トイレ掃除その1にございます
1人称の表記を少し分かりやすくしました。
杏奈が“あたし”で、百合恵が“わたし”です。
「装備を確認しますか?」yes or no
ー yes ー
装備内容:頭 シュシュ
体 セーラー服
手 使い捨て用ビニール手袋
足 長靴
武器 デッキブラシ
…なんでRPG風に始まったのかというと、杏奈がしつこく装備うんたらを言ってくるもんだから仕方なく乗ったんです。はい説明完了。
じゃなくて。掃除する場所について異論がある!
「なんで僕がデッキブラシ持ってるの!?」
「えっ」
「どうしてって言われましても…ねぇ?」
「ねぇ?じゃないよ!僕あんまり便器触りたくないって言ったじゃん!」
「いや、そのデッキブラシは床を掃除するんだよ?」
「あ、そうか」
そう、僕(中の人)の県では床に排水溝があって、水垂れ流しーの洗剤ばらまきーのデッキブラシでこすりーの泡流しーのっていう掃除ができるんです。便利でしょ?あ、どこの県も一緒?それは失礼。
閑話休題。
「でもなー。デッキブラシで掃除って、力使うからなー。僕、いや、あたし力ないからできなーい♡お箸より重いもの持ったことないものー♡」
って感じでボケてみれば、
「あっちゃん、キャラおかしくなってるよ」
「力ないアピールするあっちゃんあざと可愛い」
と百合には冷静に突っ込まれ、杏奈は訳の分からんことをぬかしてきた。
「てゆーか、杏奈が床掃除やってよ。力有り余ってるでしょ?」
「有り余ってるって言い方はないでしょ!だいたいね、あたしは便器掃除なの。みんな嫌がると思って率先してやるの。別に代わってあげてもいいけど?」
そうか。杏奈は便器掃除するのか。ふーん…
「どうぞ心置きなく職務を全うされて下さい」
「どれだけ便器触りたくないんですか」
と百合に突っ込まれるが気にしない。なんか、ばっちぃじゃん。
そう反論すると「だから掃除するんですよ?」と諭すように正論を言ってきた。
まぁ、確かにそうなんだけど。子供に諭すように言うのだけはやめろ。なんか腹立つ。
「そんな百合はどこ掃除するのさ!」
「わたし?わたしはそこの窓をこれで拭こうかなって」
そう言う百合の手には新聞紙と何とかっていう霧吹きが。窓に数回吹きかけて新聞紙で磨くとあら不思議。みるみるうちに綺麗になっていきますっていうあれ。
「何それ楽しそう!僕それやりたい!」
「ダーメ。わたしの方が身長高いんだから、わたしに任せなさい。それにあっちゃんじゃ届かないでしょ?」
さらっと毒吐いたよこの子。ナチュラルに攻撃してきたよ。
「んな、失礼だぞキミ!人をバカにするのも大概にしてくれたまえ!しかも5センチくらいしか変わらないじゃん!」
「ふっふっふ。窓拭きを舐めないでもらいたい。その5センチが決定的な差なのだよワトソン君!」
「百合っちキャラぶれぶれだよ」
「な、なんだってー!?」
「あっちゃんもか」
「試しにやってみる?」
「あ、流された」
「ふっ。そこらの人間と僕の差を見せつけてやろうではないか」
「こっちにも流された」
僕は百合から窓拭きセットを受け取り、高くそびえ立つ窓と対峙した。横で杏奈が何か言ってたようだけどきっと気のせいだ。扱いが悪いんじゃない。これは、そう、愛だ。愛ゆえに流してるんだ。
僕は右手に構えた霧吹きを窓に向かって発射した。命中!そのまま蜂の巣にしてやる!
シュッシュッシュッシュッシュッシュッシュッシュッシュッsh「かけすぎ」
20プッシュくらいしたところで百合に取られた。窓を見てみると思った以上に泡が。…うん。確かにかけすぎた。
百合にジェスチャーで軽く謝った後、ここからが本番。左手に持った畳んである新聞紙を右手に持ち替え、窓へと向かう。覚悟っ!
順調に拭き進めていく。なんだ簡単じゃないか。百合に向かってそんな顔をしてみると、百合はなにやらニヤニヤと笑っている。
そのニヤニヤの意味が分かったのは、窓の下の3分の1を拭き終わった時だった。
二の腕が痛い。思ったよりも力を使ったようだ。さらに二の腕を負傷したことで腕が上がらず、上の方に届くことはなかった。
「どう?分かった?」
ニヤニヤと笑いながら百合がこちらに問いかける。腹が立つが、今回は完敗だ。
「…どうぞ、百合さんも掃除に精を出してください」
「はーい頑張りまーす」
そう言って百合は“窓の上の方から”拭いていく。なるほど、あれなら効率がいい。
杏奈を見ると、こちらも一生懸命に便器と言う悪魔と戦っている。
僕も大人しく床の掃除に戻ろう。
ホースを蛇口につけながら、2人に対してなんとかいたずらしてやる!と頭を回転させてゆく。
そうだ。トイレ掃除でのいたずらといえば、あれが定番だな。アイディアが浮かんだ僕は、2人に見えない位置でほくそ笑んだ。
さぁ、ショータイムだ。
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