任務を遂行しましょう
引きずられるように店の外に出される。抵抗する気力が僕にはなく、みんなも暴れるようなことはしなかった。
そういえば一連の流れは店の中で行われてたな。周りの目はどうだったのだろうか。翔は気づいてないのか。いろいろ考えては消え、考えては消える。
もう、ここから逃げ出す方法はないのか。
これを考えると、今度は消えずにもくもくと不安が膨れ上がってきた。
そこから分岐し、逃げられなかった末路を考えたら、身体が硬直するほど恐ろしいことに行き着いた。
彼らはカラオケに行くと言っていた。
カラオケは、防音で密室だ。
なにをしても、バレない。
なにをしても、気づかれない。
なにをしても…なにをしても…
僕だって元男だ。そこでどんなことしようとしてるのか想像はつく。昔どこかの漫画で見たこともある。
仲が良さそうにカラオケに入って、そこで押し倒して、そして…襲うんだ。
僕たちは、その女の子のほう。つまり…
ここで我に返った。逃げなければ。僕が逃げられなくても、せめて杏奈と百合だけは逃がさないと。
しかし、手遅れだった。もうカラオケの受付にいる。しかも今ちょうど精算が終わり、部屋に向かおうとしているところだった。
助けてっ!
叫べない。口は開くが、声がでない。怖い。怖いよ…
息だけが開いた口から漏れる。酸欠になりそうなほど繰り返した。希望は捨てたくない。
「…けて…」
少しだけ、小さな声がでた。今なら行ける!
なんだ?という表情でこちらを見、一瞬隙が生まれたところで僕は行動を起こした。
「助けてっ!助けてっ!お願い誰か助けてっ!」
そう言いながらバタバタともがく。
慌てたようにリーダーは押さえ込もうとする。しかし1人では捕まえられない。僕なりの火事場の馬鹿力だ。そう簡単に押さえ込まれては堪らない。
バタバタと暴れながら叫ぶ僕を押さえ込むのに、残った2人がすぐに加勢する。当然百合と杏奈の手は離す。
今だっ!
「百合!杏奈!走れ!」
こうして2人を助けることには成功した。
しかし、僕の身の危険は去らなかった。むしろ今からが危ないような気がする。
肩を抱いて震える僕を、3人の茶髪男が睨みながら見下ろしてくる。
でも、2人は逃がせたし、とりあえずは任務完了かな。そう思い込み、震えながらも3人に不敵な笑みをプレゼントする。
すると、リーダーが動いた。
手になにか光る物を持って、こちらに近づく。
どこから取り出したのだろうか。
銀色に輝くそれは、17㎝をゆうに越えるサバイバルナイフだった。




