運動場隅の木陰から
女の子になってしまってから、僕の周りの環境は結構変わったと思う。
おじいちゃんには携帯電話を買ってもらったし、クラスの女子生徒とも仲良くなれそうだし。男子はまだ慣れないけどな。すまぬ男子。もう少ししてからな。
そして、一番気がかりかつ大きな悩みなのが『翔と今まで通り遊ぶ回数が減った』ことだ。というか、学校内でも避けられているような…?
どうしてだろうか。
転換当初、彼は『葵は葵だろ?』と声をかけてくれた。つまり、僕のことを気にかけてくれていると推測できる。
では何故?
それは、純粋に"男と女の壁"が出来てしまったって所だろうな…
彼も彼なりに僕との接し方で悩んでいたのかもしれない。もしそうだとしたら、気づけなかった僕も悪いのだが一言言ってくれれば良かったのに…
『………い…』
クラスが違うって言うところにも問題がありそうだけどな。それは向こうがこっちに来てくれればいいんだ。杏奈みたいに。
『…あ…い…』
杏奈はあれから毎日来てるな…それはそれで困る。他に友達いないんじゃないのって心配になる勢いだ。
『…あおい…』
ん?呼ばれた?気のせいか。
あ!もしかして…僕の他にすごく仲の良くなった友達が出来たとか!?そんな!翔と疎遠になるなんて…今まで一緒にいたから嫌だ!
「葵っ!!」
「はひぃっ!」
大声で呼ばれて変な返事をする。そうか、やはり呼ばれてたか。誰だ?
目の前には前屈みでこちらを覗く爆弾が、いや、百合が心配そうにこちらを見ていた。
ちなみに今は体育。運動場にて陸上競技の練習が行われている。僕はケガしているので大きな木の木陰で待機していた。
「大丈夫なの?痛いの?」
「いや、だから大丈夫なんだって。激しく運動できないからみんなの体育を見ていただけじゃないか。」
「それにしては遠い目をしてたけど?」
「してないもん。」
「声かけたけど反応なかったよ?」
「反応したもん。」
「目の前で手も振ったけど?」
「気づいてたし。」
「本当?」「本当だもん。」
「手を振ったっていうの、嘘だよ?」
…
……
………
「騙したなっ!?」
「騙されたなっ!?」
まったく、百合にはかなわないぜ…
肩をすくめてやれやれと言いながら首を左右に振る。うむ。実にアメリカン。この仕草はこれからも使っていこう。
「で?なに考えてたの?」
百合が曇りのない目で僕を見つめながら問いかけてくる。誤魔化していてもなんにもならないので、素直に答える。
「翔って言う幼なじみがいるんだけど…」
「あ、こないだ一緒にファミレス行った子?」
「そうそう。そいつと小学校の頃いつも遊んでたのに、最近では学校でも避けられてる気がするんだ…なにかしたのかな僕?って思って。」
そういうと苦笑いする百合。えっ、なにか知ってるの?聞いてみると「お年頃ですよ。」と返ってきた。
…それ、答えになってる?
「つまり、翔くんは思春期なんじゃないですか?」
「ほう。思春期とな。」
「えぇ。この年になると異性を意識し始めたりそういうことにも目覚めますからね。いくら遅くてもすでに思春期に入られたかと思います。」
「なるほど。して、思春期の特徴はいかに?」
「異性といるところを見られてしまうとあらぬ噂を立てられたり、付き合っている人たちを茶化したりします。しかし、茶化される側に回らないよう接点を拒む人もいますね。」
「なんか、悲しい時期だな…」
「誰もが一度は通る道ですしねー。」
なんか、語っている百合が年上のお姉さんみたいだ。人生経験豊富そうな話し方してる。胸もこれ以上成長なさるおつもりですか?
「つまり?」
「翔くんは葵に近づいてあらぬ噂を立てられないように避けているのでは?と予想しておきます。」
よし。予測はたった。後は、本人に聞くだけだな。
ここまで僕の疑問に付き合ってくれた百合にはお礼を言っておく。今度クッキーでも作ってきてやろう。そういうととても喜んでくれた。そんなに喜んでくれるなら、頑張って練習しようかな!
よし。じゃ、この授業が終わったら本人に直接聞きに行きますか!とりあえず、今はこの木陰からみんなの姿を眺めておこう。
あ、百合は今すぐ陸上練習に戻れな?
葵「あ、百合。ちょっと待った。」
百「?どうしました?」
葵「いや、些細なことなんだがな?」
百「えぇ。」
葵「どうして敬語になったりタメ語になったりするんだ?」
百「あー…それはー…」
葵「言いづらい内容なのか?」
百「いえ、そういうわけではないんですが。」
葵「じゃあ、理由をお聞かせ願えるか?」
百「…筆者のその日のテンションや体調で変わるらしいです…」
葵「…」
百「…」
葵「…早く安定するといいな。」
百「…私もそう思います…」
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僕の中で、百合はお金持ちだけど少し控え目な性格って感じです。そして、仲良くなった人とも敬語ってイメージですね。
でもたまにタメ語にさせたいと思います。気分によって、ですが。




