぉ。嫌ぁ」
「それが現実で事実じゃな。
で、お前。
刺客をミルカマイナ辺境伯に放っただろう。
イルリットから報告が来ておる。ビーランク二十名。全て返り討ち。
イルリット。ミルカマイナ。リーナス。レイジャック。ハルーライの五人での会合中だったらしい
「証拠は?わたくしが指示を出したと言う明確な証拠は在るのですか?」
イジルバーバラ妃のその言葉にため息をつきつつ、一息置いて。




