黒猫によるチャラ男更生
「ルーイくんっ」
その人は相変わらず木の上にいた。
「あ、澪チャン」
私が声をかけると木から降りてきた。
「俺、セフレ切ったよ!」
「うん、周りは今はその話題で持ちきりだよ」
「でもセフレ居なくなったから、もっと寒くなっちゃった!澪チャン暖めてよ」
またそんな冗談を…
「あのさ、セフレ切るのはいいけど、口すらきかないってのはちょっと自分勝手過ぎない?」
「え…」
「自分からセフレ作って、自分で切って、口すらきかない、そうやって振り回してさ、その子らの気持ちはどうなるの?」
「え…だって、みんな気持ちよくなりたいからで気持ちなんて…」
「違うでしょ。気持ちよくなりたいのはあなただけ。もっとちゃんと相手もみてやんなよ。本気であなたを好きな人はいるよ」
「……恋ってなぁに?」
「は?」
いつもみたくおどけて、明るく聞いてくるその声に少しだけ…悲しみと寂しさが混ざっていた
「俺、恋ってわかんないんだよねー。なんで恋すんの?一時的なものなのに」
「瑠伊は昔の僕にそっくりだ」
そう私と似てる。
「瑠伊はなんでそう思うの?」
「…俺の親父、俺が中3の頃死んだんだ。お袋は水商売やってて、家にもなかなか帰って来なくなって…親父とはいつも喧嘩してたし、親父が死んでからは知らねー男ばっか連れてるし。好きだの、恋だの、愛だの、結婚までしても崩れる。ならそんなもん最初から無いだろ」
「…それお袋さんに言った?」
「…は?」
わけがわからない、そんな顔をする瑠伊。
だってそうでしょ?
「話し合ってもいないのに、知らない男と遊んでるって決めつけるのはおかしいだろ?水商売なら尚更。お客様って言う可能性は?親父が亡くなったなら、たった2人の家族じゃねぇか。唯一の家族…信じてやれよ。」
「でも、あいつは俺のことなんて…」
「それは瑠伊も逃げてきたからでしょ。セフレだとか言ってさ、家に帰りたくないだけだろ?今は寮なのに癖が抜けれない。瑠伊からお袋に向き合ったことある?」
「澪チャンには関係ない」
今更…。
「そうだね、関係ないよ。だから最終的にどうするかは瑠伊が決めな。…僕ね、親に捨てられてんだ。放置されてさ、親戚が気づいて引き取ってくれたけど、あの時気づかれなかったら今の僕はいない。」
驚いた瑠伊だったが
そこにはいつものチャラついた表情はなく
真剣な面持ちで聞いていた。
「親戚に聞かされた話だったから、何かの間違いだと思いたくて、自分から母親と話し合ってね、真実を知った。本当に要らなくて捨てられたってわかった。傷ついてないって言ったら嘘だけど、スッキリはした。」
だから話してみなよ。
もしもの時は僕がまた話を聞くよ。
そう言うと、瑠伊は
「ありがとう…お袋と話し合ってみるよ。少しは信じてみっかな、2人の愛ってやつを」
俺も恋してみよーかなー。
なんて呟く瑠伊くんの顔はとても清々(すがすが)しかった。
きっと瑠伊は今まで本心を晒せなくて、冗談で誤魔化して来たんだと思う。




