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 バールデシタ帝国との両国の国境

 ウォーガットの砦は深い山間の谷の平らな部分にミウラール王国側から第一砦。

 周辺の岩を四角く切り出した斑模様で高さは十メートル程で、両脇の山と山を繋ぐ五百メートル程の城壁。

 壁内は兵士の住居となっていて、凡そ三千部屋が在る。キッチンとトイレ、風呂は共同となっている。

 第一砦と同規模でバールデシタ帝国に一キロ近い第二砦。

 その中間点にマンションが上に従って小さくなっていくような構造の八階建てで、高さは凡そ三十メートルのウォーガット城がそびえ立っている。

 各階のバルコニーから攻撃も出来るようになっている、単純な構造だが攻城戦も想定した造りで、堀と城壁も備えている。

 本当はヨーロッパの素敵なお城。

 例えば十二歳ころにはノイシュヴァンシュタイン城のようなお城を想像していた。

 しかし、王都の王城を見ればわかる。この世界そこまでの建築技術は発展していない。

 (ただ、母が自分用に造った後宮の別邸は近代的な城に近いのよねぇ。

 大きくはないですが、円錐屋根を用いて王城より構造が立派とかあり得ませんよ。

 イジルバーバラ王妃が嫉妬するのも判ります)

 第二砦から更に、バールデシタ帝国側に一キロ行った地点に第三砦が在る。

 こちらには住居は無く純粋に壁だ。有るのは警戒要員の仮住まい。


 そして、そこから更に十キロ行ったところに国境第一砦。二百メートル程を開け第二。その先二百メートルに第三が在った。

 気持ち的には転移も有る世界で高さ十メートルなど難なく超えれそうなのだがそうはしてこない。知らない訳では無さそうなのだが理由は不明。

 が、半年前の土砂崩れが三枚の壁と敵味方を巻き込んだ。

 生還者はいないとなっている。その後、魔物が溢れたようだ。

 ウォーガット領に元々平民は居ない。

 訪れるのは高位転移を所持した商隊が二か月から三か月に一度程度だった。

 その商隊の報告により全滅している事が解かった。敵側の損害も残された武器武具で解ったようだ。




 そしてここへ私とファーナで訪れて三日目。

 既に壁内の住居はリフォームして一間十畳ほどの四エルディーケー。バストイレ付にした。一応家具類も設置した。

 今は第一砦と第二砦の間を開墾し、野菜や果物。根野菜の畑を作っている。今の所、魔物の気配は無い。

 そして、ファーナの妖精術は凄かった。

 種を蒔いて行く端から芽が出て、半日でトウモロコシが育ち、明日には収穫できるほどになっている。


 「明日にはみんなを呼んでこないと収穫できないな」


 「もう、ジャガイモも収穫できるのです。麦は後三日ぐらいになるのです」


 「ありがとう。でさぁ。お米持っていない?」


 「前世の主食ですか?」


 「そう。こっちの世界にお米がなかったのよ」


 「私は見た事が無いので種は持っていないです。教会を建立したら まさか が起きるかもですよ」


 「お城の中の一角を教会にしようか」


 「賛成なのです」


 その日の内に教会も完成し、何故か祭壇にお米と【ゴブリンでも解かるお米の育て方】の本が置いてあった。縄文時代位のお米が出来るそうだ。

 現代のお米にできるのは何時の事やら。

 

 (ところでアクアスカイ女神様。人をゴブリンにしないで下さいと言うか【でも】だから【以下】って事でしょうか)


