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バルコニー  作者: ソラ
15/28

第15章:同じ食卓、同じ週末

――同じ食卓

夜、レイさんはハンバーグの皿を二つ持ち、隣の部屋のドアをノックした。


「入るぞ。」


「……はい、どうぞ。」


緊張気味のアオイさんが、少しだけ恥ずかしそうに出迎えた。


リビングに並べられた小さなテーブルに皿を置き、二人は向かい合って座る。


「いただきます。」


「い、いただきます……」


一口食べた瞬間、アオイさんの表情がパッと明るくなった。


「……ん! やっぱりおいしい!」


「よかった。」


「このソース、自分で作ったの?」


「市販のをベースにちょっと足しただけだ。」


「ちょっとでこれ!? やばい、毎日来てもいい?」


「毎日は困る。」


「ひどっ!」


笑いながら箸を進める。会話は自然に弾み、食事が終わるころには、二人の間にあった壁がほんの少し低くなったように感じられた。


「じゃ、そろそろ戻るわ。」


「……うん。今日はありがとうね。」


「またな。」


「……うん、また。」


レイさんがドアを閉めると、アオイさんは一人、しばらく黙って皿を見つめていた。


小さく微笑んで、ぽつりと呟く。


「……また、ね。」


――週末の朝

次の日。土曜日の朝。


まだ寝起きの顔のまま、アオイさんがキッチンで水を飲んでいると——


ピンポーン。


「……えっ?」


インターホンの表示に映ったのは、レイさんの顔だった。


慌ててドアを開けると、彼が立っていた。


「おはよう。準備しろ。買い物に行くぞ。」


「……へ?」


「お前、最近うちでばっかり食ってるからな。今日は買い出し手伝え。」


「……なんで急にそんな話に?」


「当然だろ。食べるなら、手伝う。」


「うわ……レイさんって……」


ふくれっ面をしながらも、アオイさんは観念したように笑った。


「しょうがないなあ……じゃあ、5分待ってて。」



数分後、ドアが開いた。


そこには、白いワンピースにライトブルーのカジュアルジャケット、サンダルを履いたちょっとしたおしゃれをしたアオイさんがいた。


レイさんは、思わず一言。


「……かわいい。」


「え? 今なんて言った?」


「いや……何も。」


「ふーん?」


「行くぞ。」


「ちょっとごまかしたでしょ……まあいいや、行こうか。」


――買い物の途中

スーパーでは、二人が小さなカゴを分担して回っていた。


「このネギ、細いのと太いの、どっちが好き?」


「太い方が甘い。」


「さすが主婦。」


「主夫な。」


「はいはい、主夫さん。」



「今日の夜ごはん、何が食べたい?」


「んー……カレー!」


「……また?」


「だってレイさんのカレー、スパイス効いてて好きなんだもん。」


「食べすぎて飽きるなよ。」


「ふふ、じゃあ一回だけにしとく。」


買い物は、思ったよりも自然だった。

まるで何年も一緒に暮らしているような、そんな不思議な空気。


――カフェにて

買い物帰り、レイさんは静かなカフェに立ち寄った。


「ちょっと休むか。」


「……いいね。」


受付で注文をしようとしたとき、店員がにっこり笑って言った。


「彼女さんですね。カップル用メニューもございますが、いかがですか?」


その瞬間——


「……あ、はい。」


レイさんが、条件反射のように答えてしまった。


隣で、アオイさんの肘がレイさんの太ももを軽く突いた。


「なっ……!」


「お客様、こちらカップルシートへどうぞ。」


二人は窓側の席に通され、向かい合って座る。


コーヒーが運ばれてきて、ひと息つく。


アオイさんは、ふくれっ面のまま言った。


「……今の、なんだったの?」


「……反射だ。」


「ほんとに?」


「……たぶん。」


「ふーん。」


彼女はコーヒーを一口飲んだあと、小さく笑った。


「まあ……いいけど。」


ガラスの向こう、街の人たちが歩いている。

でもこの空間だけ、どこかゆっくりと時が流れていた。


レイさんは窓の外を見ながら、心の中でそっと思った。


(この時間が……長く続けばいいな。)



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