絶望
2人は部屋に入って"僕"の顔を見ると、それぞれ違う反応を見せた。
おじいちゃんは安心した様子。
おばあちゃんは気遣うような素振り。
あからさまに嫌そうな顔をしなかったのでひとまず安心、と言ったところだろうか。
しかし、まだ2人の心境を聞き出していない。
故に、まだ安心しきることは出来なかった。
でも、愛理と初めてこの身体で会ったときはそんなこと思わなかったけどな…
冷静だと思っていた頭だが、やはり少しは困惑していたのか。
それよりも。
今は2人ときっちり話さなければ。
でも、何を?
話題に困って「うーん…」と唸る"僕"に話しかけてくれたのは、おばあちゃんだった。
「具合はどう?」という、如何にも患者と話す感じで話は始まったわけで。
「うん。気分が悪いとかはないよ。平気。」
「そう。安心したわ。5日間も起きなかったんですもの。心配しましたよ?ねぇ、おじいさん?」
「あぁ、そうだな。何にせよ、早く治すんだぞ?もう少しで学校も始まるし、何かと忙しいだろうからな。」
「そうねぇ。早く治って、また一緒に暮らしたいものね。」
この会話から察するに2人はままだ"僕"が転換した事について触れたくないのだろうか。やはり、もう少し時間をおいた方が"僕"にとって良いと考えてくれているのだろうか。
でも、いずれ通る道なのだ。今終わらせておいても大丈夫だろう。2人には悪いが、こちらから切り出させてもらうとしよう。
「あー、えっとその、"僕"、女の子になってしまったわけでして…その、おじいちゃんとおばあちゃんは、今の"僕"についてどう思っているのかなって…気になるんですけど。そこは聞いても大丈夫、ですか?」
2人は笑顔で固まる。もちろん、今この話を切り出してくるとは思わなかったのだろう。困ったように顔を見合わせて「どうする?」と目で会話しているように思える。が、まだ誰も口を開かない。
ふぅ、と一つ息を吐きながら、"僕"に向き合うおじいちゃん。少し緊張した面もちで、口を開く。
「…儂は、その、何というかの…まだ受け入れられてない。」
見えている景色が一瞬にして白っぽくなった。何というか、見えてるんだけれど、色が無くなってゆくのだ。
おじいちゃんが着てる茶色のベストも。
おばあちゃんの煌びやかなかんざしも。
お土産のりんごも。
どんどん色を失っていく。
そこに名前を付けるならば、「絶望」だろう。
あぁ、そうか、"僕"は、受け入れられなかったか。仕方ないよなぁ。だって、いきなり女の子が「僕はアナタの親戚です!」ってやってきても、そう簡単に受け入れられないもんな。仕方のないこと、なんだよな。
そう結論付けた。少なくとも覚悟はしていたつもりだ。拒絶されるだろうというのも考えていた。
でも、それでも。
親戚で、一緒に住んでて、ずっと顔を見続けてきた子を、変わってしまった姿でも、受け入れてくれるだろうという甘い考えを捨てきれずにいたのも事実。
"僕"は、意識せずに、泣いていた。
笑顔なんだけれど、涙が頬を伝って落ちた。
大好きな2人に受け入れてもらえなかったという事実が、純粋に悲しかった。
"僕"は、布団に顔をうずめて泣き続けた。
声を殺していたつもりだが、完全には抑えられていなかった。
2人はそんな"僕"を、静かに見ている。
どんな表情で"僕"を見ているのだろうか。
どんな心境で"僕"を見ているのだろうか。
2人を見ることが出来ないまま、室内には"僕"の泣き声が静かに響いていた。
文が堅いですかね…
日常の話になったらもっと柔らかい文にしようと思います。
これまでのようにシリアスな場面では、変わらず堅い表現で書いていきたいです。
評価の方、お待ちしてます!
是非是非よろしくお願いします!




