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ふんふんふ~ん
成人男性が十五人もいれば一杯になってしまうような小さな正方形の部屋の中央に、地図を広げた机と、それを覗きこむ六人の男たちがいた。部屋には地下独特のカビ臭さと湿った空気が充満し、明りを取るため付けられたランプが少ない酸素を奪っていく。息苦しさを感じ、不満を顔に出す男たちの中で唯一、鼻歌を歌いながらワインを飲む明らかに場の空気と合っていない男がいた。
残りの五人の内の一人が、耐えられず口を開く。
「真面目にやってください、将軍」
将軍と呼ばれた男は、地図に向けていた視線を上げると、苦言を呈してきた青年に向ける。その顔は実に楽しそうであった。
「お、やっぱりレイモンド君か。ま、私に突っ込めるのなんて、君を置いて他にいないと確信していたとも」
「将軍」
青年の鋭い呼びかけに、男は苦笑する。
「レイモンド君、そんなにセカセカ生きてて楽しいのかい?いや、絶対早死にするって。どうせ一度きりの人生なんだし、もっと余裕をもってだね」
「将軍!」
「……分かったよ」
男は肩をすくめ、ワインを机に置く。
「とにかく、あちらさんより早く〝積荷〟を回収することだ。向こうに取られれば、また罠だらけの向こうのテリトリーで戦闘だからね」
男の言葉に、他の者の顔が強張る。皆の頭に思い出したくない光景が浮かんでいるのを感じつつ、男は続ける。
「私もね、嫌なんだよ。あんな訳の分からない連中とやりあうの。でも陛下があの〝積荷〟をご所望だし、それに皆には悪いけれど、私は〝無敗将軍〟なんて呼ばれているからね」
将軍は不敵に笑ってみせる。
「あんな古代遺産みたいな連中なんかに、負けるわけにはいかない。そうだろう?我が無敗の兵士たちよ」
重く、空気すら支配しそうな威厳のこもった将軍の言葉に、強張っていた男たちの顔に笑みが浮かぶ。
それは自信。
それは信頼。
「至急、フローレイン内部に詳しい者を見つけ、道案内させろ。向こうはまだ落下地点を知らない。むこうに悟られる前に、必ず見つけ出すんだ。――我らに敗北の二文字はない」
「サー!」とビシっと敬礼をして、男たちが部屋から出ていく。部屋に残ったのは、将軍とレイモンドという名の、将軍の補佐官を務める青年だった。
「ところで将軍」
「なんだい?」
いつもの軽いノリに戻った将軍に、青年が聞く。
「なぜ、こんな地下室で会議を?普通に指令室でやっても問題なかったのでは?」
もっと快適な部屋がいくつもあったはずだ、と青年が思って聞けば、将軍は「そんなことも分からないのか?」と呆れたように答えた。
「秘密基地っぽくて格好良いからに決まっているだろう!」
まるで少年のようにキラキラと目を輝かせ拳を握る我が国の盾、〝無敗将軍〟と他国から恐れられる男の姿に、彼の右腕は口をへの字に曲げる。
(本当に、残念すぎる)
将軍は今年三十歳だ。いかに若々しい顔立ちとはいえ、もう「秘密基地」などと口走っていい歳ではない。
(早く人事異動、発表にならないかな)
まもなく発表になる人事で自分がこの将軍の補佐官からはずれることを夢見て、今直面している現実から逃避するレイモンドであった。
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