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 バールデシタ帝国の国内事情を偵察

 ヴァルガード隊長は取調室手前の部屋の扉を開けて。


 「カウナリット。お茶を頼めるか?」


 「お兄様。お客様ですか?」


 執務机の椅子に座り帳簿を付けている可愛い女性。


 (寝起きかな?)

 「お久しぶりです。カウナリット様」


 「あ”ぁぁぁ髪の毛をぉぉ


 「お奇麗ですよ」


 「はわぁぁ。失礼いたしました。直ぐにお持ちいたします」


 「お願いいたしますね」


 「はい」


 取調室に向かうべく、二人で廊下を歩く。


 「砦のお二人暮らしは慣れましたか?」


 「おかげさまで」


 「えらく静かですが」


 「今ここの砦は俺とカウナリット。リースファの三人だけになってしまいました」


 「ありゃりゃぁ」


 「半年前の土砂崩れで半数が未帰還。後は捨て石になるのはごめん被ると、依願退役で皆実家の家業を継ぐそうです。どうぞ」


 取調室の扉を開けてくれた。


 「ありがとうございます。よく許可が下りましたね」


 「何の意図が有るのか解かりませんがすんなりでしたよ」


 「イイナナさん達は?」


 「そちらへどうぞ。あの連中は生き延びてここへ。その後は実家帰りですよ」


 何故か奥側の椅子を勧められた。


 「失礼いたします。お茶をお持ちしました。茶髪のリット様、他国とは比べないでくださいよ」


 (髪も整えていらっしゃったのですね。お奇麗ですよ)

 「カウナリット様に頂けるなら普通の水も女神様の泉の味ですよ」


 「あぁぁんもぉぉ。そんな言葉どこで覚えて来るのかしらぁぁ。大人になっちゃいやぁぁ」


 「いただきます。美味しいです。

 これ、お礼です」


 「バナナ?」


 「貰っておけ。一本だけリースファにやってくれないか」


 「もちろんよぉぉ。わたくしお兄様と違って意地悪じゃないもぉぉん。リットちゃんありがとう。行ってきまぁぁす」


 カウナリットさんが退室した後、ヴァルガードさんはまるで横で聞いていたかのように話し始めた。

 それ程隠し事が無いと帝国はピーアールしたいのでしょう。


 「イルリット王子殿下が廃嫡になって国軍が百人で使用人が二十人。

 引き連れて来るジルベイン・ヴァルイア伯爵閣下とご家族。近衛が二十人で侍女ですか」


 「はい。何か匂いませんか?」


 「摂政のダヴァルット様がご指示」


 「そうです」


 「先鋒の一本槍の二つ名を持つジルベイン・ヴァルイア伯爵様は皇帝陛下と旧知の仲と聞いていましたが?」


 「実はですねぇ」


 どうもヴァルガードさんには裏稼業のお方が付いているようだった。

 (そちら方面にもご興味が御有りでしたか)

 「許嫁のシャルーナお嬢様が居て軍の掌握?」


 「はい。御上の考えることはよく解かりませんが、そう言った流れが有るようです」


 「ジルベイン・ヴァルイア伯爵様はそもそも軍のトップですよね」


 「そうなんですよねぇ。お嬢様を悲しませるようなお方では無いんですよねぇ」


 「溺愛されていると聞いた事が有りますよ」


 「そりゃもうあのガタイが可愛いと思えるほど親バカ。

 軍の知り合い連中から聞いていますが、不穏な動きは全く無し。

 奥様のスコシュール様はジルベイン様に今もってべた惚れ。朝夕の送り迎いに、長期演習には付いて行く始末です。

 女性隊員との打ち合わせ時には横に居るくらいらしいですよ。

 料理を隊員に振舞うそうですが滅茶苦茶美味しいと評判らしいです。

 そうそう、あまりに見ていられないので陛下が副官に任命したようです」


 「確かエーランク」


 「はい。元ですがね」


 「摂政のダヴァルット様の目には夫婦が軍のトップが掌握の兆し有りと見えたんでしょうか」


 「どうなんでしょうかねぇ。ダヴァルット様の命令にも従順なんですがねぇ」


 「ジルベイン伯爵様やスコシュール奥様のお耳に入っていると思いますか?」


 「思いますが一つ一つ聞き入れていたら軍のトップはやってられないと思いますよ」


 (ですよねぇ。そこがまた付け入る隙なんですが。これはダヴァルット摂政様何か企んでいますね。

 そもそも六年前に大使として調べた時に過去のミウラール王国への進軍計画は全てダヴァルット摂政様。

 ヴァラジルッド・バールデシタ皇帝陛下は許可を出しただけでした。

 経済状況を確認しておきましょうか)

