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クラスで一番冷たい彼女と小説を書くことになった  作者: セバスーS.P
第 四 章: 過去と向き合い、未来へ踏み出す一歩
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第108話 真希が大好きな人との再会

 でも、沈黙は長くは続かなかった。スマホにメッセージが届いた。


 [遅くなっちゃったけど、お誕生日おめでとう、和泉くん]


 優希さんからのメッセージだった。


 遅くなったとしても、こうしてたくさんの人から祝ってもらえるのは嬉しい。去年の誕生日なんて、真夜と母さんと父さんくらいだったから、今年はずいぶん違う。


 [ありがとう。プレゼント、楽しみにしてるよ]


 シンプルな返信だった。彼女に余計な気を遣わせないためだ。こんな時間になったことを少し気にしているかもしれないけど、たとえ今思い出したのだとしても、俺は別に気にしない。


 まあ、いいか。


 スマホをベッドの脇に置き、布団に潜り込む。今夜は静かに眠りたかった。


 * * *


 気づけば、もう夜は明けていた。


 朝が来た。でも、昨日とは違って、部屋には俺一人しかいない。


 リビングのほうから物音がする。というより、今しがた玄関のドアが閉まる音が聞こえた。


 どこかへ出かけたみたいだ。


 待てよ……。


 まさか、真希が……?


 ありえる。それに、母さんは朝早く家に来て、駅で待っていると言っていた。


 ということは、真希が真夜を駅まで送っていった可能性が高い。


 今日は出かける予定もあるし、考えてみれば当然か。


 部屋のドアを開けると、予想どおり誰もいなかった。


 でも、テーブルの上には置き手紙が残されていた。


 [真夜ちゃんと買い物に行ってくるね。後で戻るから]


「はあ?!」


 どういう意味だ?


 ……と思ったところで、スマホにメッセージが届いていることに気づいた。


 母さんからだった。


 [真希ちゃんから今日のことを聞いたから、真夜は明日送ってくれていいわよ]


 そういうことか……。


 無駄に驚いてしまった。


 でも、真夜を一人でここに残しておくのは、さすがに長すぎないか?


 あの年頃の俺を思い出すと、とても一人で大丈夫だったとは思えない。自分のことすらまともにできなかったんだから……まあ、今でも似たようなものだけど。


 さて……準備を始めるべきか。それとも、二人が戻ってきてから決めるか。


 少し迷ったけど、なんとなく答えは決まっていた。


 二人が戻ってくるのを待とう。


 * * *


「ただいま~~」


 その声は間違いなく真希だった。


 続いて、真夜の声も聞こえてくる。


「お兄ちゃん、起きてる?」


 俺はまた部屋にこもっていた。今日は彼女の両親に何を話すのか、その練習をしていた。


 ちゃんと伝えたい。だからこそ、できるだけ準備しておきたかった。


 でも、もう二人が帰ってきたのが聞こえた。


 部屋を出て二人を迎えようとしたけど、ちょうど二人がドアの前まで来ていた。


「準備して。朝ごはんを食べたら、私の両親のところへ行くから」


「ああ、分かってる。でも、真夜はどうするんだ? 一人で大丈夫なのか?」


 真夜はむっとしたように俺を見た。


 まるで、俺が自分のことを子供扱いしているのが気に入らないみたいに。


「失礼だよ、お兄ちゃん。一人で大丈夫に決まってるでしょ? 一日中かかるわけでもないんだから」


 真夜は自信満々に笑った。


 その顔を見て、俺も少し安心した。


 怖がる必要はない。


 本人が大丈夫だと言っているなら、信じよう。


「この場所は任せたぞ。期待を裏切るなよ」


 そう言ってはみたものの、その前に朝ごはんを食べなければならなかった。


 まあ、何も先延ばしにする必要はない。どうせ今日、何かが起こるんだ。


 真希は朝から素晴らしい朝食を作ってくれた。サンドイッチだったけど、真夜はもっと食べたそうにしていた。


 でも、もう時間がない。このままだと遅刻しそうだった。


 だから真夜はゆっくり食べる暇もなく、俺たちは急いで家を出た。真夜には留守番を任せることになった。


 そういえば、俺はまだ真希の実家がどこにあるのかすら知らなかった。真希は日本のどの辺りにあるのか、一度も話したことがない。


 近いといいけど。


 駅へ向かい、天竺方面行きの電車に乗った。


 思っていたより近いことが分かって、少し安心した。


 今はただ、真希についていけばいい。


 ……とはいえ、悪い意味で言えば、何を話せばいいのか分からなかった。


 彼女の家族について聞けば、かえって気まずい思いをさせてしまいそうで怖かった。


 真希は何も言わず、ただ俺の手を握っていた。


 その横顔には、普段はほとんど見せない寂しさが浮かんでいた。


 きっと、父親に会う心の準備がまだ完全にはできていないんだろう。


 でも、彼女は知らない。


 俺たちには味方がいることを。


 それは、彼女の母親だ。


 俺はまだ、それを真希に話すべきか、それとも母親自身が話してくれるのを待つべきか迷っていた。


 * * *


 ようやく、目的地に着いた。


 ある程度は予想していた。


 それでも、目の前に現れた家を見た瞬間、思わず息をのんだ。


 巨大な屋敷だった。


 クラシックな雰囲気を漂わせながらも、派手すぎるわけではない。落ち着いた色合いと上品な造り。その周囲に広がる庭も、とても個人の家とは思えないほど広かった。


 門の前には、体格のいい男が二人、警備員のように立っていた。


 でも、家の入り口には――。


 二十歳くらいに見える美しい女性が立っていて、俺たちが真希の家の車から降りるのを笑顔で迎えていた。


 いや……。


 むしろ、彼女の視線は真希に向けられているようだった。


 まさか……。


 真希が前に話していた人だろう。


 まさか、今でも彼女の両親のもとで働いているとは思わなかった。


 真希が『お姉さん』と慕っている人。


 二人は少し離れた場所から微笑み合っていた。


 まるで、ずっとお互いを待っていたかのように。


「お姉さん、久しぶりね」


 真希が小さく呟いた。


 お姉さん……?


 真希は一人っ子のはずだ。


 俺が疑問に思っていることに気づいたのか、真希はすぐに説明してくれた。


「愛情を込めて、そう呼んでるの。血のつながった姉妹ってわけじゃないよ」


 なるほど。


 つまり、真希が一人暮らしを始めるまで、彼女の面倒を見ていた人なのか。


「真希を守ってくれてありがとうって、言うべきだよな?」


 彼女はしばらく何も言わなかった。


 まるで、俺の言葉が聞こえていないかのように、ただ真希を見つめている。


 そして、少し経ってから――静かにうなずいた。

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