安心のち恐怖
みなさんは"女の勘"というものをご存知だろうか。
曰く、"直感で何もかも見通してしまう、女性ならではの特権(?)"のことだそう。恐ろしい…
その女の勘とやらで、瑞樹さんは"僕"のことを鈴木葵だと見抜いたらしい。すごい。女の勘すごい。
これから女性に隠し事するときは気をつけよう。
そう心に決める葵と翔であった。
「それで、"僕"のこと、どう思います?」
もちろんこの質問は、好きか否かという答えを求めたのではない。これからも友達でいてくれるのか、やっぱり無理なのか。という答えが欲しいのだ。
「私は好きよー葵ちゃん♡だって可愛いもの♡」
瑞樹さんには、ストレートに言わなければ分からないようだ。違う、違うよ瑞樹さん。
「瑞樹さん…そういうことじゃなくてですね…なんていうかその…これからも友達でいてくれるかなーって…」
よし。ちゃんと言えたぞ。しどろもどろだったけど、さすがに伝わっただろ。
すると、今度は翔が口を開き一言。
「質問の意図が分かりかねる。」
ん?質問の意味が分からないって?いやだから、
「これからも友達でいてくれるかなって意味だぞ?」
「だから、その質問の意味が分んねぇんだって。それじゃまるで、俺らが友達辞めちまうみてぇじゃんかよ。んなことあるわけねぇだろ。」
で、でも!
「"僕"、女の子になっちゃったんだよ!?急に女の子になるなんて、そんな馬鹿なことあるわけないじゃんか!だからっ!」
「そんなの関係ねぇよ!」
大声でまくし立てたら、大声で返された。
男の声でけぇ…なんだこれ少しビクってなったぞ…でも、冷静になれた。
翔は続ける。
「関係ねぇよ。葵は葵だろ?それ以上でもそれ以下でもねぇよ。男と女っていう壁は多少出来るかもしれねぇが、友達にかわりはねぇよ。安心しろ。杏奈も同じだろ。」
なるほど。それが翔の考え方なのか。大人だな。
ここは素直になっておくか。
「ありがとな、翔。」
「おう。個人的には今の話し方の方がいいけどな。私ってなんか、葵っぽくねぇ。」
そう言い笑う翔。釣られて僕も一緒に笑った。
心のもやもやはなくなったと思う。
別に、女の子になりきらなくても良いんじゃないかなって思った。さすがに服装は女の子っぽくしないとダメだが。口調から仕草まで全てを変えなくても、僕は僕なんだから。
あ、そうだ。
「そろそろお暇するよ。杏奈にもまだ会ってないしさ。」
そう言い立ち上がろうとした。すると玄関から
「お邪魔しまーす!瑞樹さーん!可愛いおもちゃ見つけたってなにー!?」
という声が聞こえてきた。
おー。ナイスタイミングー。会いに行く手間が省けた…ぜ…?おもちゃ?
はっとして瑞樹さんの方を見る。ニタニタしている。は、犯人はお主じゃなぁあ!?
嫌な予感がする。瑞樹さんに捕まったときよりも嫌な予感がする。全身の鳥肌がたった。逃げねば。このまま会ってしまったらヤバい気がする。時間をおこうそうしよう。
まずはソファーの影に隠れる。そして杏奈が近づいてきたらジリジリと避けていく。そして気付かれる前にダッシュで逃げよう。
行動に移す。杏奈が現れた。両手に紙袋を持っている。中身は…服か?いやそんなわけないか。普通はお古をもらう側だもんな。きっとお土産だ。オーストラリアにでも行ってきたお土産に違いない。僕のはないのかなー?
さて、現実逃避はここまでだ。死ぬか生きるかの1対1が始まる!
ジリジリと距離を置く。全く気付いていない。
ふっ、お嬢さんや。背中ががら空きですぜ?
完全に今がチャンスだ。よし。
走…れなかった
いつの間にか僕の背後に回っていた瑞樹さんにひょいと持ち上げられたのだ。
数秒間杏奈と目が合う。どんどん目がキラキラしていく。ま、まずい…
ジタバタと暴れるが時すでに遅し。がっちり抱えられているので逃げられない。後ろから
「んー。新しい制服の匂いと葵ちゃんの匂いがするー♡クンカクンカ」とか聞こえない。それどころではない。
「やめろおおおおおおおおおおおおおお!!!」
僕の断末魔だけが家に響いた。
正確には杏奈が「いただきまーす!」とか言ってたが。瑞樹さんはずっと僕の匂いを嗅いでいるが。とりあえず瑞樹さんやめろ。翔は…いつの間にかいなかった。う、裏切り者めっ!
そのあと散々おもちゃにされた。着せかえ人形というやつだ。気力も根こそぎ取られた。
ちなみに、杏奈もすぐ気付いていたらしい。分かる人には分かるんだなと思った。
とりあえず2人は胸を揉むんじゃねぇよ!




