決戦に向けて
将軍が本部に辿り着いたのは夜になってからで、車が駐車するとすぐにレイモンドはドアを開ける。最後に下りてきた将軍の腕に眠る少女が抱えられているのを見て、レイモンドは眉を顰めた。
「まさか、幼女に手を出したりなんて……」
「こらこら、レイモンド君、幼女だなんて、レディに対して失礼だよ。ていうかね、私に対する評価が絶対おかしいと思うのだけれど」
「嫌なら日頃の行ないを改めて下さい」
「……あぁ、テイラー君、この子と博士を部屋へ」
レイモンドの小言を無視して、将軍は先に車を下りていたテイラー部隊長に少女を渡すと指示を出した。
「さてと、レイモンド君は、警戒態勢をレベル1に上げる指示を出して、各部隊長を指令室に呼んでくれ」
「レベル1、ですか?」
それは厳戒態勢で、戦争中敵の襲撃に合った時にしか発令されないような代物だ。思わず聞き返したレイモンドに、将軍は真剣な顔をして頷く。
「恐らく、明け方に団体さんで来る」
「……何かあったんですか?」
こんなに早く戦闘になるなんて思ってもいなかった。聞くと将軍は誤魔化すように笑う。
「実は、口説いているところをあちらさんに見られてね。何かごそごそやっていたから、場所も特定されてるかも」
「なっ?!」
完璧に失敗してんじゃねぇか!という叫びを顔に出すレイモンドに、将軍は笑う。
「攫っても彼が気付かなければ意味ないだろう?あちらさんなら、必ず彼に伝えてくれると思ったんだよ。まぁ、私が出てくるってこともバレてしまったけど」
焦るレイモンドを安心させるように、将軍は不敵に笑う。
「大丈夫。まだ時間はあるさ。それに、私が居る」
こんなに変態でこんなにふざけているのに、将軍の言葉には力があった。この人が「大丈夫」と言えば本当に大丈夫な気がしてきて、何となくレイモンドは気に喰わない。「了解しました」と告げるとそのまま指示を出しに走る。
将軍は一人空を見上げる。大きな満月が美しくて、否応なく気分が高まる。
決戦は明日――将軍は戦いを前に獰猛な笑みを浮かべていた。
短いのでもう一話。




