目を覚ますと『愛理side』
階段を必死に駆け上がっていく。
もう少し。もう少し上がれば、そこには笑顔で迎えてくれる優しい兄の姿がある。
制止してくる兄の担当医を振り切ってどのくらい走っただろうか。一緒に来てくれたおばあちゃんにも迷惑かけたかな。などと考えながら走り続けた。
着いた。紛れもない、兄の病室。
5日間も寝ていたと聞き、死んでしまったのではと心配もした。その兄の病室の前に、ちゃんと着くことが出来た。
感極まって勢いよくスライドしてしまったドアをしりめに、大きな声で「お兄ちゃん!」と叫んだ。
しかし、そこにいたのはとても綺麗な女の子。
あれ、私、部屋間違えた?
病室前の札を見ても、書いてあるのは『鈴木葵』。兄の名前である。
室内に目を戻す。兄の姿は見当たらず、いるはずのベッドの上に座っているのは見知らぬ女の子。
あれ、間違えた?でも、ここお兄ちゃんの部屋だし、だけど、あの子誰?お兄ちゃんの知り合い?
1人で混乱していると、女の子は私に微笑んできた。
その子の微笑みは春の日差しのように温かく、とても柔らかい笑顔だった。髪がさらさらと風に揺れ、女の私でもドキッとしてしまうほど彼女の笑顔は魅力的だった。
ここでふと思い出す。
この笑顔、知ってる。私が一番分かってる。
この笑顔で、泣きそうな私をいつも慰めてくれた。
でも、そんな、まさか、こんなことって…
言いしれぬ緊張で乾いた唇を一度濡らし、重い口を開いて、"彼女"に声をかけた。
「お兄ちゃん、女の子になったの…?」




