第71話 雨の夜と、初めての夜
祭りの屋台をいくつか回った後、私たちは家に戻った。
予想通り、一葉さんと誠一郎さんはもう帰ってきていた。
玄関ではなく、リビングに座って静かに話していた。家の中に漂う温かな空気の中でも、真夜ちゃんの興奮は少しも冷めていなかった。
「ただいま〜!」
「ああ、おかえり。楽しかった?」
「うん! すごく楽しかった! それにお兄ちゃんがすごく感動して……」
言い終わる前に、慧翔くんと私が同時に彼女の口を塞いだ。
一葉さんと誠一郎さんが怪しそうに顔を見合わせた。
でも真夜ちゃんは、まだ話す時じゃないとすぐに察したようだった。
「何かあったの?」
一葉さんが私たちの反応を見て、不思議そうに尋ねた。
今はすべて真夜ちゃん次第だった。
「えっと……お姉ちゃんがお兄ちゃんにすごく恥ずかしいことをしちゃって、今二人とも死にそうなくらい恥ずしがってるんだ」
二人はまだ半信半疑といった様子だったけど、その説明でひとまず納得したようだった。
* * *
その話はその夜はもう蒸し返されることもなく、しばらく話した後、それぞれ自分の部屋へ戻った。
でも、ちょうど寝ようとした時、雨が降り始めた。
この辺りではあまり珍しいことじゃなかったけど、小さい頃から雷は少し苦手だった。
ただ、大丈夫でありますように……
「きゃあっ!」
突然の雷鳴に、ベッドの上で飛び起きた。
やっぱり……このままじゃ眠れそうになかった。
間もなく、ドアの向こうから三回、優しいノックが聞こえた。
「……真希、大丈夫か? 何かあったのか?」
心配させたくなかった。
今夜だけは我慢すればいい。
「ううん……大丈夫。心配してくれてありがとう、慧翔くん……きゃあっ!」
言い終わる前に、さっきよりさらに大きな雷鳴が、雨音とともに家を揺らした。
慧翔くんが明らかに心配そうに再びドアをノックした。私はベッドの上で縮こまりながら、なんとか落ち着こうとしていた。
ノックは止まなかった。
雷の音が数秒だけ弱まった時、急いで立ち上がってドアを開けた。
……あ。
やばい。
それを忘れてた。
まだ間に合う。
「ちょ、ちょっと待って……すぐ開けるから。でもその前に、あなたに見られちゃ困ることをしなきゃ」
慧翔くんは軽くうなずいた。
それだけで大きな安堵だった。
こんな姿を見られたくなかった。
急いで服を整え、晒しを巻き直して、もう少し胸が目立たないようにした。
終わると、深呼吸してドアを開けた。
彼はまだそこに立って待っていた。
でも、一言も言う前に、彼は私を腕の中へ抱き寄せた。
まったく予想外の抱擁だった。
「大丈夫か? 何度も叫び声が聞こえて、心配で仕方なかった」
「慧翔くん……」
声がいつもよりずっと柔らかくなっていた。
「今夜……一緒に寝てもいい?」
彼の体が一瞬で強張った。
数秒間、何も言えずに固まっていた。
「慧翔くん?」
「……真希……本当にそれでいいのか?」
彼の声には誠実な心配が滲んでいた。
誤解を避けたいんだろう……そして正直なところ、私も彼が何を言おうとしているのかわかっていた。
「何も起こらないよ。ただ……雷が怖くて、誰かと一緒に寝たいだけ」
「真夜と一緒に寝ればいいだろ。二人とも女同士だし……な?」
「バカ」
もっと強く抱きしめた。
「あなたがいいの。あなたじゃなきゃ眠れない気がする……彼女が彼氏と一緒に寝ちゃいけないって決まりでもあるの?」
彼の心臓がどんどん速く鼓動するのがわかった。
彼の頬も赤くなり始めていた。
その時、また雷が家の真上で轟いた。さっきよりもずっと大きく、ずっと近くで。
「きゃあっ!」
考える間もなく、もっと強く彼にしがみついた。
