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 カガミザキ商会の現状

 マード用の温室も完成し、受け入れ準備の全てが整い、翌日。

 ライニー侍従長達を迎え入れるべく王都内の私の裏稼業。カガミザキ商会へ向った。

 カガミザキ商会は私が前世の現代知識で作った品々を一括して管理、製造、直接販売と卸し売りをしている店で、十三か国にも展開している。

 本店はナメナット女王国に置いている世界一の店舗数を誇る大商会。

 オーナーは勿論、加神崎勇也。では無くこちらでの偽名ユーナリ・カガミザキ。

 正直、イルリット。リットと混同することも有るので注意はしている。


 六年前に小さく細々と初め、凡そ五年前。王都の郊外の捨て値の土地を買って五階建てのいわゆるショッピングモールを作った。

 当初は一般人向けの商売だったが、今では四階、五階を貴族会員専用フロアーにしている。

 階段しかないが運動不足の紳士淑女のお方達の運動不足解消にはもってこいでしょう。

 五階の半分は貴族専用の喫茶店の様な待合所にした。フードコートに間仕切りのパーテーションを設置。ここでの売り上げもバカにならない。


 周辺には製造工場も造って、塀で囲い工場地帯となっている。管理職、販売員や製造員を含めて凡そ二百人が従業員。

 その全ての従業員は塀の中の集合住宅で暮らしている。

 なんせ賃貸料は無料。


 五年前は周辺は荒野だったが色々な店が集まり始め、家も建って来て町となりつつあった。




 一階の従業員専用入り口で。


 「ただいま、アルレシアさん」


 「お帰りなさいませユーナリ社長。ファーナ様」


 「ただいまなのです」


 「一昨日、ブレンドル様とラーライナ様がおいでになり、リムジンでホテルに向かい、六泊七日のご予定でスイートルームにご滞在でございます。

 ご伝言がございましたらお受けいたします」


 「今は良いかな」


 「はぁあ?無い?」


 「ど どうしたのですか。怖いんですが」


 「お伺いいたします。ルクイッドギルド長と受付嬢のメルナ様はユーナリ社長の素性はご存じですよね」


 「あ”ぁぁぁ」


 「生きていることの証明に大変でした」


 「申し訳ございません」


 「ブレンドル様とラーライナ様にイルリット第三王子の存在がバレていたんですね」


 「ごめんなさい」


 「どこぞのアホ貴族のバカ息子の処刑に立ち会っていたようで、ご納得いただけた様ですが友人のユーナリ・カガミザキ社長に確認がしたいと申し出が来ておりますよ」


 「今ここには?」


 「現在はホテルでお過ごしです。茶髪のリットに騙されたとお怒りのようでした。警備依頼と申し上げれば良かったのに」


 「それだと受けてもらえないかなと思って」


 「あり得ますね」


 「それとルクイッドギルド長様は立ち会っていなかったの?」


 「立ち会っていらっしゃったようです。

 それであっても連絡を寄こさなかったと、メルナ様とお二人大激怒でしたよ。疎外されたと思われたようです。

 メルナ様から溢れ出る安堵の涙とお怒りのオーラは凄まじかったですよ。

 今度お会いする時はお覚悟を」


 「あわわわわ」


 「マッドレモンの懸賞金と報奨金の用意が出来たそうですよ。

 ギルドに行って受け取って下さいね。

 ご担当は勿論メルナ様でルクイッドギルド長様の御手自ら。代行は認めれていませんから」


 「怖いですよね」


 「ルクイッド様は現エスランク。メルナ様は元エーランク。

 逆らえないリット様にとっては怖いでしょうね」


 「あ”ぁぁどうしよう」


 「自業自得ですよ」


 「心しておきます。他に変わった事は?」


 「予定通り奥にハロマイネ総括長がおいでになっています。相当お冠のようですよ」


 「えっ?そっちも?どうして?」


 「直接お聞きください。

 ライニー侍従長様方は裏の従業員寮でお休み中です」


 「ありがとう。それで今日引っ越しをします。連絡をお願いしても良いかな」


 「承りました」


 「ハロマイネさんは応接室?」


 「はい。お気を付けて」


 「なんで?」


 アルレシアさんとハロマイネさんは六年前に私がスラム街で見付けた女性。

 二人共今年二十歳になるが結婚しようとしない。

 販売員も製造業の方も半数以上がスラム街の人達。ここには孤児院も在る。

 その孤児院で読み書き計算から貴族対応の教育も行っており、十五歳以上でカガミザキ商会への就職希望者を募っている。

 過去の卒業生は全員カガミザキ商会やカガミザキホテル。その関連企業に就職している。


 応接室の扉の前に来たが。何か凄まじい重い空気。


 「リット。お怒りのオーラが漏れ出て来ていますですよ」


 「だねぇ。入ろっか」


 「はい・・なのです」


 ハロマイネは右手の下座のソファに腰掛けていたが、その場で傅いて。


 「お帰りなさいませ、ファーナ様」


 「ただいまなのです」


 「あのぉぉ


 「そちらへお掛けくださいっ」


 「はいっ」


 扉からお茶の乗ったワゴンを押して接客係のロマネスさんが入って来た。


 「ユーナリ社長。ファーナ様。お帰りなさいませ。お茶のご用意をいたしますが、ファーナ様の分はお願いできますか?」


 「勿論だよ」




 「失礼いたしました。ユーナリ社長。ごゆっくり」


 (何その微笑み。怖いんですが)


 ロマネスさんはワゴン置いて、静かに扉を閉めた。


 「ファーナ様 は お茶をどうぞ」


 「ありがとうなのです」


 「あのっ」


 「あんっ?」


 (何か良く解かりませんが)

 「ごめんなさい」


 「どうぞ」


 「あ ありがとう」


 ロマネスさんの淹れる紅茶は美味しい。


 「さて、ご報告ですが」


 「どうぞ」


 「アルレシアから表の話しはお聞きになりましたか?」


 「お聞きになりました。怖かったです」


 「では商会内の方です。

 この三日間どのような状況だとご想像なさいますか?」


 「多少は増えた。かな?」


 「多少?根拠は?」


 「私が廃嫡になった事」


 「そうです。生物は別として保存が効くパスタ類からスナック菓子迄全てきのうで売り切れ。

 衣服や食器類は既に在りません。

 苦情が殺到してその対応だけでも大変でしたよ」


 「ご ごめんなさい」


 「廃嫡当日にご挨拶に来た折にこうなる事をイルリット様なら予測できましたよねっ。それともわたくし達に考えろと?」


 「いえ。全くそのような事は思っていませんでした」


 「わたくし達では念話が届かず、増産して良いものかの判断も付きません。どぉぉして、連絡を頂けなかったのですか」


 「すみません。もしかして新規の顧客が


 「殺到して、わたくしも休日返上で寝る暇もありません。特に一般販売の方は秩序が保てません。

 一応、数量限定販売を行ってはいますが、繰り返し来て転売を行っているようです」


 「そうですか。それはここが閉店になるかもしれないと


 「既にその噂で持ちきりです。ご対応の検討を早急にお願いいたします」


 「はいぃ。あの。お紅茶をお飲みになって落ち着てはいかがでしょうか」


 「いただきますっ」


 「どうぞ。御代わりは」


 「いただきますっ」


 「はいぃぃ」

 (あぁぁ怖いよぉぉ)

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