 「この二カラットのルビー。お幾らぐらいで売れそうでしょうか?」


 「タダ」


 「えっ?」


 「失礼な言い方ですが五カラット以下は石コロです。

 イルリット第三王子がいらした六年前にミウラール王国は冒険者は除く国交断絶。

 ご存じの通り陸路で入国できるミウラール王国と国交を断絶したため冒険者も入出国できなくなりました。

 唯一、辿り着けるのはエスエスの茶髪のリット様だけ。

 海路での交易路は残っていたのですが摂政の悪巧みで結局バールデシタ帝国は完全に孤立しました。

 結果、摂政の独断でバールデシタ帝国は貧困に陥りました。

 当然、茶髪のリット様ならばご存じだったと思います。

 それで俺、学が無いんで良く解かりませんが連れが超インフレって言っていました」


 「そうですかぁ。ヴァルガード隊長様は所謂宝石を持っていますか?」


 「滅茶苦茶持っていますよ。ほら」


 「何ですかこの量は?大きいのから小さいのまで一般的な皿の山盛りあるじゃないですか」

 (今のミウラール王国で売れば金貨五百枚ぐらいは有るでしょうね)


 「ここも軍の管理下なんで食料の支給が有るんです。イクヒルズの町の連中が来て食料と交換して欲しいって。

 軍の規定では売買禁止になっているんですが痩せた子供を見ると可哀想で」


 「イクヒルズのお城の方でも?」


 「たまに炊き出しをやっているようですよ。百人程度の食料を分けても焼け石に水。

 報告を上げているんですがどこかに関所が有るようですね」


 (これはアウトですね)

 「皇帝陛下の到着予定日は?」


 「三日後の予定です」


 「そうですかぁ。ここのギルドは?」


 「廃止になって、もう一つ向こうの町。イルグーグと合併しました。二百キロ西ですね。知ってて聞いてます?」


 「確認です。

 砦が三か所ですか」


 「はい。皇帝陛下がいらっしゃるので警戒は厳重。少々面倒ですよ」


 「ですねぇ。この後指名依頼が入っているので行かなければならない所が有るんです。これをギルドに伝達お願いいたします」


 「サースペンス断崖の北二百三十キロ地点の山岳部にゴブリンの巣を発見ですか。二百から三百体?」


 「大規模なコロニーになっていました。私が出ちゃうとこちらに来ている冒険者の収入を奪う事になって恨まれますからね」


 「判りました。茶髪のリット様の報告で?」


 「その方がいいでしょうね」


 「判りました。それで」


 「そうですねぇ。私としてはヴァルガード隊長様にもカウナリット様にもリースファ副隊長様にも死んでほしくありません」


 「死ぬ?餓死はしないと思いますが」


 「私の予想ですよ。陛下を巻き込んでここで何かが起きる」


 「イクヒルズにも友人が居ますが」


 「私にも限界があります。申し訳ないのですが、友人の家族の知人の知り合いの親戚迄助ける事は不可能です」


 「判りました。カウナリットだけでも養って頂けませんか?」


 「住む場所は何処でもいいですか」


 「何処の国でもいいです。摂政のダヴァルットが帝国を動かしている限り、民に陽は差しません。ミウラール王国に攻め入るのも、もううんざりです。

 お願いいたします」


 「でしたらお二人も付いて来るのが条件です。裏工作は私がします。退役申請は必要ありません」


 「密出入国?」


 (それを阻止する番人ですからねぇ。心が痛むでしょうねぇ。ごめんなさい)

 「そこはご心配ありません。エスエスの私に任せてください。近いうちに伺いに来ます。では」


 「リースファ副隊長も天涯孤独だしな。聞いてみるか」




 (おいおい、守衛前のベンチで日向ぼっこしながら仲良くおやつか?)

 「おぉぉバナナのいい香りだなぁ」


 「「れしょぉぉぉ」」


 「そんなに一気に頬張らなくてもいいだろう」


 「「美味しぃぃ」」


 「そりゃ良かったな。食い終わったか?」


 「「もう一本」」


 「待て」


 「「何?」」


 「睨む事ねぇだろう。取ったりしねぇよ。

 あのなぁ。茶髪のリット様は指名依頼で帰っちまったが・・・あからさまにしょぼくれるなよ」


 「「で、何っ」」


 「確認だが二人共ギルドカードは有効期限内か」


 「「当然」」


 「それでなぁ。超極秘だぞ」


 「「だから何っ」」


 「茶髪のリット様がな。今度来た時に俺達三人を秘密裏に連れ出すから、どこかの国に一緒に行かないか。って。どうえっ?おごっうぎゃぁぁぁ


 「「準備してくるぅぅ」」


 「蹴っ飛ばして踏んで行くかよぉ今度っていつよぉガクッ」

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