ギリギリセーフでございます
おかしい…なんかおかしい…
百合たちを待ってまだ数分も経ってないけれど、廊下をゆく人たちがチラチラと僕をみている気がする…気のせいかな…
あ、また目があった。今度は女の子だ。歩きながら僕を見ていた…と思う。見ていたと思うってのは、目があったと思った次の瞬間にパッと逸らされたから、確証がなかったのさ。
…僕の顔になにかついてるのかな…?
あいにく今は手鏡を持っていない。なのでおかしなところは分からない。うーむ…
あ、女子トイレに鏡あったじゃん。杏奈たち呼ぶついでに覗いてこよーっと。
ーーーーー
「おーい、もうそろそろ行くよー。先生にも報告しなきゃだろー?」
…返事なし。便器のドアも全部開いている。まさか、先に職員室に行ったのか?トイレから少し離れたところで待ってたのに、なんで気づかなかったんだろう…
まぁ、いいか。報告しに行ったということにして、さっさと教室に戻ろう。あと…3分か…3分!?
「やばっ!間に合わないじゃん!鏡は…えぇい!教室にあるからそこでいいや!」
それから僕は一生懸命走った。頑張った。うん。頑張ったよ。
間に合わなかったけど。
ーーーーー
「遅れてすみません!」
そう言って僕は教室に入った。でも先生はいない。おかしいな、授業は始まってるはずなのに…
黒板を見ると、『4校時は自習。静かにお願いします』と書かれていた。なんだよ!走り損じゃん!
はぁ、とため息をつきながら自分の席に向かう。やはり視線を感じる…何故…
席に座ると肩が少し温かくなった。見ると誰かのジャージが掛かっていた。名前を見ると『里山昴』と書いてあった。…昴のかぁ…
僕はそっとジャージを脱ごうとした。が、柔らかい手で何者かに阻まれた。
パッと後ろを見ると、そこにはちょっと呆れ顔の百合が。
「百合、その手を離してくれ。これは昴のジャージだ。彼に返さなければならない」
「その心は?」
「昴のジャージ着てるなんて考えたらサブイボが止まらないんだ」
「あっちゃん、口悪いよ…ほら、昴くん机に突っ伏しちゃったじゃん」
隣を見ると、確かにうな垂れている昴の姿が。
「イーンダヨー、ボクナリノアイジョーヒョーゲンナンダカラー」
「ダウトー。棒読みすぎるよあっちゃん。」
ビシッと指を僕に向けながらそう言う百合。人を指差すのはやめなさい。
「ときに昴や」
「へい、なんでしょう姉御」
声を掛けるとゲスい笑顔でそう答える昴。うん、そのノリ好きだけど。確かに楽しいけど、僕ぁその顔は嫌いだな。
「ゴホン!なんで君のジャージが僕に掛かっているのかな?僕は君の椅子じゃないんだが?」
そう問うと、問われた昴はポカーンとした。
そしてなにかを察すると、小声でこう言って来た。
ー今日は水色なんですね。ー




