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 イグアスによりカガミザキ商会廃業

 ハロマイネさんは私の注いだ御代わりを飲んで落ち着いたように。


 「それで、ブラックオウルからの情報です。

 第二王子のイグアスがどうもここを買収しようとする動きが有るようです」


 (陛下もいまだに手元に置いている事は知っていましたが、こんな事をしているとは)

 「ホテルの方は?」


 「ブレンドル様とラーライナ様がいらっしゃる事と世界の陛下の財産的存在を一応は弁えているようで、軽い嫌がらせ程度です。

 アホですが」


 「それでも嫌がらせを?」


 「はい。ホテル外で常連のお客様へ脅迫じみた事をしているようです。お客様は意に介していらっしゃらないようです」


 「対策を考えましょうか。

 それで商会への手段は?」


 「表向きは正式な買収。裏では従業員に給与の倍を支払って買収工作。技術の簒奪も狙っているようです。

 あのイグアスです。強行手段も辞さないのでは?」


 「有り得るでしょうね。いえ、考える事をしませんから即、力に訴えて来ますよ。

 既に工作活動が?」


 「はい。ですが、全員が大金を見せられても丁寧に断っているようです。今のところは向こうも穏便に出ているようで、被害報告は有りません。

 全員ユーナリ社長への恩義は忘れてはいませんでしたよ」


 「照れますね」


 「お可愛いですねぇもう。って、照れている場合ではありませんよ。どうなさるお積りで」


 「皆さんに危険が及ぶ前に対策致しましょう。

 アルレシアさんやハロマイネさん。ロマネスさんはお奇麗ですから危険が


 「あらっ?あのっ。よく聞こえませんでしたが?

 何方が誰をお奇麗とお認めと仰いましたか?」


 「えぇぇっとぉぉ。

 それでですねぇ。

 イグアス名義で何か証拠はありますか?」


 「後できっちりお伺いいたしますよ。

 証拠に関しては音声映像も含めて色々御座います」


 「裁判でも公安でも勝てる」


 「勿論です」


 「全員で建物ごと引っ越ししましょうか」


 「はぁぁ。イルリット様でしたら容易でしょうね」


 「まぁね。

 場所はウォーガット領の大河の南西。ミルカマイナ・マーガレット・シャウザー辺境伯領」


 「イルリット様のお母様マーリレス様のお姉様。リーナス様の嫁ぎ先」


 「そう。謁見の間にミルカマイナ・マーガレット・シャウザー辺境伯はおいでになってはいなかった。呼ばれなかったといった方が良いでしょうね」


 「既にお会いに?」


 「まだ」


 「何をなさっているのですかぁぁ」


 「ごめんなさいぃぃ」

 (あぁぁこわいよぉぉ)


 「唯一の味方と言って過言では無いお方ですよ。

 事情はお知りなのですよね」


 「多分?」


 「はぁぁぁ、もぉぉ」


 「だって、直ぐに私が出向いたら繋がりが解ってしまうから迷惑がかかる」


 「現状、何処までの関係かは別として、大方の貴族は知っていますよ。

 判りました。ブラックオウルを向かわせますか」


 「今日は会えないかな」


 「ミルカマイナ辺境伯様のご都合次第です」


 「これ」


 「封書ですか?」


 「そう。内容はもうしたためた」


 「アウン」


 「はっ」


 ハロマイネの左横にまるで忍者のように現れた正に忍者の装い。私が作りました。気に入ってくれているようです。

 そのままこちらを向いて顔を覆っていた布を引き下げた。

 アウンさんは母の使っていた裏の情報の収集屋。そのまま私の手となってくれた三十代後半の男性。元はスラムに居たそうだ。

 カッコイイおじ様なんだよねぇ。

 ハロマイネさんから聞いたけど、普段街中を歩いていると若い女性が見とれているとか。

 (羨ましいぃ)

 その場で傅いたアウンさんは。


 「イルリットお坊ちゃん。ご無沙汰しております。

 ファーナ様。初めましてアウン。と、お呼びくださいませ」


 「ファーナなのです。宜しくなのです」


 「よろしくお願いいたします」


 ファーナ自体を見るのは初めて。


 「アウンさん。念話と転移の調子はどうですか?」


 「はい。ファーナ様。

 何の問題も無く有効に使わせていただいております。

 ありがとうございます」


 「良かったです」


 転移と念話は私とファーナが改良してかなりの距離を飛べるようにした。


 「ハロマイネ様」


 「ミルカマイナ・マーガレット・シャウザー辺境伯様にこちらを。

 希望は本日中にご返答が頂きたい」


 「承りました」


 「お願いしますね」


 「勿論です、イルリットお坊ちゃん。

 では、行って参ります。ファーナ様。失礼します」


 「お気を付けてなのです」


 「はっ。ありがとうございます。では」


 「イルリット様。引っ越しの手続きに入りますか?」


 「本日は販売する物が無くなり臨時休業。

 後は、ミルカマイナ・マーガレット・シャウザー辺境伯が受け入れてくれるかが


 「受け入れてくださいますよ。目に入れても痛くないほどイルリット様を可愛がっていらっしゃいましたから」


 「その当時ハロマイネさんは居なかったよね」


 「情報は命でございますよ」


 「本当にスラム街のお姉さん?」


 「アルレシアと二人で・・・ですよ」


 「ん?まさかお母さんが」


 「リット。アウンさんとも最初っから仲良しだったですよ。それに上下関係もハッキリとしているです」


 「そうだったぁぁ」


 「それにこんなにきれいなお姉さんがスラムで攫われない訳が無いのです」


 「ですよねぇ」


 「ファーナ様。ありがとうございます。

 それで引っ越しの理由はいかがなさいますか?」


 「第二王子のイグアス殿下の横暴に耐えられなくなり、やむなく廃業」


 「店名をお変えになると?」


 「オーナーは私のままで、マーガレット商会」


 「国王様もミルカマイナ伯爵様とリーナス奥様には頭が上がりませんからね。軍備においても借入金においても。

 そしてマーリレス様においても。それでそのミドルネームを」


 「そうです。

 それでハロマイネさん。これ見て。お母さんの日記。ここ」


 「はい。お預かりします・・・な 何と言う事をぉぉマーリレス様ぁぁぁまさかぁぁぁあぁぁぁぁ。何故。何故あの時に仰って下さらなかったのですかぁぁ」


 (あぁぁもう。やっぱりお母さんだぁぁ)


 「わ わた わたくし達の力及ばずがぁぁあぁぁマーリレス様ぁぁぁ申し訳ございませんでしたぁぁあぁぁぁマーリレス様ぁぁぁ」


 「リット。静かにして居るですよ」


 「うん」


 ハロマイネさんは見るに堪えられないほど大泣きになってしまった。

 私もファーナも貰い泣きになってしまった。

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