 水田は第二砦と第三砦の間にお試し用に一反造った。


 「ファーナ。これから冬だよ」


 「お任せなのです」


 「あまり無理し過ぎて倒れてしまうのが心配なんだけど」


 「ここまでしてきたですが、妖力はほぼ使っていないですよ。

 それよりこうしてリットとお仕事ができる事が楽しくて、嬉しくて逆に元気が出るです。

 それとアクアスカイ女神様がリットとお仕事をすると妖力の上限が増えるようにしたみたいなのです」


 「それならいいのだけど、絶対に無理はしないでよ」


 「はいなのです。

 ここは私に任せて、リットは城内のお庭にマードさんの温室と最前線の監視小屋を造りに行くのです。それが終わればほぼ完成なのです」


 「バールデシタにお散歩に行ってもいい?」


 「いいですよ。色々試したいこともあるです」


 「そうだね。念話の距離も測れるし、行ってくるよ」


 「はいなのです」




 国境第三砦から一キロ地点がバールデシタ帝国との国境。は、バールデシタ帝国が勝手に強いた国境線。

 国際的にはバールデシタ帝国側へ、更に五キロ入った地点が正式な国境線。

 その場所で渓谷が見下ろせる場所に岩に擬態した監視小屋を置く予定だ。

 監視小屋と言っても魔石と水晶を利用した監視カメラの設置。

 領地のお城の管制管理室でモニターでの監視と異常を感知した場合は私のスキル。監視ウインドウに自動転送される。異常の定義は追々調整。

 勿論、小屋には人が五人は住める部屋や食料の備蓄は用意しておく。


 (飛行でここまで来ましたが国境砦は埋まってしまって全く見えず、丘のようになっていますね。

 下流のバールデシタ帝国へ向かっての渓谷の川が塞き止められてダムのようにもなっていますね。

 僅かに流れ出ては居るようですがイクヒルズのお方達も水が無くなって大変でしょうに。排水路を設置して一定量の流量を確保しましょうか。

 大雨用の対策もしましょう。ついでになだらかな登り斜面は・・・切り立ったロックフィルダムのようにして登って来れないようにすれば安泰ですね。

 さてと。イクヒルズに行ってみますか。その前に一仕事していきますか)


 バールデシタ帝国の東の要。

 イクヒルズの国境砦。

 両端の山間五キロほどの中間点に国境砦の門が設置されている。ここの一か所のみ。

 入出国用のその門は幅が二十メートルほどある。

 これはミウラール王国へ出兵する際に一気に出国できるようになっているらしいが、その分木製の扉は弱い。

 両側へは高さ五メートルの石で出来た砦が続いている。


 今日は門兵が男女一人づつの二人。

 両方とも茶髪のリットとしては友人。

 ウォーガット領主の準備に追われて、この一年ほどは来ていなかったので久しぶりとなる。


 「こんにちは。ヴァルガード隊長様」


 「これはこれは茶髪のリット様。お久しぶりですね。

 山脈越えですか?」


 「南のサースペンス断崖から大回りでここへ来ました」


 「チャンチャーン小屋には寄らずに?」


 「はい。山沿いを偵察しがてらです。ギルドに報告案件もあります」


 「かなり距離が・・・茶髪のリット様でしたら一瞬ですね」


 「ここで何か変わったことは?」


 「ミウラール王国も攻めて来ず。あちらから攻めてきたことは有りませんので当然ですが。魔物も来なくなって、水も来なくなりました」


 「水は死活問題ですか?」


 「川の水が激減して、数か所に湧き水が出て池になっています。井戸水も水位が上がって溢れ出ているところも在ります。色々便利になっていますよ」


 「そうでしたか。怪我の功名と言った所ですか。良かったですね」


 「はい」


 「他は?」


 「無いですね」


 「そうですか。ならギルドに行って来ますね」


 「もう。判ってて言ってますよね」


 「何がでしょうか」


 「それの確認に来たくせに。内緒ですよ」


 「はぁ」


 「先日決まった話しですが、間もなくここへヴァラジルッド・バールデシタ皇帝陛下がご家族と共においでになります」


 「理由は?」


 「お体が悪いのはご存じ?」


 「はい」


 「静養です。どうも表向きは」


 「裏があるのですか?」


 「さすがに茶髪のリット様でも帝国内情をぉぉ。バナナ?」


 「インダモス王国産ですよ。妹様のカウナリット様がお好きだったようなぁ」


 「五本ありますよ。売れば金貨数十枚は


 「しっ」


 「おいっ。リースファ副隊長」


 「はい」


 「俺は茶髪のリット様の入国確認に行って来る」


 「あぁぁリット様ぁぁ。いつの間にいらしていたのですかぁ。隊長ぉぉわたくしもご一緒したいぃぃ」


 「こんにちは。リースファ副隊長様」


 「あぁぁん溶けそう」


 「溶けてないで仕事を頼む」


 「後でお茶してください」


 「考えておきますね」


 「はい。是非」


 二十メートル先のリースファ副隊長に敬礼をして、ヴァルガード隊長と門の横の屯所に入った。

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