おやつの定義にございます
はぁ、とため息をつく。
前から分かっていたことだ。
自分でも気づいていた。
周りも当然気づいていただろう。
僕はアイツのことが好きだ。
身体がプニプニで、つつくとプルプルと震える。
黄色が似合う、アイツのことが。
そう。僕は、
プリンが好きだ。
口の中に広がる甘い味わい。
鼻腔を吹き抜ける甘味な香り。
あの滑らかなのどごし。
そしてなにより、あの愛らしい形が凄く好きだ。
ここまで書いてみると、割と僕は女の子になりきれるかもしれない。いや、別に今の僕のままで良いと思うんだけど、女の子してた方が友達も増えるかなって思ったり思わなかったり。要約すると、僕と女の子の接点は『甘いものとお菓子』ということになる。
しかし、その接点が今閉ざされようとしていた。
それも、身近な障害によって、だ。
まさか、おやつ一週間抜きという罰があるとは…これは…キツいな…
僕の身体は1/6が甘いもので出来ていると自分で思っている。
事実、朝は甘いメープルシロップのたっぷりかかったカリカリのトーストとアイスティー。
お昼には軽くチョコレート菓子をつまむ。
おやつは言わずもがな欠かさず食べている。
夜はキシリトールガムで我慢するが…
ほとんどの時間帯で甘いものを採っていることがお分かりいただけたであろう。
しかし、それが無くなってしまうとなると…考えるだけで恐ろしいのに、これが明日から始まってしまうのだ。
ため息の1つや2つ出ても仕方のないことだ。
しかし、罰は罰。甘んじて受け止めようではないか。元男として、負けられない戦いがここにあるのだ!
ーーーーー
あれから数時間。
夜ご飯が終わり、いつもの習慣でキシリトールガムを噛もうとする。すると横から手が伸びてきて取り上げられた。あっという間だった。
何故かと問いつめると、甘いものはダメじゃないかと指摘が飛んできた。
しかし、僕は引き下がれない。
ここは僕の最後の砦。戦ってやる!
取り上げたキシリトールガムを咀嚼している愛理に詰め寄り、僕の意見を叩きつける。
「規制されているのは"おやつ"ですよね???」
「えぇ。おやつ一週間抜きですよ?」
「では、この"晩ご飯後のキシリトールガムを噛む"という行為もおやつに入るんですか!?」
「私は入ると思います!」
「そうですか。しかしそれではそちらの思うように罪の重さが変えられます。これは不公平ではないでしょうか!!」
「と言いますと?」
「そもそも刑罰は、相手の行動や言動を反省させるための1つの手段だと僕は考えています。しかし、いくら反省しても罪の重さと刑罰の重さが釣り合わないのは権力を振りかざした暴力ではないでしょうか!?」
「うんうん。お姉ちゃんの言うことも一理あるね。」
「なら…」
「でも、お姉ちゃん。さっきの家族会議で『おやつの定義』について決めなかったよね?」
沈黙。
そう、僕は気付いていれど指摘していなかったのだ。否、指摘できなかった。あまりの大きな罰に声はおろか動くことも出来なかった。
愛理は続ける。
「それってつまり、こちらにおやつの定義を任せたってことだよね?」
返せない。反論の余地がない。このままでは負けてしまう!
なんとか足掻こうとする僕を尻目に、愛理がトドメを刺してきた。
「私たちの考えるおやつとは、"全ての甘い食べ物"だから。頑張ってね♪」
やられた…妹に論破された…完全敗北…
僕は膝から崩れ落ち、この先耐えられるかどうかと不安になってきた。