「ま、真希……?」
彼の声が少し震えた。
数秒の沈黙の後、彼は小さく諦めたようにため息をついた。
「……わかった。いいよ」
「それに、あなたの部屋がいい……まだ入ったことないし……」
「わかった……もう断れないよな?」
「そう、断れない」
それ以上何も言わずに、彼の部屋へ向かった。
* * *
「くつろいでいいよ」
そう言って明かりを点けると、部屋がゆっくりと明るくなった。
広いベッドがあった。二人で寝ても十分な広さだ。
部屋は私が使っている部屋と同じくらい広かった。いくつかの棚には、慧翔くんが子供の頃、一葉さんや誠一郎さん、真夜ちゃんと一緒に写った写真が飾られていた。
それに、とても落ち着く香りがした。
正直に言うと……彼の匂いがした。
「わあ……ここがあなたが何年も寝てきた部屋なんだね……」
ドアをそっと閉めながら、彼が答えた。
「ああ。実は、家族以外の女の子がこの部屋に入るのは初めてなんだ。葵さんだって入ったことない」
それがなぜか嬉しかった。
「まあ……彼女なら何でも一番でいいでしょ? ははは」
もちろん、家族より上になりたいわけじゃなかった。でも、他の女の子の中で自分だけがその場所にいることを知って、嬉しかった。
「そうだな、その意味ではそうだよ。じゃあ、床に布団を敷くよ」
「慧翔くん……一緒に寝たいって言ったよね。同じ部屋じゃなくて、同じベッドで」
「え? えっと……俺……」
彼の言葉が止まり、頬が赤くなり始めた。
「反論は認めないよ、慧翔くん〜」
「……わかった」
彼があんなに恥ずかしそうにうなずくのを見て、思わず笑ってしまった。まるでわざとからかっているみたいだった。
彼は急いでベッドに向かい、そのまま明かりを消した。
「じゃあ、早く……後悔しても知らないからな」
その言葉は、まるで私を臆病者扱いしているように聞こえた。
もちろん、もう後戻りはできなかった。
想像していた通り、柔らかくて寝心地のいいベッドに横たわった。
背を向けたまま、彼の手を探した。あの日、うっかり一緒に寝てしまった時と同じように。
見つけると、指を絡めて優しく微笑んだ。彼には見えなかったけど。
彼は抵抗しなかった。
むしろ、温かく握り返してくれた。
「慧翔くん……?」
「うん?」
「あなたの手、気持ちいいよ〜」
そう言って、もう少し彼の背中に寄り添った。
彼の心臓がどれだけ速く鼓動しているか、はっきりと感じられた。
「君の手も……気持ちいいよ」
心の中で微笑んだ。
もう少し強く彼の手を握った。でも今回は、もっと何かしたかった。
「慧翔くん?」
「うん?」
ゆっくりと耳元に近づき、かすかに聞こえる声で言った。
「大好きだよ、慧翔くん」
あまりに突然すぎて、ちょっと恥ずかしかった。
でも、彼の体が震えるのを感じると、なぜかすべてが報われた気がした。
「俺も……大好きだよ、真希……」
「慧翔くん……」
彼の手を離し、両腕を彼の腰に回して、そっと抱きしめた。
「このままずっと眠っていたい」
体をもっと彼に寄せた。まるで大きなぬいぐるみを抱きしめるように。
「いいのか……?」
「ダメ! 彼女に逆らった罰だから、今日はこうやって寝るの……明日も多分ね」
「どうやら俺の愛しい彼女は、状況を利用するのが好きみたいだな……ちゃんと眠れるか心配だよ。眠れなくなりそうだ」
「えへへ〜。チャンスを見つけただけだよ。さあ、慧翔くん……おやすみ」
もう少し体を寄せて、彼の柔らかな頬にキスをした。
それから顔を彼の肩に寄せた。
彼は完全に固まっていた。
私はもうおやすみを言った。
そしてそれで……ようやく安心して眠れた。




