イルリット・ファ・ウォーガット騎士爵の本気度と生存の証明
王城裏に設置された処刑台。既にナンデネンが口を封じられ首を固定されもがいている。
集まった民衆や貴族を前に。
(イルリット王子殿下から届いたこの演説内容を読めと?演技下手なんだよなぁ。下手過ぎて小等部の演技披露降ろされているんですよ俺)
「なぁトンボちゃん」
「はい。隊長」
「これ俺なの?」
「殿下のたってのお願いですよ」
「はぁぁぁ。しぁねぇか」
「そんな返事をしていると、マーリレス様がお墓から出て来て怒鳴られますよ」
「色々な意味で恐ろしい事言うなよ。
トンボちゃん。今で見届け人は」
「凡そ三千人。増え続けています」
「頃合いか」
「もういいかと」
「ああうん。ごふぉん。
私はマルージム近衛公安騎士隊長。
これよりドーナッテン・ファイ・シラーケド子爵の嫡男ナンデネンの公開処刑を行う。
罪状はドーナッテン・ファイ・シラーケド子爵がピグダット・ファム・ミウラール国王陛下を騙り領民を謀っていた事。それに関連してナンデネンも女性を襲って来た。
これらの証拠はイルリット王子殿下からもたらされた情報の裏取りで確証を得た。
ドーナッテン・ファイ・シラーケド子爵。妻のルシヘ。長女のゴクマーズは通常処刑。
もう一点。ナンデネンはミウラール王立高等学校内外でイルリット王子殿下に三年間に及ぶ暴行を加え続けていた不敬罪の罪である。
よってナンデネンは公開処刑となった。
この後、イルリット王子殿下より提出された不敬罪適用者名簿と証拠により逐一、事情聴取を行う。教職員も含まれている。
聴取を拒む者。王都外へ出た者は逃亡とし、即刻処刑とする。家族も逃亡の幇助として同罪とする。聞いていようがいまいが罪を行った事実である。
既に国境警備隊にも名簿を配布済みだ。
国外逃亡と判明した場合はその場で即刻打ち首となる。
なお、イルリット王子殿下は謝罪の一切を受け付けていない。
それと冒険者エスランクを素手で倒せる。国軍内にもイルリット王子殿下に勝てる者も居ない。十人同時に襲い掛かっても擦り傷一つ無く一秒で全員が倒れた。
もう一点。イルリット・ファム・ミウラール第三王子殿下は廃嫡され、現在は王命でイルリット・ファ・ウォーガット騎士爵となってウォーガット領に赴いた。
だが不敬罪の適用は廃嫡前となるため継続審議事案となる。
そしてイルリット・ファ・ウォーガット騎士爵は私の知る限りはお元気であらせられる。
(この反応はどえらい事になりそうだな)
それで既にバールデシタ帝国との国境は完全封鎖。魔物もほぼ撃退し終え、自給自足が出来るように畑を耕していらっしゃるようだ。
魚を釣り、狩りをして、夜は星の数を数えているそうだ。
(大笑いかよ)
かなり余裕があるので暇で死んじゃう。と、ここに綴っておられる。暫くしたら外遊にでも出ようかと思っているらしい。
これは先ほどイルリット・ファ・ウォーガット騎士爵から送られて来た紙通信だ。ここに自筆のサインもある。
公安の方で確認したが本物であることが証明された。
以上だ。
処刑を執行する。やれ」
「はっ」
(一般の民衆は帰ったか。残って天を仰ぎ力尽きているのは同級生諸君か。親達もうな垂れているな。
おやおや校長先生と教頭先生もいらしていましたか。
そうでしたかぁ。今理解できました。
暴行を受けつつ貴族の息子達の未来予想を立てていらっしゃった。
ミウラール王国の次世代を担う貴族に相応しいかどうか。そして教育現場の教師も重要なポスト。
少なくとも貴族の子弟が通う王立高等部総合学校。ミウラール王立高等学校は廃校となるのでしょうね)
「マルージム近衛公安騎士隊長」
「おう」
「諜報部から念話通信」
「言ってくれ」
「十三か国全ての陛下から同一内容。
イルリット第三王子殿下の件は理解した。故に外交官の謁見は必要無くなった。以上です。
それでどうも各国の外交官がウォーガット領に向かったようです」
「ありがとう。陛下に伝える」
(はぁぁ。なるほどぉぉ。ここで公表すればそりゃ聞いているわなぁ。ご自身の状況を公表すれば諸外国も安心するわな。
夕べの陛下の返信内容では隠し事ばかりで不安を煽っていたからな。
で、ご自身が全てをお話しになる。待てよ。もしかしたら外交官に会わせたくなかった。下手な事を言われて混乱を巻き起こされても困る?
なるほど。外国の出方まで先読みされていたとは御見それいたしました)
民衆と共に処刑を見ていたブレンドルが。
「ルクイッド。どう見る」
「どう見るったって、隊長様が読み上げた通りだろう。廃嫡されても生きてる。そう信じるさ」
「おっさんは冷血だねぇ。まぁ解からんでもない。だけどねぇ」
「俺はこう考えた。既に処刑を執行されて他国を欺く為に今回の演説会を催した。処刑なんて言ったら集客にもってこいだ。
その上、この国の立役者だと誰もが知っている。
あの国王さんのやりそうなこった」
「あなたぁ大丈夫なの」
「この程度でしょっ引けるもんじゃねぇさ」
「ブレンドルは隊長さんの演説が信用できないと?」
「ギルド長様。冒険者は?」
「自分の目で確かめろ」
「良く出来ました」
「俺が先輩でギルド長だ。
で、ブレンドル様はどうするお積りで?」
「今よぉカガミザキホテルに泊まってんの」
「スイートルームよぉぉ」
「マジでかよ」
「マジで言ってる?」
「「マジぃ」」
「倹約家のラーライナがぁ?」
「メルナちゃん羨ましい?」
「な 何言ってやがる。う
「リットちゃんにぃぃ招待券貰ったのぉぉ
「はぁぁぁ?」
「優待券も有るわよぉぉ。ほらぁ」
「「マジかよ」」
「だからぁぁ言ってるじゃないのぉぉ。きのうのリムジン見なかった?」
「あれラーライナ達ぃ」
「「そぉぉ」」
「きぃぃぃ悔しぃぃ。あそこにラウンジって言うのが在るだろ」
「あるわよぉ」
「茶ぁ奢んな」
「仕方ないわねぇ」
「ルクイッドは?」
「行くに決まってるだろうが。そこで話しするんだろ」
「んじゃぁホテルの転移紋へ行くか。あの角からならいいだろう」
「「「了解」」」




