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不思議な病気のある世界  作者: 永山次郎
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罪人(葵)の帰宅にございます


 なんて要領の悪い頭なのだろう…そう自分を責めたくなる。いや、容量か。あながち後者の漢字でも当てはまるのだからなんとも言えない気持ちになる。


 ため息を1つつき、心の底からまた思う。

 なんて容量の悪い頭なのだろう、と。


 ーーーーー


 ほんの数10分前の話に遡るとしようか。

 翔との誤解が解け、みんなでじゃれ合いながら帰路に就いた僕たち。

 偶然なのか、百合の家も昴の家も一郎君の家も僕ら家付近だった。

 これにはみんなで驚いた。そして、これからはみんなで集まって登校しようという事になり、朝から昴の顔を見たくないと軽口をたたきながらもそれを承諾。朝の8時に集まることが決まった。


 低血圧の僕は朝テンションが低く、登校中はみんなの話にノリノリで返せないだろうけど、なんだかそれすらも楽しそうだ。そう感じるのはきっとこのメンバーだからだなって思うと、胸がとても温かい物で満たされた。


 女の子の身体になってから、胸が満たされるという現象がよく起こる。やはり女の子は感情が多いんだろうなと思った。

 感情が多いって言葉に疑問符がたくさん浮かんできたが、なんとなく伝わっただろうという言い訳で思考を放棄。


 そして各自家の前についた。

 みんなに「また明日。」と告げ、家に入ろうとしたその時。


 ある事実を思い出し青ざめた。


 みなさんも覚えているだろうか…?

 足を刺され入院したときにできた我が家の新しい条例を。


 『寄り道禁止条例』。

 その名前の通り、学校から帰ってくるときに寄り道は一切せず、真っ直ぐに帰ってこいよという小学校低学年でも理解・行動が出来る単純な決めごとである。

 もちろん、帰ってきたらずっと家の中に居とくのかと言われればそうではない。

 おじいちゃん及びおばあちゃんの許可を得たら行き先、遊ぶメンバー、帰宅予定時間、携帯の所持の確認を終わらせて遊びに行くとが出来る。どこの家にもある最低限のルールだろう。


 それが決まったのはほんの数日前。

 いくら要領(容量)が悪い頭といえど、こんなにも早い段階で忘れることが出来るだろうか?


 そして、(愛理)は言った。

 『もしも破るようなことがあれば、家族会議で処分を決めようじゃないか。』と。


 これは…詰んだ…チェックメイトだ…

 できればこのまま家に入りたくない。いや、早く入って罪を軽くした方が良いんだろうけど、もう少し先延ばしにしても良いんじゃないかと囁いてくるなにかがいる。


 そうだよ。なにも今すぐに帰らなくても、適当に理由をつけて連絡した後に帰ればなんとかなるじゃないか。

 そう思い、茶番をするために携帯を取り出す。


 「…っ!!!」


 そして、新着メールと不在着信の量の多さに息を呑む。


 新着メール:32件

 不在着信:54件


 更に驚くべきは、その送り主。

 全て愛理。

 メールも愛理。電話も愛理。


 メールの内容は、

 『もう学校終わったよね?』

 『今どこを歩いてるの?』

 『どのくらいで着くの?』

 『今頃の時間なら、もうとっくに家に着いてるはずなんだけど…どうして居ないの?』

 という類の物だった。


 ほんのちょっと恐怖心を植えられた気がする。

 ここまで同じ人に行動の1つ1つを報告しなければいけないものなのかと、便利なのか不便なのか分からなくなった携帯を片手に少し震える。


 やっぱり逃げようと思い、僕はドアに背を向けた。


 するとドアの方からガチャッと音がした。

 それと同時に新着メールを1件受信。


 送り主は、愛理。


 内容は…


 『おかえりなさい。待ってたよ…ずっと…』




 ゾクンと悪寒が凄い勢いで走った


 後ろをゆっくりと振り向くと


 少し開いたドアの隙間から


 こちらを覗き怖い笑顔を浮かべている愛理が



 そして僕は、悲鳴を上げる隙もなく家の中に引きずり込まれた。


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