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不思議な病気のある世界  作者: 永山次郎
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記憶の一部


 「つまり、どういうこと?」


 "僕"は愛理に聞いた。女の子に変わってしまったのを直ぐに受け入れた頭とは思えない。どうも要領が悪い。

 というか、病名だけを告げられても…頭いい子しか分からないでしょ。


 性転換型記憶障害、というものらしい。


 この病気の症状は、

 『精神に激しいショックを与えられ、その出来事を忘れようとする自己防衛本能が働くときに稀に発症する病気。普通の記憶障害と違うのは、忘れたいショックが大きすぎた場合に自分そのものを変えてしまおうとすること』らしいです。


 なるほど。つまり"僕"は、性別を変えてまで忘れたい"何か"に遭遇してしまったわけですか。


 しかし、"僕"にはその「忘れたい"何か"」のことが全く分かりません。身体を変えてまで忘れたかったのに、今覚えてたら意味ないよなと自嘲しながら考えてみましたが、やはり見当がつきません。


 愛理に聞いてみようか…?


 いやしかし、愛理が知ってることなのだろうか。もしかしたら、"僕"1人で抱え込んでいたことかもしれない。もしそうだとしたら、性転換前の"僕"に失礼では無かろうか。否、そうに違いない。


 勝手に自己完結したところで愛理が

 「何が起こったか…分かる?」と心配そうな顔で聞いてくれた。さすが"僕"の妹。分かってらっしゃる。


 「それが、全く…」


 自分で無知をさらすのは恥ずかしいな…と笑顔でごまかしながらこの先を促す。


 妹は躊躇いつつ、それでいて急に涙ぐみながら口を開いた。


 「お兄ちゃん、お父さんお母さんと一緒に、事故にあったんだよ?」





 え?

 事故?

 そうなの?

 というか、





 「えっと…お父さんと、お母さん…?」





 どうやら"僕"は、自分の両親のことを忘れていたらしい。

 ほら、妹もそんなまさか!って顔でこっち見てるし。

 "僕"と妹、おじいちゃんにおばあちゃんの4人家族でしょ?なんて言ったら殴られそうだな…


 でも、そっか。

 "僕"にも、両親、いたのか。

 なんだか、嬉しいな


 この後、妹の説明も上の空でどんな親だったのかなど想像していたことは内緒だ。



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