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 本気のイルリット騎士爵に戦々恐々とする城内

 王城。ピグダットは執務室にたった一人。

 侍女や使用人は誰一人付いていない。

 ピグダットは自分で入れた緑茶を一人で飲みながら、ティーカップの中の粉まみれを見つめて。


 「わしはお茶すらまともに淹れられんのだな。渋いのぉ」


 騒がしい足音が近づいて来て、扉が吹き飛びそうな勢いで開いた。

 そこには息を切らしたイジルバーバラ。メドーダスとイグアスが立っていた。


 「「「陛下っ」」」


 「あぁ。お帰り」


 「何をのんきなことを仰っていらっしゃるのですか」

 「イルリットの同級生のナンデネンが殺された」

 「あいつはドーナッテン一家を虐殺するらしい」


 「学校やらでイルリットを非常に可愛がっていたやつらもだな。お前達三人もその対象だな」


 「ふざけないでください」

 「ざっけんじゃねぇぞごらぁ」

 「ざっけんなぁぁ」


 ピグダットは左で頬杖を付いて斜に構え、ペンを持つ右手で三人を差して軽く揺らしながら。


 「なぁ。確認するが、ふざけているのはどっちだ?

 わしこの国の国王な。

 イジルバーバラ妃は犯罪者でも一応わしが匿っている。

 メドーダスとイグアスはわしの子では無いが、一応手元に置いて投獄を免れている。

 わしが見切りをつけて近衛を呼べばお主達はどうなるのかなぁぁ。

 それで、そのわしになんだって?」


 「申し訳 ございません」

 「悪かった」

 「すみませんでしたっ」


 「メドーダス君。何その態度。気に入らないなぁ。近衛呼ぼうか?」


 「申し訳ございませんでした。陛下」


 「で、イグアス君。虐殺?

 バカなことを言っちゃいかんよ。

 貴族としてあるまじき行為を行った正当な理由に基づく処刑だ。

 そしてナンデネン君の第三王子への理不尽な暴行。

 イルリットが提出した証拠でわしが許可したのじゃよ。判る?

 イグアス君はこのわしを虐殺者と呼んだことになるのじゃがの。この強姦魔」


 「うっ。知らなかったんです」


 「まぁいい。

 今現状金で雇っていた者への追及は行われてはおらぬが、そのうち捜査がイジルバーバラ妃まで及ぶであろうな。

 わしは不安だよ。

 メドーダスとイグアスは赤の他人であった。

 きのうまでは兄弟げんかで済んでいたが、それすら司法の判断はどうなるんじゃろうなぁ。

 お主らは知っていて兄弟の面をしてわしとイルリットを騙しておったのじゃからな。

 イルリット君はどうするんじゃろうかのぉ」


 「「「・・・」」」


 「地下二階の独房に収監されたパパと相談して来るか?

 面会許可が下りるかは知らんが」


 「あいつ本当に処刑しやがった」


 「当然じゃろうの。メドーダスは冗談とでも思ったのか?

