再会
"僕"が治療を受けている病院は、"僕"と同じような病気をわずらっている人を数名請け負っている。そして『性転換型記憶障害』専用のリハビリプログラムや設備も整っている、いわば専門病院のようなもの。この病気が発見されて3年と認知度が低いながら、世界でトップレベルの治療技術を持っている。患者が望めば、"忘れたかった記憶"も思い出させることが出来る。
しかし、そのトップレベルの技術をもってしても、性別を元に戻すことは不可能。故に、患者は自分の今の姿と付き合っていかねばならないのである。
幸い、"僕"はこの姿が好きだ。女の子ならファッションの幅も広がるだろうし、何より可愛い。"僕"は付き合っていける。でも、妹やおじいちゃん、おばあちゃんは大丈夫だろうか…
妹にはこの間顔を合わせたから、面識は皆無というわけではない。でも、おじいちゃんは転換前の"僕"を可愛がってくれた。おばあちゃんもそうだ。だから、今のこの"僕"を受け入れてくれるのだろうかと心配している。
もしかすると、おじいちゃん達が好きだったのは"転換前の僕"なのかもしれない。
コンコン、とドアをノックする音が聞こえる。
今は12時42分。13時10分の検診時間にはまだ早い。誰だろう?
「葵?入るよ」
と、聞き覚えのある声が話しかけてきた。
その瞬間、"僕"に緊張が走った。
おじいちゃんだ。。。
まだ、心の準備ができてないのに。。。
慌てる"僕"のことを知ってか知らずか、ドアはゆっくりと開いていく。
そして、ドアからおじいちゃんとおばあちゃんが入ってきた。