 偽王族のお前ですら行使してきた事だぞ。

 今、メドーダスとイグアスがこの件で騒げばお主らの過去の不当な不敬罪適用を調べられ処刑されるぞ。確実にな。

 何せ、自分達は王族では無いことを知っていて行使したのだからな」


 「「「・・・」」」


 「そんな重罪を重ねて来たお主らを匿っておるのじゃがのぉぉ。

 ノックも無しで飛び込んで来て挨拶も無く罵詈雑言。

 考え直す


 「「「申し訳ございませんでした。陛下」」」


 三人が五体投地した。


 「イジルバーバラ妃。お茶を淹れてくれるか。

 自分で淹れたのだが、粉ばっかで渋くて飲めぬ」


 「はい。ただいま」


 「メドーダスとイグアス。

 お主らは騒げば騒ぐほど、断頭台が近づくぞ。

 近づいたその位置から遠ざかることは一切ないからな」


 「「はい」」


 「さてさて、何人の子らが親と共に消えるのであろうな」


 「他の子供達も処刑対象になった事もご存じなのですか?」


 「ああ、知っておるよ。

 お前達より先にマルージムがここへ来て報告していった。

 各国の謁見も無くなったこともな。

 わし。対外的にも置物以下の存在になってしもうた。

 誰か達のせいで」


 「「「うっ」」」




 城内の貴族達はそこかしこに数名づつが集まり。


 「本当に処刑を行ったぞ」


 「しかも陛下の許可状だった。

 イルリット王子殿下は・・・いや。イルリット騎士爵は陛下を据え置くと言うことか」


 「そうだろうな。

 きのうの今日の今の現状ではイルリット騎士爵ではまだ我々貴族に対する信頼が得られていない。

 そうなればイルリット騎士爵へ反感が向かう。

 だが、陛下が認めたとなれば我々も逆らう訳にはいかない」


 「そう言うことか。つまり陛下の喉元に剣を突きつけた状態で操る


 「「「それだ」」」


 「そして公安が動けば俺達に逆らう術は無い。

 一部の奴らがウォーガット領に金を持って向かった意味が分かった」


 「俺達を叩けばいくらでも埃が出てくる。

 俺達が貴族として正当な理由があるとしても、マーリレス様の意志を継承していらっしゃるであろうイルリット騎士爵は悪とみなす可能性がある。

 小さなことへ目を瞑ってもらうための献金だな」


 「金で納得なさるのだろうか」


 「ナンデネンの罪状内に女が出てきた。

 噂では有るが、女性経験は無いそうだ。付き合った事すら無いと言うことだ」


 「隔離施設の使用人達がお世話していたとか」


 「その可能性は十分にあるぞ。若いリリースも居る。どうなんだ」


 「大使として赴いた先でも接待を受けているかもしれん。

 特にナメナット女王国などはマーリレス様が懇意にしていたからな」


 「そこまでは判らん。あくまで噂だ。

 ただ、そうであれば逆に女を必要としない。

 俺はこう思っている。

 ウォーガット領の崩壊した砦を修復するのに幾ら掛かり、維持管理に幾ら掛かるのか。

 そして先ほど発表は無かったが、きのうのマルージム隊長の話しで隔離施設の全員を連れて行ったとなればその給金もだ。

 そもそも、今迄魔物を狩って換金していたとして、向こうにはらしいギルドは設置されていない。

 叔母に当たるリーナス夫人とも疎遠と聞く。

 既に自給自足体制が整い、守りの態勢が出来たとしても給金や資材調達に金は必要だ。

 お前達もそうだと思うが、ウォーガット領の状況。つまり。城の規模や砦の規模を聞いて知ってはいるが実際を知らない。

 何がどれだけ必要なのか・・・・すまん。俺行くわ」


 「「「待て。何を思いついた」」」


 三人が周りを囲み、一人が胸倉を掴んだ。


 「うぐっ」


 「言え。でないと幾らでも暴露する用意はあるぞ」


 「う 裏切る気か」


 「お前がだろう」


 「判った。手を放せ」


 「判った。何を思いついた」


 「恐らくドーナッテン・ファイ・シラーケド子爵領はイルリット騎士爵の領地となるだろう。

 公表されていない今のうちにシラーケド子爵領の領都に資材販売の商会を立ち上げ、イルリット騎士爵に対し安価に販売できる協力体制を整える」


 「「「それだ」」」


 「恩を売る訳ではないが、うまくすれば必要価値を見出してくれて、後任の選抜から外してもらえるかもしれん」


 「「「よっしゃぁぁ」」」


 「商会の社長は俺でいいか」


 「いいぞ。分け前はきっちり計算しろ」


 「勿論だ。

 先ずは販売店と倉庫をイルリット騎士爵が利便性が良いと思う土地で押さえる。そして本店を領都内で押さえるぞ。

 他の奴らは金や女でこの事にまだ気付いていないだろう」


 「「「行くぞ」」」


 「他言無用で王都城壁北門に五時に集合だ。

 御者を三交代で途中で馬を代えれば三日ぐらいだろう。身の回りの物品は取り敢えずは現地調達。金を忘れるなよ」


 「「「了解だ」」」


 四人は何事も無かったように静かに玄関へ向かって歩き出した。

 他の場所ではまだ話し合いが続いていた。


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